小豆島が一体となり取り組む医療の形
年間100万人以上の観光客が訪れる香川県の小豆島。「観光地小豆島の唯一の総合病院として、院内のホスピタリティーを徹底したい」と山口真弘院長は語る。
◎小豆医療圏の中核的役割を担う
小豆島で生まれ、高校以降を高松市で過ごした私は、2016年4月の当院の開院に合わせて院長代行として帰郷。昨年10月、院長に就任しました。
2017年10月現在、人口10万人当たりの医師数が全国平均約249人であるのに対し、小豆医療圏は約135人。新規開業医が少ないことに加え、既存開業医の高齢化による引退で、医師不足が深刻です。
地域住民が有する能力を引き出すことで、いきいきとこの地で暮らしていくサポートをする。そのためには、三師会(医師会・歯科医師会・薬剤師会)や行政、介護・福祉など各種機関との連携が必須です。
小豆医療圏では、総合的かつ一体的なサービス提供と関係機関との連携およびシステム構築を目指して、「小豆島中央病院を核とした地域包括ケアシステムによる地域づくり」を進めています。「介護」「医療」「住まい」「健康づくり」「元気高齢者」の五つの部会があり、「介護」部会では2017年度は島内の医療・介護・福祉機関の情報を一覧にまとめた「医療介護資源マップ」を製作。関係機関に配布し、シームレスなケアの提供に役立てています。今年度は独居高齢者のサポートに重点を置いた、「緊急情報シート」の製作を検討中。患者の既往歴やかかりつけ医などの情報を、救急搬送時など救急隊がすぐに把握できるように記載したもので、プライバシーに配慮した有効な活用法を模索しているところです。
「健康づくり」部会では、子どもの健康づくりに着目し、早期に血液検査を実施して生活習慣病のリスクを知ることで、疾病予防につなげられないかと島内の学校関係者が集まり、検討しています。
◎開院から2年見えてきた課題
島にあった二つの公立病院を統合して当院ができました。しかし完全に閉鎖したわけではなく、統合した両院では週に4日、当院の医師が交代で外来診療をしています。また週に1〜2回、無医村地区の公民館で巡回診療をしています。電子カルテをつないでいるので、その場で入院手続きをすることも可能です。
小豆医療圏で唯一の公的病院として、救急のほとんどを当院で受け入れています。香川大学の協力を得て内科は常勤医が11人いますが、外科は1人。そのため外傷や手術に必ずしも外科系の医師が対応できないのが目下の課題です。
島内では、脳神経外科、耳鼻咽喉科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、人工透析内科は当院にしかないため、該当する患者の多くは当院を受診します。そのため地域住民のかかりつけ医としての役割も担っています。
人的資源を一カ所に集約したことで、医療現場の疲弊度は以前よりも改善されたと思います。しかし果たすべき役割が多岐に及ぶため、医師のみならず職員全体の数は充足しているとは言えない状況です。
また、地域医療を担う当院において、医師が自分の専門以外の分野について理解を深めることは、スキルアップにもつながります。一方で、専門の医師による診療のニーズもあり、応えていきたい思いもあります。専門医と総合医の在り方は今後考えていくべき課題の一つです。
◎観光の島にふさわしいおもてなしの接遇を
小豆島は年間100万人以上の観光客が訪れる、香川県屈指の観光地。地域住民だけでなく島を訪れた人が安心して観光できるよう、職員の接遇を高めていくべきと考えています。
当院として今後は疾病予防に力を入れていきたいと考えています。将来的には院内のみならず、小豆島の各地区に赴き、疾病予防についての啓発活動を行えるよう検討しています。
小豆島中央病院
香川県小豆郡小豆島町池田2060-1
TEL:0879-75-1121(代表)
https://scha.jp/