高知大学医学部附属病院 横山 彰仁 病院長

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内科医がこれから進むべき道

【よこやま・あきひと】 1983 富山医科薬科大学医学部卒業 1986 シカゴ大学リサーチフェロー 1991 愛媛大学医学部第二内科助手 2000 同講師 2003 広島大学大学院分子内科学講師 2005 同助教授 2007 高知大学医学部血液・呼吸器内科学教授 2014 高知大学医学部附属病院病院長

 10月10日、2018年度スタートの新専門医制度に向けた「専攻医1次登録」が始まった。日本内科学会の認定医制度審議会会長を務める横山彰仁・高知大学医学部附属病院病院長は「ジェネラルな診療能力をもつ医師の育成を主眼に置き、多様なキャリアニーズ、地域医療に配慮した制度設計となっている」と述べる。新制度は専門医をどう変えるのか。キーマンに聞く。

◎改革の背景にあるもの

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 ジェネラリティとサブスペシャルティは切り離せない関係にあるー。その考えに基づき、日本内科学会と13の内科関連サブスペシャルティ学会による「二階建て制度」の合意がなされました。

 卒後3年間の内科研修を経て、内科医の基礎部分となる「認定内科医」(1階部分)受験資格を取得。認定内科医になったのち、さらに3年間のサブスペシャルティ研修によって、総合内科専門医を含む「サブスペシャルティ専門医」(2階部分)を受験できる仕組みです。つまり、最短でサブスペシャルティ専門医を取得できるのは「卒後7年目」です。

 ところが、2004年、認定内科医の研修期間に初期臨床研修制度が組み込まれ、必修化されました。内科に義務付けられた研修期間が「6カ月以上」と定められたこと、短い人だと半年間の研修と1年間の内科研修で、認定内科医を受験可能。

 制度の開始前は3年間だったトレーニング期間が、半分にあたる「1年6カ月」で取得できることになったのです。

 また、大学病院を中心に診療科の臓器別再編が進んだことで、サブスペシャルティを重視する傾向が目立つようになりました。総合内科専門医の受験者数は減少。専門領域や地域的な偏在が加速していきました。

 このような内科の現状も含めて、厚生労働省は2011年10月に第1回「専門医の在り方に関する検討会」を開催。医師の質の担保、地域偏在の解消などの議論に着手しました。

 2013年の報告書では「基本領域の専門医を取得した上でサブスペシャルティ領域の専門医を取得する二段階制の仕組みを基本とする」「中立的な第三者機関を設立して専門医の認定と養成プログラムを評価・認定する」など、新たな専門医制度の方向性が公表。

 報告書の方針を踏まえて、日本内科学会でも、新たな内科専門医制度の検討を重ねてきました。

◎プログラム制を導入

 新専門医制度では、全19の基本領域に共通して2年間の初期研修後、3年以上の研修期間が設定されます。

 現行制度では、卒後3年間の研修で取得できる1階部分の内科の資格(新制度では内科専門医)が、最短で「卒後6年目」に変わるわけです。2年遅くなるのだから「サブスペシャルティ専門医の受験資格取得はさらに3年後、卒後9年目になるのではないか」というイメージが広がりました。

 しかし、新制度に移行しても、「卒後6年間の研修」でサブスペシャルティ専門医の受験資格が得られることは変わりません。

 初期研修はこれまでと同様に2年間です。新制度では、卒後2年から6年の期間に「内科専門研修とサブスペシャルティ研修を連動(並行)して実施する期間」を設定。サブスペシャルティ専門医の最短の受験資格取得は、従来どおり「卒後7年目」というわけです。

 もう一つ、現在のサブスペシャルティ専門医の受験状況を整理しておく上で重要なのは、卒後6年で資格を取得するのは男性で2割程度、女性で3割程度だということです。実は認定内科医についても、半数を超える人が最短となる卒後4年目で取得していない。

 この背景にはさまざまな理由があると思いますが、「受験資格をもっていても、すぐに取得するわけではない」という事実があります。

 新制度では、基本的にすべての領域で「プログラム制」を採用。「最短で内科専門医を取得する」ことを前提に、あらかじめ年次ごとに定められた計画にのっとって履修するものです。おそらく多くの人が、期間内で内科専門医を取得できるようになるのではないかと期待しています。

