大分大学医学部神経内科学講座 松原 悦朗 教授

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神経内科医の認知度を高めたい

【まつばら・えつろう】 群馬県立高崎高校卒業 1985旭川医科大学医学部卒業 1989 群馬大学医学部附属病院神経内科助手 1992 米国ニューヨーク大学医療センター病理学講座研究員 2013 大分大学医学部神経内科学講座教授

 2013年に神経内科学の初代教授となり、今年で5年目を迎えた松原悦朗教授。大分県の認知症医療に対する大学の役割などについて聞いた。

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◎大学での医師育成

 大分県唯一の医学部として、神経内科分野の疾患で困っている患者さんや、第一線で診療に当たられる地域の先生方からのご要望に対応できる診療科を目指しています。

 講座運営のモットーは風通しの良い環境づくりです。互いに意見を出し合いやすい雰囲気を大切にしています。

 医局員には自分の意志を持ち、きちんと意見を言うことができ、そして問題解決ができる人間になってほしいと考えています。彼らの成長が最終的に患者さんに還元されることを期待しています。

◎大分県の健康寿命延伸へ注力

 大分県が現在抱えている問題のひとつが健康寿命の短さです。

 本県は、平均寿命は全国平均よりも長く全国トップクラスですが、健康寿命は、男女ともに全国中位。

 県民が高齢になっても健康に過ごし、「良い人生だった」と振り返ることができるよう、大学として医学的に貢献できることを考えなければなりません。神経内科では認知症対策による、健康寿命伸延に取り組んでいます。

◎臼杵市での取り組みを生かして

 大分県の高齢化率は30.8%(2015年)と全国平均( 26.6 %)よりかなり高いです。

 特に、県東部に位置する臼杵市は県内でも高齢化( 37.9%・2015年)が進んでいるため、認知症への対策が急務でした。

 まず、「臼杵市の認知症を考える会」が2010年に設立され、当講座の認知症専門医である木村成志准教授や、市の医師会、地域の基幹病院、行政、介護施設などが連携しながら認知症の講演会などの啓発活動、地域の高齢者への認知症検診などさまざまな先駆的な活動に取り組んでいます。

 2013年からは、認知症検診で軽度認知症と判定された高齢者の予防活動を開始しました。運動や対人プログラムなどの予防プログラムを実施しています。

 そして、当初は臼杵市での小さな取り組みでしたが、県や国の研究費がつくようになりました。

 2015年には、本学と臼杵市、県、そして東芝(現在はTDKが担当)が共同で、高齢者の生活習慣と認知症の関連性の調査に着手し、今年で3年目に入りました。

 市の65歳から85歳までの希望者1千人を対象に実施。リストバンド型の機器を装着して、1日の活動や身体状況、会話時間などを計測、保存します。

 このデータを活用して、一人ひとりの生活と身体状況などの関連性、認知症になりにくい人、なりやすい人の生活習慣などを分析して明らかにしていく予定です。

 そして、それらのデータに基づいて、その人に合った食習慣、運動などといった生活への具体的なアドバイスもしたいと考えています。

 一方、認知症発症予測診断の医療機器開発と、予防対策を講じられるような医療機器の開発も進めています。

 また、今年4月から、国東市民病院と連携して神経内科外来もスタートしました。毎月第2、第4土曜日に、木村准教授が同院で診断、治療をしています。これまで、同院には、認知症の専門医がいなかったため、多くの患者さんが診察に訪れています。

 今後も、臼杵市のこれまでの検診、予防対策といった取り組みをモデルにしながら、県内の他の地域でも、認知症対策に取り組みたいと考えています。

◎認知症についてわかりやすく伝える

 認知症の高齢者を支えるためには、その家族はもちろんのこと、多くの地域住民の関わりが不可欠です。そのためにも、まずは、認知症についての理解を深めてもらいたいと考えています。

 当講座の教室員も、各地域で認知症について話をする機会があります。その際に、教室員に言っているのが「わかりやすく伝えること」です。せっかく足を運んで聞いてもらっても、話が難しく理解してもらえなければ意味はありません。

 専門用語で説明された患者さんは、理解できなくても、医師には「わかりません」とはなかなかいいづらい。それに気づかない医師の多さが気がかりです。医師側も意識改革をして、とにかく理解してもらうことを念頭にした活動を続ける必要があると考えています。

 また、大分大学では、昨年4月、新たに福祉健康科学部を開設。「福祉」に焦点を当て、地域包括ケアシステムを担う人材の育成を始めました。

 理学療法、心理学、社会福祉実践の三つのコースを設置。多職種で地域の問題を解決することを目指し、他分野との連携ができるような、医学的知識を豊富に持つ人材教育を進めています。今後医学部とのつながりも重要な課題です。

◎神経内科への理解を深めてもらいたい

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 神経内科医は患者さんの話をじっくり聞くことを大切にしています。そして、患者さんの一挙手一投足を観察し診断につなげます。「こんなに細かく診てもらったことはない」と感激される患者さんも多くいます。

 かつては、「神経内科領域の疾患は治らない」といった声もあるくらい、治療法がみつからなかった時代もありました。

 しかし、現在は、新しい治療法や薬の開発によって、脳神経疾患は治せる病気となってきています。われわれ神経内科医の役割をもっと多くの方に認知し理解してもらえるよう、今後も頑張っていきたいと思います。

大分大学医学部 神経内科学講座
大分県由布市狭間町医大ケ丘1-1
TEL:097-549-4411(代表)
https://www.med.oita-u.ac.jp/naika3/


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