【3月4日】福岡県歯科保険医協会 医療・介護フォーラム2018
レッツ・チームケア "生きる"を支える
ある日「36万人」が増えるわけではない
3月4日、福岡県歯科保険医協会が九州ビル(福岡市)で「医療・介護フォーラム2018」を開いた。
医療、介護、福祉などさまざまな領域で口腔ケアの重要性が注目され多職種の連携・協働が求められる中、「集まって共に学ぶ場を」と2016年に始まった。3回目となる今回のテーマは「レッツ・チームケア "生きる"を支える」。
在宅医療や施設に関わる医師、歯科医師、社会福祉士、施設管理者らがそれぞれの立場から現場での工夫や課題などを述べ、会場に集まった約140人の市民が熱心に耳を傾けた。
基調講演は、医療法人にのさかクリニック(福岡市)の二ノ坂保喜院長による「いのちを受けとめる町づくり」。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」によると、年間死亡者数のピークは2040年。2015年と比較すると、年間死亡数の差はおよそ「36万人」に達するという。
「2025年問題、2035年問題が頻繁に取りざたされ、高齢者の行き先がなくなるのではないか、病院、施設は足りるのかと、みんな大騒ぎしている」と二ノ坂院長。そこで、「自分の頭でしっかりと考えてみることが大切」と呼びかける。
「2040年までに、年間で1万4000人ずつ死亡者が増えていく計算になる。単純に47都道府県で割ると、1県あたり300人。36万人をどうするかという話と、300人をどうするかという話では、ずいぶん受け止め方が異なるでしょう。ある日突然、36万人増えるわけではない。問題の本質は、あくまでも今日や明日、亡くなる人をどこで看取(みと)るかということなのです。在宅で看取ることができる医師の充実や、職種間の連携の拡大などを目指したい」
最期を迎える場所を選択できる国に
同時に、在宅での看取りを基本として死を身近なものとする「死の再発見」が、生きることの意味を問い直すことにもつながるのではないかと二ノ坂院長は言う。
「国民の半数以上が自宅で最期を迎えたいと希望しているにもかかわらず病院での死亡が7割を超えている。海外と比べると、日本は遅れていると言わざるを得ない。例えばオランダは自己決定を尊重している。自宅で最期を迎えたい方、特に多くのがん患者さんは住み慣れた家で亡くなる。日本はどうか。死に場所について相談したり、自分自身で選んだりすることが難しい。それでは先進国とは言えないのではないか」
また「病院の役割」についても言及。「家に帰すこと」が最も重要な務めだと言う。
「医師が病気を治すのは患者さんがもとの生活を取り戻すため。がんや障がいが残っていても、できるだけ家に帰って生活できるようにサポートするのが本来の役目ではないかと思います。そのことを心がけることで、医療のアプローチも変わるはず」
そのほか、介護家族の声としてNPO法人老いを支える北九州家族の会・岩永悦子氏、みずほ内科・歯科クリニック(直方市)の川端貴美子院長、社会福祉士の来田時子氏、グループホームなどを運営する有限会社時輪代表取締役の黒木みよ子氏、福岡県立大学看護学部助手で暮らしの保健室 in 若松代表の杉本みぎわ氏がシンポジストとして登壇。
質疑応答では、「ケアマネジャーは主治医とどう関わりを深めていけばいいのか」「実家をグループホームにすることは可能か」「在宅訪問管理栄養士を目指している。在宅に関心のある医師や看護師とのネットワークをつくるには」などの質問が投げかけられ、活発な意見交換がされた。
フォーラムを総括して二ノ坂院長は、「いろんな意見を聞くことができ楽しい時間だった。地域の中で、多様な職種がオーバーラップしていくことに大きな意味があると感じてもらえたのではないか」と結んだ。