医療法人社団順心会 順心淡路病院 松井 祥治 院長

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高齢化医療とその先を見据えて

【まつい・しょうじ】 大阪府立北野高校卒業 1974神戸大学医学部入学 1980 同卒業 同第一外科入局 1998 加古川市民病院外科部長 2006甲南加古川病院副院長 2014 医療法人社団順心会順心病院 2016 医療法人社団順心会順心淡路病院院長

 高齢化率36.1%(2015年現在)。日本の5〜10年先を行くといわれる淡路市で、「断らない救急医療」を実践。高齢者医療とその先を見据えた変革に取り組む順心淡路病院の特徴と今後の展開を聞いた。

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―順心淡路病院の特徴を教えてください。

 1998年に前身の「津名病院」が開院。2005年〜2006年に行われた市町村合併で、これまでの洲本市と10町は、北から淡路市、洲本市、南あわじ市の3市に再編成されました。当院は淡路市の南部、旧津名町・旧一宮町地域に位置しており、2015年に名称を現在の「順心淡路病院」に変更し、今に至ります。

 急性期病院で大腿骨頸部骨折など整形外科手術を終えた方や、脳卒中・重症肺炎といった中等度から重度の急性期医療を脱した方、手術をしたものの自宅復帰が困難な高齢の患者さんの治療とリハビリテーションを中心に診療しています。

 外来では、糖尿病専門医3人による糖尿病内科外来を週3回、完全予約制で行っています。また、脳神経外科医による「もの忘れ外来」、中谷正史名誉院長による「漢方外来」をそれぞれ週1回と、患者さんのニーズに合わせて専門性の高い治療も提供しています。

 糖尿病患者の教育入院や、末期がん患者の緩和医療、筋萎縮性側策硬化症(ALS)などの難病患者のレスパイト入院にも対応するため、2016年10月に地域包括ケア病床40床を導入。現在は療養病床112床と地域包括ケア病床40床含む一般病床60床の計172床が稼働しています。

―理念「救急医療に対応できる地域医療センター」について。

 同じ法人内の順心病院(加古川市)が掲げる「断らない救急医療」を当院でも実践しています。2次救急指定病院として年間約300〜350台の救急車を受け入れており、2016年3月には救急告示病院として認可を受けました。

 断らない救急医療を実践するということは、いつどんな患者さんが来ても診ることのできる、「総合診療医」的要素が必要となってきます。

 私はもともと消化器外科医ですが、診療中には肺炎などの胸部疾患、頭部の疾患など専門外の疾患を診ることも少なくありません。

 現在、常勤の医師数は4人。私の出身である、神戸大学旧第一外科(現:食道胃腸外科と肝胆膵外科)から医師の派遣を受けて、週2日の日勤と週3日の当直をお願いしています。皆さん専門の消化器外科のみならず、幅広い技能や知識を持つ医師が多いので、とても頼もしいですね。

―高齢者医療の現状を教えてください。

 淡路島全島において高齢化が非常に顕著であり、2015年に全国平均の高齢化率が26.3%のところ、淡路市は36.1%。5〜10年先の日本を表していると言えるでしょう。

 高齢の患者さんの場合、原疾患を治療し、その後入院しながらリハビリすることもありますが、長期の入院は寝たきりになることが多く、感染症や他の疾患を併発する可能性が高い。

 そこで当院では、入院後、医師からの病状説明が終わるとすぐ、地域連携室の医療ソーシャルワーカー(MSW)が家族と面談し、退院に向けた支援を開始します。

 面談では早期の自宅復帰を目指し、家族背景を把握し、訪問診療や訪問介護など居宅サービスについて説明します。

 また週に1回、医師・看護師・セラピスト・MSWによる合同カンファレンスを実施。疾患のみでなく患者さんの社会的背景に関する情報共有を含めて検討した上で、シームレスに医療・介護・福祉のサービスを患者さんに提供していきます。

 退院後の受け入れ先として「医療法人社団順心会」が運営する老人保健施設やグループホーム、ケアハウスを紹介することはもちろん可能です。

 しかし、この津名・一宮地域は独居世帯が多く、患者さんが淡路島に住んでいても、家族が阪神間や徳島など他県に住んでいることも少なくありません。

 そこで、患者さんやその家族の希望を第一に考え、退院後のフォローを同じグループ内で完結させるのではなく、他法人の医療機関や居宅介護支援センター、訪問看護ステーションにも積極的に依頼します。

 年に2〜3回、周辺の医療機関や他法人の訪問看護ステーションや居宅介護支援事務所と合同会議を行い、法人間の密な連携と患者さんの情報共有に努めています。

 当院に紹介していただいた患者さんは紹介元の医療機関にお返ししますが、急変時はいつでも受け入れる体制を整えています。

―人材の確保について教えてください。

 術後の身体機能改善に向けた運動療法や、認知症患者への精神的作業療法の提供、肺炎など感染症予防のためのそしゃく・嚥下(えんげ)訓練など、リハビリテーションの概念は拡大し、社会的ニーズも高まっています。

 そこで医療法人社団順心会は「人材の確保」の前段階である「人材の育成」に着目。2001年、作業療法士・理学療法士・言語聴覚士の3学科が揃った「関西総合リハビリテーション専門学校(KRC)」を淡路市に開校し、セラピストの養成に注力しています。

 また、淡路島には島内唯一の4年制大学「関西看護医療大学」(淡路市)があります。当グループの3病院8施設で学生の臨床実習を受け入れるなど開校時より密接な連携を図っています。

 順心病院で急性期医療、順心リハビリテーション病院(加古川市)で回復期医療、当院で慢性期医療と在宅医療といったさまざまな環境を経験ができるのは当法人の強みでしょう。

 KRCと関西看護医療大学で学んだ卒業生の多くが当法人に入職してくれていること、医療者不足に貢献できることに喜びを感じています。

―今後の展開を教えてください。

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 来年で開院20周年を迎えます。ハード面の老朽化が進んでおり、今後建て替えを考えていく必要がありそうです。

 現在は救急搬送される患者さんの70〜80%が65歳以上であるなど高齢者医療が中心です。しかし、淡路圏域医療構想によると淡路市は2025年頃から高齢者人口が減少に向かうと予想されています。高齢化では日本の5〜10年先を行くモデルケースとして、医療供給体制を見直し、改めて病院としての将来構想を考える必要があるでしょう。

 この地域の傾向として、自分が暮らしてきた家や地域で最期を迎えたいという方が非常に多い。そういった方が、「何を求めているのか」「われわれに何ができるか」を常に考え、法人を挙げて支援してきます。

 また、家庭の事情などで自宅で最期を迎えられない人にも、最後まで納得のいく暮らしをしてもらうために全力で支援していきます。

医療法人社団順心会 順心淡路病院
兵庫県淡路市大町下66-1
TEL:0799-62-7501(代表)
http://www.junshin.or.jp/tsuna.html


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