3月 新病院開設 キラリと光る病院に
建物の老朽化などの理由から新病院建設を進めてきた芦屋中央病院。3月、時代に即した新たな機能を持つ病院に生まれ変わった。
◎進む老朽化移転が決定
1976年の開院から40年余りが経ち、病院の建物は老朽化が進んでいました。私が病院長に就任した15年前から小規模な水漏れがあり、配管設備などの不具合は明らかでした。改築も検討されましたが、長期的に見ると費用を抑えられるとして、新病院建設が決まりました。
診療を続けながら同じ敷地内に新病院を建設することが難しかったことから、約2km離れた造成地への移転を決定。不便さを感じる人も出る可能性があることから、30ある自治区に、町長や私が足を運び、説明を重ねました。
新たな病院は、北九州市若松区との境にあります。急性期と慢性期の機能を生かしながら、芦屋町はもちろん北九州市の住民の方のニーズにも応えていきたいと考えています。
◎患者目線を重視した新たな機能を
新病院は5階建てです。1、2階は外来や検査、手術室があり3、4階は病棟です。
1階には、患者や家族からの医療・介護に関する相談に応じる「患者支援センター」を開設しました。
これまで院内の別々の場所にあった訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所、地域医療連携室、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーションなどを集約し、窓口を一本化。患者の負担を減らすだけでなく、スタッフ間の情報共有もスムーズになると考えています。
外来化学療法室も新設しました。リラックスして治療が受けられるよう、リクライニングチェアや個別のテレビを取り入れています。
町が実施する健診・がん検診をほぼ一手に引き受ける健診事業の充実も図りました。「健診センター」には放射線機器を使う検査以外を集約。患者さんの移動を極力減らし、よりスムーズな健診にします。
高い清浄度が必要な整形外科手術に対応するBCR(バイオクリーンルーム)も新たに設置。手術時の感染症を防ぐことで、一層安全な手術ができると考えています。
また、一般病棟の4床室は、それぞれのベッドサイドに窓を設け、眺望や採光などに配慮した「個室的多床室」を導入して、療養環境の充実を図りました。
新病院のコンセプトの一つは「患者さんに優しい病院」。細部にわたりコンセプトを具体化するよう努力しました。
◎緩和ケアへのニーズに応える
当院は137床。うち一般病床が90床、療養病床が32床、そして新病院では新たに緩和ケア病床15床を設けました。
4月からは療養病床のうち14床を地域包括ケア病床にします。病床数は多くありませんが、小さくともキラリと光る病院を目指したいと考えています。
このため、ケアミックス型の病院ですが、一般の診療に関しても何か他の病院にはないような少し特色がある診療をしたいと考えています。
その一つが整形外科です。当院には人工関節手術を得意とする医師がいますので、新病院では手術室にバイオクリーンルームを加えて、実施可能な手術の幅を広げました。これにより高齢者の整形外科疾患にも広く対応できます。また、スポーツ整形の医師もいますので、プロスポーツを目指す地域の大学生などの診療に当たっています。
消化器科は私も含めて5人の医師がいます。上部消化管内視鏡検査など年間2500件ほどの検査を実施し北九州地区では高い実績を持ちます。引き続き早期がんの診断に力を入れていきたいですね。
今後は、在宅にも力を入れるため、訪問診療を始めたいと考えています。このためには核となる総合診療医が必要ですので人材を探しています。
◎職員の努力が実を結んだ
2015年に経営の安定を図るため地方独立行政法人にしました。幸い当院は2003年から黒字が続いているため、法人への移行はスムーズでした。これも職員が日頃からコスト意識を持って病院運営に取り組んでくれているおかげだと思います。
新たに緩和ケア病棟を開設するためには、第3者機関による評価が必要でした。しかも、病院開設の前に評価を得なければならない。せっかく取得するなら、世界基準を目指そうと「ISO9001」を今年1月に取得しました。
新病院の建設という目標に向かって、同時並行で、独法化や電子カルテの導入などさまざまな新しい取り組みを進めてきた2年間でした。すべてはわれわれが思い描く病院をつくるためではありますが、ハードな業務内容にも関わらず職員は頑張ってくれました。
◎自己研さんする機会を応援
今後は、職員の研修や教育に力を入れていきたいと考えています。
学会や研究会、また医師だけでなく看護師などメディカルスタッフにもさまざまな資格が求められています。資格取得後も、それを保持していくための勉強会など、出張も多いものです。
それを含め、自己研さんをしていく職員のモチベーションを保つために病院にできることを考えなければいけません。
病院に入った時の第一印象はとても大事なものです。私が「ここは良い病院だな」と感じる時はどんな時なのかずっと考えてきました。
わかってきたのが、それは患者さんと職員が織りなしている「何か」がそう感じさせるのだろうと...。職員の患者さんへの声かけであったり、気づかいであったりといったことなのかもしれません。職員には「ここは良い病院だな」と感じるためには何ができるのかを考え続けてほしい。新病院でも職員は期待に応えてくれると思います。
地方独立行政法人 芦屋中央病院
福岡県遠賀郡芦屋町山鹿283-7
TEL:093-222-2931
http://www.ashiya-central-hospital.jp/