熊本赤十字病院 平田 稔彦 院長

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熊本の土台は強固 先人の思いを受け継ぐ

【ひらた・としひこ】 1982 熊本大学医学部卒業 同第二外科入局 1984 熊本市医師会熊本地域医療センター1987 東京都がん検診センター 1993 宮崎県立延岡病院 1996 熊本赤十字病院 2016 同副院長兼外科部長 2017 同院長

 今年7月、平田稔彦新院長が就任。熊本地震による地域医療への影響はいまだ続いているが、連携の土台は揺るがない。「先人たちが築いてきた土台を、もっと強いものに」と語る。

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◎混雑はしたが混乱はなかった

 自宅と病院の行き帰り7キロ弱の道を、徒歩で往復しています。片道あたり、1時間ちょっとでしょうか。

 歩いていると、熊本の町の様子がよくわかります。徐々に家屋の解体が進んでいたり、一方では誰も住んでいないマンションがそのまま手付かずになっていたり。いまだ地震の爪跡が深いことを実感しますね。

 当院は熊本県の基幹災害拠点病院に指定されていますから、常に有事を想定した訓練や備蓄に努めています。しかし、まさか「ここ」が被災地になるとは、夢にも思いませんでした。

 それまで「支援に向かう」ことを考えていたにもかかわらず、突如として「受け入れる」立場になった。全国の赤十字病院をはじめとする医療機関や、ボランティア、報道機関のみなさんが集まる中で、災害医療を別の側面から捉えることができました。

 「混雑はしたが混乱はしなかった」

 一二三倫郎・前院長は今年8月に刊行した「熊本地震2016 熊本赤十字病院の活動記録 大震災の教訓と未来への提言―」の中で、そう表現しています。

 あの状況下でも、職員がそれぞれの役割を果たすことができたのは、継続的に取り組んできた訓練のたまものでしょう。記録集を通してこの経験と教訓を後世に残し、役立ててもらいたいと考えています。内容は、当院のホームページ上でも閲覧可能です。

 1944年に開設して以来、先人たちが築き上げてきたのは、救急医療と災害医療を中心とした「万が一のときに寄り添える熊本赤十字病院」です。私が目指す病院づくりも、これまでと変わりはありません。まずは歴史を踏襲し、強みを一つずつ伸ばしていくことを心がけたいと思います。

 現在、1次〜3次まで受け入れる当院の救急外来の受診者数は年間で6万人超。新規の入院患者数はおよそ1万8000人です。震災の影響で熊本市民病院の入院患者が周辺の医療機関に分散したこともあって、従来よりも1〜2割程度の増加が続いています。

 熊本県は、全国的にも医療機関の連携が進んでいる地域の一つだといわれています。毎年7月に当院が開いている「地域連携の会」も、例年と比較してずいぶん参加数が増えました。

 地域連携なくして、私たちの医療は成り立たない。震災を機に、関係性がより密になっている感触をもっています。

◎絶対に維持する

 病院や企業は、社会に貢献することを第一に考えて活動しなければ、生きながらえない時代だと思います。

 そのために、私たちには健全な経営で、持続する組織であることが求められる。私が院長に就任して以降、職員に伝え続けていることは、直接的に医療行為に関与しないスタッフも含めて「自分の仕事に誇りをもってほしい」ということです。

 これまで当院は、いわゆる不採算部門をやめるという判断や、個別の診療科に対して厳しくハッパをかけるといったことを、いっさいやってこなかったのです。少々の穴は、みんなでカバーしようというのが昔ながらの方針です。

 それがあまりにも普通のことだったので、今まで気にも留めなかったのですが、あらためて院長の立場で見ると「決して簡単にできることではない」と驚かされました。

 当院は、経営的に非常に苦しい時期も経験しています。その中にあっても「地域のために全診療科を維持する」方針を貫いてきたことが、職員のモチベーションや一体感を保ち、現在も総合病院として機能している要因ではないかと思います。

 近年、当院の組織のあり方もトップダウン型からボトムアップ型へと移行しつつあります。それぞれの部署が問題意識を強くもち、課題を掘り起こして、病院全体で対策を考えるという流れに変わってきました。

 患者さんの要望の中でも多くの割合を占め、長らく大きな課題であり続けているのは、待ち時間の短縮化です。職員の意見も踏まえて、思いついたことを少しずつ実行に移しています。

 耳鼻いんこう科、皮膚科、眼科といった一部の診療科では、紹介状をお持ちの患者さんを優先して診療しています。また内科では、医療文書などの作成において医師の業務効率化を図るために、ドクターズクラーク(医師事務作業補助)を導入しました。

 外来サポートセンターによる入退院支援も、段階的に業務内容やスタッフを拡充しています。解決策を探っていくと同時に、熊本赤十字病院が地域でどのような役割を担っているのか、なぜ、結果的にお待たせしてしまうのか。医療機関の機能分化について、もっと患者さんの理解を得ていく取り組みも必要だと思っています。

◎続く良好な関係

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 2012年に開設した「こども医療センター」が、2013年、西日本で初めての小児救命救急センターとして指定されました。小児救急医療拠点病院にも認定されるなど、小児救急医療の充実に力を注いでいます。

 当院にいる小児科医18人、小児外科医4人に加えて、日曜・祝日の午前中の救急外来は、地域の先生が当番制の「出動協力医」として当院に出向き、患者の診療にあたっています。

 今、登録の出動協力医は22人。2006年に始まった取り組みで、発足当時からずっと良好な関係が続いています。早くから地域との関係づくりを重視してきた歴代院長の努力と、快く力を貸してくださっている先生方に、感謝したい。

 病院が、個人が、地域の要請にどうやって応え続けていくか。医療者が存在する意義を突き詰めていくと、やはり、どれだけ社会に貢献できるかだと思います。

熊本赤十字病院
熊本市東区長嶺南2-1-1
TEL:096-384-2111(代表)
http://www.kumamoto-med.jrc.or.jp/


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