熊本大学大学院生命科学研究部心臓血管外科学 福井 寿啓 教授

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県内の循環器医療の底上げに貢献したい

【ふくい・としひろ】 1994 和歌山県立医科大学卒業 1997 大阪市立総合医療センター 2005 米インディアナ大学心臓血管外科研究医 2007榊原記念病院 2014 同心臓血管外科部長2015 熊本大学大学院生命科学研究部心臓血管外科学教授

-教室の主な特徴は

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 虚血性心疾患、心臓弁膜症、大動脈疾患と、幅広い循環器疾患に対応しています。中でも得意としている領域は、まず人工心肺を使わずに心臓を動かしたまま血管をつなぐ「心拍動下冠動脈バイパス術」。手術時間が短く、出血量も少なく抑えられることが利点です。

 高齢者やリスクの高い患者さんに対する成績も良好で、術後の経過についてもしっかりとデータを蓄積しています。

 もう一つは、長期の開存が期待できる「動脈グラフト」を積極的に用いていることです。一般的に動脈グラフトは細くて扱いにくかったり、手術に時間を要したりすると言われています。

 それをいかに克服し、長期的な使用に耐えることのできるバイパスをデザインできるか。循環器の分野で、日本有数の手術数を誇る榊原記念病院(東京都府中市)に勤めていたころから私が取り組んでいる研究テーマの一つです。そのほか心臓弁膜症では、患者さん自身の弁をできるだけ温存する「僧帽弁形成術」を中心に実施しています。

 大学病院には重度で治療が難しい症例の患者さんたちが集まってきますから、私たちは常に最先端の医療を提供すべき立場にいるわけです。

 しかし、「新しい」ということだけを優先して階段を一段飛ばしで駆け上がるようなことはしません。医療に最も大切な安全性を考えたとき、しっかりと吟味しながらステップアップしていくことを忘れてはならない。最先端かつ安全。その最適なバランスを探り続けています。

-地域医療に対する取り組みは。

 2017年1月、「心臓血管センター」を開設しました。「ハートチーム」というキーワードのもと、心臓血管外科、循環器内科、救急・総合診療部による緊密な連携体制が構築されました。

 一つのチームとなってカンファレンスを実施。その患者さんにとって最適な治療法を導き出します。診療科による線引きをせず、お互いに意見を出し合ってサポートすることで、より良い医療へと発展を遂げる。それがハートチームの活動のコンセプトです。

 センターが対象とする疾患は、不安定狭心症や急性心筋梗塞、急性大動脈解離、急性心不全や慢性心不全急性増悪、肺塞栓などです。将来的にはセンター専用のハード面なども整備していくことをイメージしています。

 熊本県は、国内で15番目の広大な面積を有しています。山間部をはじめ地域によっては心臓血管外科医が不足しており、必要な医療が行き渡っていないのが現状です。

 心臓血管センターはそうした地域とも密に連絡を取り合っており、防災ヘリやドクターヘリ、ドクターカーなどを駆使した緊急搬送システムを構築しています。熊本県の強みである「病診連携」の県内ネットワークをベースに、県内および周辺医療圏に対して、より広範囲に高度先進医療を届けていこうというものです。今後は行政サイドもまじえて、さらに円滑な医療システムの検討を進めていきます。

-今後の教室運営についてはどのようなイメージをおもちですか。

 一つ目は基礎研究、臨床研究の両面に力を注いでいくこと。二つ目は医局全体での臨床レベルの向上を目指すこと。そして三つ目は、後進がちゃんと育つ教室であり続けること。この三本の柱を掲げています。

 まだスタートして間もないのですが、基礎研究としては「動脈硬化の活性メカニズム」や、iPS細胞など再生医療の手法を用いた「心筋細胞の構築」「動脈硬化が起こりにくい血管の作製」などを扱っています。

 じっくりと一つのことに向き合う姿勢や、計画的にものごとを進める感覚などを身につける上でも、基礎研究に打ち込む時期があってもいいのではないかと思います。必ずしも大きな成果が出せるとは限りませんが、経験は臨床にフィードバックされ、役立つときがくるはずです。

 研究体制を整えていく中で、海外での学会発表や留学の機会なども増やしていきたい。地域医療も見すえた今後の人材獲得を考えても、長期的な視点から魅力ある教室づくりを進めていきたいと思っています。

 次に、臨床面では医局員一人一人の底上げに注力します。キャリアのある医師、若手にかかわらず同程度のスキルに近づけ、誰が欠けてもバックアップできる。そんな組織を理想としています。

 考え方として徹底して浸透させていきたいのは「手術はまねて学ぶもの」であること。実地訓練にしても、映像による学習にしても、考え方の統一がなされていれば、おのずと「教室が目指すレベル」の修得に意識が向くはずです。また、術式の標準化を図ることで効率的な育成が可能となるほか、治療成績の比較や改善点なども議論しやすくなるでしょう。

 そうすることによって医局員が他の医療機関に派遣されたときにも、大学病院と同等のレベルの医療を提供できるようになる。ひいては熊本県全域の医療の向上にもつながるのではないかと思います。

-この分野の魅力はどのようなところにあると思いますか。

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 外科医の大切な役割の一つは、手技を伝えていくということです。臨床実習で当教室を訪ねてきた学生たちには、動物を用いた解剖や弁の縫合などを体験してもらっていますし、年に数回のペースで、気軽に参加してもらえるイベントなども企画しています。

 まずは循環器疾患やその治療法を身近に感じて、早い時期に「楽しい」と思ってもらう。そんな情報発信を心がけています。 心臓血管外科の医療とは、循環器の機能を改善して向上させ、急変や突然死を予防することです。

 短期間の間に患者さんの心臓の働きや血流がよくなる。心不全でまったく歩けなかった人が、術後2週間も経つと自分の足でしっかりと帰路につく-。そんな姿を見ることや、患者さんから「手術を受けて良かった」と喜んでもらえることに私たち心臓血管外科医の最大のやりがいがあります。

熊本大学大学院生命科学研究部心臓血管外科学
熊本市中央区本荘1-1-1
TEL:096-344-2111(代表)
http://kumamoto-cvs.com/


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