医療機関初のトリプル格付 外部評価で信用高める
CCRC(継続ケア付き定年退職者コミュニティー)による街づくり、全国の医療機関として初となる日本政策投資銀行の格付トリプル取得...。医療を軸としながらもその枠にとらわれない医療法人玉昌会。髙田昌実理事長の目は、どこを向いているのか。
―2012年度にBCP(事業継続計画)、5年後にはBCM(事業継続マネジメント)を作られました。
まず、法人本部、高田病院(鹿児島市)、加治木温泉病院(姶良市)、姶良地区在宅サービス事業部、鹿児島地区在宅サービス事業部の五つのBCPを策定。その後、災害福祉支援ネットワーク「サンダーバード」鹿児島県支部として、姶良市加治木地区で福祉避難所開設訓練をしたり、災害時の「拠点」を日ごろから住民が集まる場所にするためのイベントを仕掛けたりと、さまざまなことに継続的に取り組んできました。
ただ、BCPに沿った備えを進めていくうちに、各BCPを統括管理する部門が必要だということがわかってきた。そこで、五つのBCPのうち本部のものをBCMへとブラッシュアップさせたのです。
近年、厚生労働省が災害拠点病院のBCP策定を義務化するなど動きが加速しています。「毎日の業務で時間がとれない」という医療機関は、まず厚労省のフォーマットを踏襲するところからスタートすれば良い。その後、毎年見直し、出てくる課題に合わせて投資計画を立てて改善していくことで、少しずつ自分たちの医療機関や地域に合ったものへと熟成させることができるのだと思います。
―「BCM格付」取得の背景は。
BCM格付に限らず外部評価を受ける理由は、自分たちのことを知るため。そして、法人内外の人に、玉昌会を知ってもらうためです。BCMができあがった。では、その中身は適切だろうか、ということは自分たちだけでは判断できませんし、たとえ自分たちで「良いものができました」と言っても信ぴょう性は低いでしょう。
これまで病院機能評価の認定も受けましたし、日本政策投資銀行の「健康経営格付」「環境格付」も取得してきました。BCM格付と合わせて日本政策投資銀行の三つの格付を取得したのは、医療機関としては全国で初めて。あらゆる業種を合わせても10カ所しかないと聞いています。
今後、労働人口は減少の一途です。働く人が働く場所を選ぶ時代がきます。その時、これまで受けてきた評価が意味を増す。「この法人で働きたい」という信用の獲得につながると考えています。
―時代の先を読む経営手法が印象的です。
2020年に鹿児島市内に完成する病院やホテル、マンションなどの複合エリア「キ・ラ・メ・キテラス」内への高田病院移転計画が進んでいます。
加治木温泉病院も数年後には姶良市内に移転予定。宿泊施設跡地である予定地にはすでにスポーツジムや温泉を備えた「ウェルビークラブ」を開設し、地域の人、職員の健康増進を図っています。
診療報酬・介護報酬が改定された今年2018年は、医療や介護を取り巻く環境が激動する、その始まりの年です。その前に、ある程度の道筋を付けられたことは大きい。一つ一つの目標の実現のために努力し、変化にも柔軟に対応できる職員の力があってこそのことです。
私はまもなく65歳。リタイア後のことを考えるようになりました。今、思っているのは自分がグループの目となり、耳となりたいということ。欧米の医療機関の機能や形態を見学し、自分の感性のフィルターを通して法人に情報を提供する...そんな役割になるでしょう。情報も評価もすべては外にある。ドラッカーの言葉の通りだと思うのです。
医療法人玉昌会
鹿児島市泉町2-3
TEL:099-226-8036(本部)
http://www.gyokushoukai.com/