がん教育は「チーム」が要
医療者・教育者・患者など約40人参加
福岡がん患者団体ネットワーク「がん・バッテン・元気隊」(波多江伸子代表)は11月11日、東京女子医科大学のがんセンター長、林和彦氏を招き、特別講演会「今、学校でがん教育が始まる」を市民福祉プラザ(福岡市中央区)で開いた。
「がん教育に関わる医療者、教育関係者、患者が集い、現状と課題を考える場にしたい」(波多江代表)と開催。養護教員やソーシャルワーカー、県職員など40人ほどが参加した。
「気持ち悪い」は知らないから
林氏は、もともと消化器外科医で、現在は、抗がん剤治療や緩和ケアが専門。がんに対する正しい知識が広まらないことを懸念して、10年ほど前に啓発活動を始めた。
化学療法で脱毛や発疹などの副作用が出た女性患者に対し、「気持ち悪い」と発言した4歳の孫娘の言葉をきっかけに、子どもたちに対するがん教育の必要性を痛感。教育現場で授業を重ねるほか、中学・高校の保健科教諭1種免許などを取得している。
関係者の協議で実用に応じたがん教育を
「がん教育」は2017年度、全国の小中高校で本格的にスタート。教員による授業のほか、がん専門医やがん患者・経験者など、外部講師が出向いて話をする機会もある。
林氏は、がん教育が学習指導要領に盛り込まれたことに触れ、「全国の小学校から高校まで、普遍的ながん教育を継続的に実施するためには、医療と同様に『チーム』が重要」と強調。地域の実用に応じたがん教育の実現のため、関係者が協議する必要があると話した。
伝えるのは「意識」
この日は、参加者からの質疑もあり、林氏は経験を交えて答えた。
授業を受ける子ども本人やその家族が、がん闘病中だったり経験者だったりした場合の対応方法や配慮の必要性を聞いた質問には、「前提として、必ずいるという認識が必要」とし、「教育現場の先生たちは、がんに限らずさまざまな配慮を日常的にしている。教員が外部講師をリードすることが大事だろう」と回答。
教育の質の担保については、エビデンスに基づかない治療の話題が出るリスクなどを挙げ、「事前に定められた研修を受けた医師や患者だけが授業する方法をとるなど、『標準化』が必要」だと説明した。
さらには、「がん教育で子どもたちに教えることは『知識』ではなく『意識』」と強調した上で、「人権教育や災害教育と同様に、発達段階に応じて繰り返し伝えていくことが求められている」と述べた。