経営基盤強化で「公立」の役割を果たす
1市4町から成る滋賀県湖東保健医療圏で唯一の公立病院である彦根市立病院。2年前、地方公営企業法全部適用の病院となり、経営基盤強化に取り組んでいる。
◎地域の救急医療を支える急性期病院
湖東保健医療圏には当院を含めて4カ所の病院があり、地域の救急医療はこの4病院が輪番制で対応しています。当院は、圏域で唯一高度急性期を担う病院として、救急患者を極力断らず、救急応需率はほぼ100%。どうしても入院させることができない場合には、当院での診療後、医師同伴で他院に転送するなどして対応しています。
◎病院から在宅医療のサポートを強化
周辺病院との「病病連携」に加え、地域の診療所との「病診連携」も重要なテーマです。当院では地域連携センターを設置し、その下に患者家族支援室、地域医療連携室、在宅医療支援室、入退院支援室、訪問看護ステーションの5部門を設けています。
特徴的なのが在宅医療支援室。当医療圏は、在宅療養支援診療所が滋賀県の2次医療圏内で最も少ないのが現状です。そこで当院では2年前に在宅医療支援室を設置し、在宅診療部門を立ち上げました。現在医師2人体制で在宅診療を行っています。当院の在宅診療部門の重要な役割として、地域で在宅医療に携わる先生方の支援、また介護にあたる患者家族の支援などがあります。
昨年から地域医療連携室が中心となり、地域の病院の先生と毎週患者カンファレンスを行うようになりました。それにより患者さんの流れがスムーズになり、病床利用率も高まり、入院期間も短縮してきました。開放病床もかかりつけ医の先生方に好評で、利用率が高まっています。
◎認定看護師への期待
当院には認定看護師が20人在籍しており、うち2人は特定行為の研修を修了。救急看護、緩和ケア、集中ケア、がん化学療法看護など取得分野も多岐にわたります。特に「皮膚・排泄ケア」の分野では4人の認定看護師の活躍で褥瘡(じょくそう)発生率が全国平均よりかなり低く、褥瘡外来を開始して以来、地域の先生方からはひどい褥瘡を見なくなったとの声も聞きます。感染看護認定看護師も3人おり、日常診療に大きく貢献しています。
認定看護師はチーム医療の中心的役割を担うことが期待され、当院としても認定看護師の資格取得を希望する看護師がいれば、積極的にサポートしています。
◎経営への参画意識を向上
2016年、自治体の長に代わり事業管理者が経営責任を負い、職員を独自に採用することなどが可能となる「地方公営企業法全部適用」に移行しました。特に医事課のスタッフを独自に採用することが可能となったため、煩雑な医療事務を円滑に進め、算定漏れを減らすなど、経営改革を進めるための大きな追い風となりました。
さらに経営改革を進めるため、「経営戦略室」を設置して経営改善に取り組んでいます。年度初めに各診療科や部門とヒアリングを行って年度の目標を立て、1年後に成果を発表して次年度の目標設定をしてもらうなど、「全員参加」による経営改善を進めています。
医療機器購入の際の価格交渉に関わる各診療科部長の意識も変わってきたという実感があります。また看護師や医事スタッフからも経営改善に関する提案が相次いでおり、職員全員が経営に参加する雰囲気ができつつあると感じています。
現在、自治体の財政も厳しく、公立病院だからといって、市の補助金に頼っていられる時代ではありません。しかし、公立病院には「採算がよくない部門」も含めて診療を維持する責務があります。地域で必要とされる医療を提供するためにも、経営基盤の強化は必須であり、スタッフと一体で取り組んでいく所存です。
彦根市立病院
滋賀県彦根市八坂町1882
TEL:0749-22-6050(代表)
http://www.municipal-hp.hikone.shiga.jp/