 私たちが目を向けるべきは、日本が超高齢社会に直面し、疾患が多臓器にまたがる患者が増加していること。新制度が、「主担当医としての診療経験」を重視したプログラムとなっているのは、このような時代背景を考慮したものです。

 3月、門脇孝・日本内科学会理事長、伊藤宏・学会在り方検討委員会委員長が連名で、「超高齢社会で果たすべき日本内科学会の役割と責務(宣言)」を公表しました。

 地域では臓器横断的に診療できるジェネラリストへのニーズが高まっている一方で、臓器別の専門医が多く育ってきた。

 そのミスマッチを解消するべく、「日本内科学会は進展する超高齢社会の医療を支えるため、ひとりひとりの生活の質に配慮し、全身を診る、臓器横断的な診断治療を行える内科医の育成に努めます」と宣言しました。

 一方で、スペシャリストも間違いなく必要なのです。日本内科学会は今年、今後の内科医のあり方を問う会員向けアンケートの中で「臓器横断的な診療姿勢の必要性」を質問。約95%が「必要である」と回答し、約5%が「必要ではない」との認識を示しました。スペシャリストが集まればいいのではないかという意見もあるので。

 特に大学病院は、分野ごとのスペシャリストが最先端を追求しなければ世界に後れをとってしまう。医療が発展していくためには、スペシャリストとジェネラリスト、両方を育てることが不可欠です。そのため「早くからスーパースペシャリストを目指したい」という要望に応える研修プログラムも用意しているわけです。

◎研修の標準化へ

 現行制度では、2次医療圏で見ると344のうち50の医療圏で、研修施設(日本内科学会認定教育施設)の「空白地域」があるのです。

 新制度では、施設数が1204から2937に増加します。すべての医療圏に、内科領域基幹施設、連携施設、特別連携施設が網羅されることになります。

内科専門研修プログラム1次審査では542のプログラムを採択。54%が500床以下の医療機関で、200床未満の施設も基幹病院に認定しています。また、連携施設や特別連携施設は診療所も含まれています。規模や地域に偏らない研修プログラムを確立すことが目的です。

 研修状況を可視化する仕組みとして、新専門医制度のスタートと同時に日本内科学会専攻医登録評価システム「J-ОSLER(ジェイ・オスラー)」を稼働させます。

 オンライン上で専攻医による症例登録や病歴要約登録、指導医による技術・技能評価、多職種のスタッフによる「指導医の360度評価」などが可能です。専攻医は研修環境を評価したり、プログラムに対する疑問点などを入力したりすることもできます。

 J-ОSLERの内容は、日本内科学会、日本専門医機構も確認。全国の研修状況を把握することで、「全国どこでも一定の研修を受けることができる」環境づくりを促進します。

 結婚や出産などのライフイベントや、研修施設の状況により、研修を中断したり、長期化に至ったりすることもあるでしょう。J-ОSLERにはこれまでの研修履歴が記録されていますので、中断、再開も容易です。

 来年4月以降、よりよい制度にしていくための改善点なども明らかになっていくはずです。日本内科学会としても、状況に応じた弾力的な運用を考えています。

◎地域で一緒に育てる

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 当院を含めた大学病院の役割としては、これまで以上に指導医の輩出に努めていくことではないかと考えます。

 研修の連携施設が増えたことにより、さまざまな医療機関との関係性も深まるでしょう。「地域一体となって専攻医を育てていく」ことを心がけたいですね。

 専門性を高めていきたいという人には「学位との二者択一」ではなく、ぜひ同時に研究にも取り組んでもらいたいというのが私の希望です。本学には、先端医療学推進センターや免疫難病センター、次世代医療創造センターなど、研究支援、トランスレーショナルリサーチを推進する環境が整っています。

 臍帯血の再生医療への応用や、光線力学的医療などの医師主導治験プロジェクトを積極的に進めています。

 医師には、診療ガイドラインをそのまま受け入れるのではなく、「批判的な視点をもつ」ことも大切だと思います。ジェネラルな素養を基盤にして、成長してくれることを願っています。

高知大学医学部附属病院
高知県南国市岡豊町小蓮185-1
TEL:088-866-5811(代表)
http://www.kochi-ms.ac.jp/~hsptl/


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