リハビリテーションにはまだ「伸びしろ」がある
厚生省(現:厚生労働省)で医療政策の推進、研究開発の振興などに携わってきた佐栁進院長。地域の中で、どう自分らしく生きていくかー。超高齢社会の課題を議論するには「社会が共通のビジョンをもつことが重要」と提言する。
―地域での取り組みは。
回復期、慢性期の医療を中心とする当院と四つの診療所、指定管理者である北九州市立門司病院などを展開する特定医療法人茜会。特別養護老人ホームや障害者支援施設などを運営する社会福祉法人暁会。
グループ2法人がそれぞれ、下関市内に一つずつ地域包括支援センターを運営しています。「在宅」という大きな流れの中で、各地域の他の医療機関などとも連携しながら「途切れない医療、介護、福祉」の構築に努めています。
超高齢社会を迎えた日本を、世界中が「どのような社会をつくっていくのか」と注目しています。お年を召し、何らかの障害に悩む人が増えていく。そこで患者さんが元の生活に戻りたいと望まれるとき、「まだまだ可能性はいっぱいある」というポジティブな発想で後押しできるのが、リハビリテーションの強みではないかと思います。
今、往々にして求められるのは効率性を重視したリハビリテーションの提供です。一定の期間で機能がどれだけ回復できたか。その評価は大切なのですが、誰もが以前と同じ暮らしを取り戻せるわけではありません。リハビリテーションが応えるべきニーズは、より広範囲と考えるべきです。
中枢神経障害の回復は、生涯を通じて行われます。それは効率性や時間で区切った成果では測ることができないものです。元通りにはならないかもしれないが、長生きを喜びとして感じてもらう。「人生を支えるリハビリ」という視点が欠かせないのです。
―ロボットの活用は。
2009年にパワードスーツ「HAL」を導入したり、セラピーロボット「パロ」を活用したりと、当院では積極的にリハビリテーションや介護の領域でロボット技術を取り入れてきた実績があります。
2011年には全国の医療、介護などの関係者が集まって情報を交換できる場をつくろうと、ここ下関で「第1回ロボットリハビリテーション研究会(現:日本ロボットリハビリテーション・ケア研究会)」を開催しました。当院のリハビリテーション部長を中心に毎月、最新情報を共有する院内会議も実施しています。
今年、信州大学繊維学部の研究室が「着るロボット」をコンセプトに開発を進める「curara」の共同研究プロジェクトがスタートしました。
要介護者の自立支援を目的にしており、第一印象は「スタイリッシュ」。軽量で動きやすく、着心地を重視しているのが特徴です。従来のロボットは「動かない体を動かす」ことを目的としています。重さや装着感などがネックで、なかなか日常生活の中で使用することは難しいのです。
「curara」を当院の職員や希望する患者さんが着用した際には、「あまり違和感がない」といった声が聞かれました。テストを重ね、課題や可能性の抽出、研究テーマの設定などに協力していきます。
リハビリテーションにはまだまだ「伸びしろ」がいっぱいあると感じています。当院にも「自分たちの手で新しい医療を作り上げたい」という使命感にあふれたPT、OT、STが集まっています。その力を生かすためには、医師、看護師、介護職だけでなく、患者さんの家族や地域も一緒に、リハビリの可能性を引き出せる仕組みを整えていくことが必要だと思います。
各所で地域包括ケアシステムの構築をどう進めるか議論が重ねられています。超高齢社会がどこに向かい、何を目指すべきか。まずは、議論の前提となるイメージの共有が大事ではないでしょうか。
特定医療法人茜会 昭和病院
山口県下関市汐入町35-1
TEL:083-231-3888(代表)
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