北河内医療圏の地域医療の要
120万人を有する北河内医療圏にあり、枚方市唯一の公立病院である市立ひらかた病院。新病院に建て替わってから2017年9月で丸3年、1月には周辺の整備工事も終えグランドオープンした。大阪府の地域がん診療拠点病院に指定されるなど、地域医療の要としての役割を担う。
◎枚方市の災害医療センター
開設から68年が経ちました。10年ほど前、老朽化や度重なる増築などもあり、建て替えの話が持ち上がった際には、病院事業収支の赤字などのため病院の存続自体が議論になりました。
しかし、公立病院としての存在意義が論議されたことで、新病院が果たす役割が明確になり、われわれもさまざまな機能を新病院に盛り込むことができました。
新病院は、旧病院の隣接地に建設。地上7階、地下1階建てで、病床数は335床です。
旧病院の撤去後の敷地には、約180台分の駐車場を整備。芝生広場を設けて、玄関前には花壇をつくり季節の花を楽しんでもらうようにしています。
当院は枚方市の災害医療センターの役割を担っています。災害時にも病院機能を維持できるよう、建物は免震構造としました。また、災害時には、講堂や1階の外来待合などで医療活動を実施するため、床暖房設備、医療ガスの供給設備を設置しています。
◎がん医療へ注力緩和ケア病棟の充実を
大阪府の地域がん診療拠点病院に指定されています。高齢のがん患者さんも増加していますので、低侵襲な治療を提供したいと、放射線治療装置としてリニアックを設置しています。
外来化学療法室には、メインの調剤室とは別に、抗がん剤を安全に扱うため、専用の製剤室を備えました。10ブースの各室に8台のリクライニングシート、2台のベッドを設けています。
新病院開設にあたって私が新設を特に希望したのが緩和ケア病棟です。
私はもともと消化器外科医です。「告知はせずに最後まで伏せておく時代」から、「告知は当たり前」の時代まで経験し、多くの患者さんが「死」に向き合う姿を見てきました。
その中で、がん患者さんが最期の時間を穏やかに過ごせる場所をつくりたいという思いを長年温めてきました。計画時にはまだ緩和ケアという概念も知られていなかったため反対する人もいましたが、今は作って良かったと思います。
病棟のスタッフも外科、麻酔科、精神科と緩和ケアに精通した医師をはじめに多職種で対応します。
患者さんが亡くなると、家族は心に大きな痛手を受けます。このためグリーフケアの一貫として、残された家族同士が一緒になって語り合う「家族会」を開いています。家族を亡くした悲しみを共に語り合う。心を癒やす時間を、われわれ職員も一緒に共有しています。
◎小児医療へ引き続き注力
当院の小児科は北河内2次医療圏で唯一、365日、救急入院の受け入れ可能な病床を持っています。小児の2次救急を受け入れる病院として「2次救急は絶対断らない」をその理念にしています。
一方、2010年に同じ医療圏の寝屋川市から当院の横に移転した「北河内夜間救急センター」は、小児の1次救急に対応します。
移転する前は、当院が1次、2次に対応していたため、小児科医の不足が大きな問題となっていました。
特に問題だったのは、2009年に起こった新型インフルエンザの流行時。休日に救急で訪れた患者は朝9時に受け付けをして、診察は夕方5時という状況でした。
こうして、地元医師会、大阪医大、関西医大、行政と協議。北河内夜間救急センターを枚方市に移転させ、それまで午前0時までだった診察時間を朝6時まで延長しました。一方、2次救急は当院が対応するという役割分担を明確にしたのです。住民への広報活動もしてもらい、現在は順調に運営ができています。
また、新型インフルエンザの時の経験を生かし1階の小児科外来の一部に「感染診察室」を設けました。
感染症の疑いがある患児が車で訪れた場合、診察、治療、会計まですべてこの「感染診察室」で完結できるような動線にしました。携帯で職員が直接親御さんと連絡しあいますので受診の順番がきたら、車から降りて直接この診察室に来ます。他の患者さんとは一切接触しなくて済みますので大変安心です。
◎地域の大学と連携
枚方市には、関西医大、大阪歯科大など医療系の大学をはじめ多数の大学があります。
せっかくこれだけの大学があるのだから、病院、大学、医師会などと連携できないかと始まったのが「健康医療都市ひらかたコンソーシアム(共同事業体)」です。
市民の健康づくり事業を一緒に進めようと、市民健康講座、災害訓練、健康イベントの実施などさまざまな事業にも取り組んでいます。
また、今年、当院と関西外大は独自に協定を結び、連携してプロジェクトに取り組もうと動いています。すでに当院職員と同大の学生さんが何回か会議をし、院内の外国語表示やホームページの外国語版ができないか...といったさまざまなアイデアが出ました。今後、協力できることは実際に進めたいと考えています。同大と一緒に地域医療に貢献したいと考えています。
また、同大には海外からの留学生、教員が増えています。このため、当院にも外国人の患者さんが増加しています。
平日であれば、医療通訳者を事前に予約して同行してもらうこともできます。しかし、救急となるとそうもいきません。そこで、東京の通訳会社と契約。ネットを利用し、24時間365日、タブレットを通じて、患者さんとのやり取りを通訳してもらうシステムを導入しました。これを使えば、英語はもちろん中国語、韓国語などの患者さんにもすぐ対応できます。今後も外国人の患者さんは増加していく見通しですので、ますます活用する場面が増えそうです。
◎市民との交流を密に
2017年、枚方市は市制70周年。当院も何か催しをしたいとこれまでにない企画を考えました。普段見ることができない病院の裏側を見てもらおうという趣旨で企画したのが8月に実施した「アドべンチャーツアー」。20組の親子が参加して、手術室での腹腔鏡手術体験、放射線検査室の見学、リハ室での松葉杖体験など、いろいろな内容の企画を楽しんでもらいました。子どもや親の評判も良く、職員間では今後も続けたいという声もあがっています。
これまでも、市民公開講座は3カ月に1回ほど実施。講演後は骨密度を測ったり、血圧を調べたりと健康チェックもできます。市民との連携を図るためにも、さまざまな催しを続けたいですね。
市立ひらかた病院
大阪府枚方市禁野本町2-14-1
TEL:072-847-2821(代表)
http://hirakatacity-hp.osaka.jp/