医療法人清水会 相生山病院 佐藤 貴久 理事長・院長

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救急から看取りまで 高齢者の心に寄り添う

【さとう・たかひさ】 愛知県立旭丘高校卒業 1996 藤田保健衛生大学医学部卒業 同大学医学部循環器内科入局 1998 名古屋第一赤十字病院 2002 藤田保健衛生大学大学院修了 2007 相生山病院副院長 2013 同院長2016 医療法人清水会理事長

 名古屋市南東部にある相生山病院は、系列の介護施設と連携し、急性期から看取(みと)りまで高齢者を支え続ける。佐藤貴久院長は「地域で困っている人は必ず受け入れる施設でありたい」と話す。

◎関連介護施設とも連携

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 名古屋市、豊明市、東郷町の市町境に位置する当院は、患者の多くが地元の高齢者の方たちです。2次救急指定医療機関であり、かかりつけ医としての役割のほか、サブアキュート・ポストアキュートの機能も持ち合わせています。

 一般病床56床のほか、在宅復帰を目指す地域住民のための地域包括ケア病床37床、療養病床69床も備えています。

 運営主体である医療法人清水会は、病院に隣接する四つの老人保健施設の他、二つの有料老人ホームを持っています。また、系列の社会福祉法人が営む特別養護老人ホームやケアハウスなども同じ地域にあります。すべての入居者について、容体が悪くなった際には当院が治療を担当。法人全体として、病院での治療はもちろん、在宅医療、在宅復帰が難しい場合の施設入所までサポートします。

 2017年4月からは、豊明市の委託で市中部の地域包括支援センター事業も始めました。対象は地区に住む「要支援」の約6000人。行政から「認知症で生活保護を受けている高齢者が、行き場がなくて困っている」と相談を受けることもあります。基本的に「NO」とは言わず、可能な限り受け入れるようにしています。

 当院にない高度急性期の機能は他の医療機関と連携し、補っています。藤田保健衛生大学病院をはじめとした近隣27法人からなる「尾三会」という地域医療連携推進法人に参加し、地域医療が「病院完結型」から「地域完結型」となることを目指しています。

 当院のこれまでの経験や姿勢を発信しようと、昨年「医療・介護連携で実現する高齢者のための地域医療」という本を出版しました。

◎在宅復帰を支援

 入院患者が自宅に戻ることを望むなら、リハビリを積み、できる限り自宅退院してもらいます。当院のリハビリは、スタッフの心を込めたきめ細かな対応で、患者さんから高い評価を得ています。

 スタッフは常に「この人が家に帰るにはどうしたらいいか」を考えて行動します。例えば、各患者によって異なる、支える家族の状況、自宅建物の構造も考慮。自宅まで赴き、階段の左右どちら側に手すりがあるか、トイレはどういう造りか、などを実際に確認することもよくあります。

 ベッドが低い場合、かがんだ姿勢から立ち上がれなくては生活できません。家を見て初めて、どの程度まで機能を回復させれば在宅復帰できるのかがわかります。

 リハビリスタッフは、主治医にも頻繁に相談し、医療面での細かい指示を仰ぎます。経験を重ねると、医学的知識も身に付き、より自信を持って取り組めるようになります。患者に長く関わる看護師、介護士の役割も重要です。トイレ誘導、風呂の介助も大事なリハビリになります。

 在宅復帰後に本人や家族を支える体制づくりも必要です。当院では、退院前に患者家族や医師、ケアマネジャー、訪問看護スタッフなど関係者が集まって「介護支援連携会議」を開きます。病気や治療の内容、自分でできることと介助が必要なことなどの情報を共有し、支援体制を整えます。

◎本人の意思が最重要

 治療方針を最終的に決めるのは患者本人だと考えています。高齢者が最高水準の医療を望むとは限りません。痛みを伴ったり体に負担がかかったりする治療を拒む人もいます。

 心肺蘇生を行うかどうかも、本人の意思を尊重します。急性期のうちに、全員から終末期医療に関する意向を聞き取ります。本人の意思が確認できない場合は、これまでの言動から推察して判断します。

 それもできない場合は、本人の最大利益を考えて決定します。看取りの段階に入っても点滴を続けると、次第に低タンパク血症となり、点滴の栄養や水分が血管外に漏れて浮腫や胸水、腹水を起こすこともあります。患者が苦しむことになり、最期の表情もつらく厳しくなります。

 自宅で家族に看取られたいという人は、それをかなえる努力をします。

 自宅で最期を迎えたいという人に理由を聞くと、「住み慣れた場所で、気心の知れた人に見守られて死にたいから」と言います。

 介護施設に長年入所している人にとっては、施設が自宅に近い場所であるはずです。施設としても、看取りにしっかりと取り組むことで利用者が希望する最期をかなえられると思います。病院の近くで運営する重症者向けの有料老人ホームでは、開設3年で20人ほどを看取りました。

◎介護人材不足は必至

 医療技術の進歩により、日本人の平均寿命は年々延びています。それと同時に、寝たきり状態の高齢者も増えているのが現実です。

 厚労省の推計では、要介護度3〜5の高齢者が、2016年の202万人から2025年には252万人に増加。今後介護人材の不足が一気に進行することは間違いありません。

 介護人材に関して国は、経済連携協定(EPA)に基づく外国人介護福祉士候補者を受け入れています。日本の施設で働きながら国家資格取得を目指して勉強してもらうシステムです。

 当法人でも、現在5人のベトナム人を受け入れています。来年からはさらに3人増える予定です。日本人と同一賃金で、日本語習得や資格取得のための援助、住居の貸与が必要なため、病院側の負担も大きいですが、人材確保という面で大きく役立っていることは間違いありません。ベトナム人は高齢者に優しく、日本人と気質が似ているところも評価できると考えています。

 外国人技能実習制度に介護職も追加されたので、こちらでも来年から2人の受け入れを検討しています。

 施設に入れない時代が来ると、基本的に家で介護することになります。ただ、家族だけで抱え込むのではなく地域で支える姿勢が大切です。地域全体で支援が必要な人を把握し、対応できたら理想的ですね。

◎予防事業も

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 行政の施策も重要です。豊明市は医療、介護に積極的で、予防事業にも注力しています。要支援者らを支援する介護予防・日常生活支援総合事業「豊明元気アッププログラム」を推進しています。当院でも要支援者らを対象にした全30回の集中リハビリを請け負っています。利用者それぞれの状態に合わせた内容で、機能維持、回復を目指します。

 認知症予防には、運動が効果的です。軽度認知障害(MCI)の人であれば認知症を防ぐことができる場合もあります。国立長寿医療研究センターは、計算やしりとりなどの認知課題と運動を組み合わせた「コグニサイズ」を開発しました。清水会の施設でも、取り入れています。

 当法人は認知症専門の介護施設も運営。そこでは、当事者同士が悩みを相談したり苦労を共有したりできる「認知症カフェ」も開いています。どんな弱い立場の人でも支えられる「日本一優しい」病院、施設が目標ですね。

医療法人清水会 相生山病院
名古屋市緑区藤塚3-2704
TEL:052-878-3711(代表)
http://www.aioiyama.or.jp/


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