特色あるリハビリでその人らしさをサポート
「千鳥橋病院」の慢性期病床とリハビリ部門を分ける形で開院して15年。「たたらリハビリテーション病院」は、特色あるリハビリを強みに、地域での存在感を増している。
◎リンパ浮腫を外来・入院で診る
当院には2003年の開院当初から緩和ケア病棟があり、緩和ケアリハビリにも力を入れてきました。緩和ケアの目的は、「苦痛を和らげQOLを高める」こと。その中でのリハビリの大事な役割は「日常生活を可能な限り維持すること」「患者さんのモチベーションに働きかけること」だと思います。
当院では緩和ケア病棟に専任のリハビリスタッフを5人配置。患者さんや家族の希望に沿った形でリハビリを提供し、在宅復帰や外出、外泊を支援しています。患者さんが自宅に戻る前には必ず家屋調査に出向きますし、患者さんが外泊や外出する際には看護師と一緒に同行することもあります。
緩和ケアリハビリの一環でスタートしたのが「リンパ浮腫」への取り組みです。緩和ケア病棟にいる患者さんの中に、リンパ浮腫で困っている人がいる。何とかならないだろうか―。そんな思いが発端でした。
リンパ浮腫が起きるのは8〜9割が、がん治療後の患者さん。腕に症状が出れば物が握りにくくなり、脚の場合には、歩くのも困難になったりします。重症化し、大きく腫れ上がってくると皮膚が硬くなり、膨らみに耐えられず皮膚が割れてリンパ液が漏れだす。場合によっては感染症を起こすこともあります。
当院では、重度の患者さんの場合には1カ月前後の入院で集中的に治療。緩和ケア病棟のリハビリスタッフで、日本医療リンパドレナージ協会の認定を受けた専任の理学療法士と作業療法士が中心となり、スキンケアや手によるマッサージ、ストッキングなどを使った圧迫療法、圧迫下での運動療法を実施。患者さんが自宅に戻ってから自分自身でできるよう、マッサージ法や弾性包帯の巻き方などを指導していきます。
リンパ浮腫を外来だけでなく入院でも診ている施設は九州でもごくわずかしかありません。患者さんの中には、退院後の週1回の外来からスタートし、1カ月に1度、3カ月に1度とだんだん来院の間隔を空けられるようになる人や、近隣の医療機関でもコントロールできるまで改善し、当院を「卒業」した人もいます。
◎入院で機能回復再び在宅へ
パーキンソン病の人に対するリハビリも当院の特徴です。
薬物療法とリハビリがパーキンソン病治療の二本柱。千鳥橋病院から月1回、神経内科の専門医が来て、外来での薬の調整などを担当しています。
リハビリでは、パーキンソン病に対する療法「リーシルバーマンボイストリートメント(LSVT)」も採用。発話が不明瞭になる、歩幅が小さくなる、動きがぎこちなくなるといった疾患特有の症状の改善につながっています。
地域にはパーキンソン病を専門に扱うところが少なく、自宅で過ごしているうちに機能が落ちてくる患者さんも多いため、短期入院でのリハビリによって機能を戻し、再び自宅での生活に戻っていただく、ということもしています。
また、5年ほど前から、高齢者に対する「短期間集中リハビリ」にも取り組んでいます。在宅で訪問診療や往診を受けている高齢者が、夏や冬の外出しにくい時期に自宅で寝て過ごす時間が長くなり、筋萎縮や関節拘縮などの廃用症候群を起こすことが続いたからです。 通所リハビリの利用者が、機能が落ちて日常生活動作に支障を来すようになった場合に、セラピストから医師に相談があり、入院に至ることもあります。
今後は、高齢独居や老老世帯で不調があるけれど病院にもいきたがらない人を探し出し、必要な医療につなぐことが大切でしょう。困難ですが、行政だけでなくわれわれもできることを考えるべきだと思っています。
当院には入院や外来でのリハビリのほか、在宅部門の通所リハビリ、訪問リハビリもあります。スタッフは理学療法士、作業療法士、言語聴覚士ら計42人。今後もスタッフをさらに充実させ、特色あるリハビリを提供したいと思います。
◎何をすべきか「立ち位置」を考える
院内で開催する無料介護予防教室や、地元の公民館などで住民の健康相談にのる「健康カフェ」など、地域での活動にも力を注いでいます。医療や介護が必要となる前の段階の人たちに、健康であり続けるためのコツや疾患の早期発見の重要性を伝える。それも、私たちの大事な仕事です。
近隣には、当院以外にも啓発活動を実施している医療機関が複数あります。われわれはどういう人を対象に、何を実行するのが地域にとって最も良いのか。実績を積み上げながら模索していくつもりです。
当院がある福岡市東区の65歳以上の割合は、21.1%(2017年3月末)。今は全国平均よりも低いですが、今後、高齢者人口、高齢化率が増加していきます。どんな機能の病院であるべきか「立ち位置」を考え続けなければなりません。
今、思っているのはもっと地域からの直接入院の患者さんを増やす必要があるということ。現状は急性期病院からの受け入れ患者が7〜8割を占めています。外来機能を強化し、外来診療時間も延長することで、困った時にすぐに頼ってもらえる病院になれたらという希望を持っています。
ここは民医連の病院です。「患者さんの人権を大事にする」ということが根幹にあります。病院の広報をする場面では「無料低額診療」についても周知するようにしています。無料低額診療を必要とする方は増えているというのが実感です。患者さんが経済的な心配をせず必要な医療を受けられるよう、今後も力を尽くしていきます。
公益社団法人 福岡医療団たたらリハビリテーション病院
福岡市東区八田1-4-66
TEL:092-691-5508
http://www.tatara-reha.jp/