回復期リハビリテーションと健康寿命の延伸のために
2004年開院の静清リハビリテーション病院は病床数250床。
神原啓文病院長に病院の特徴や地域で果たしている役割などについて聞いた。
◎病棟各フロアでリハビリを実施
風邪で2、3日寝込ん だら、治っても数日は足元がふらつくでしょう。あれは筋力とバランス感覚が落ちている証拠です。
人間の筋力はすぐに落ちてしまいます。筋力を維持するためには継続的なリハビリが必須です。
当院では365日、休むことなくリハビリを提供しています。それにより、筋力などの衰えを防ぎ、改善できるのです。
特徴の一つに、全てのフロアでリハビリができることが挙げられます。リハビリ室に行ってリハビリをする病院が多い中、当院では患者さんが病室を出たら、すぐにリハビリに取りかかれる環境が整っています。また病室のすぐ側でリハビリを行っているので、「自分も」とモチベーションが上がりやすいなどのメリットもあります。
◎健康寿命の「長寿県」
厚生労働省が発表した2015年度の都道府県別健康寿命ランキングで静岡県は男性が3位、女性は2位でした。
脳卒中や骨折後のリハビリを怠れば、退院後、寝たきりになりかねません。健康寿命の延伸のために、リハビリはとても重要です。
法人内には、介護老人保健施設「エスコートタウン静清」、訪問看護、訪問リハビリなどを提供する「静岡ホームメディカルケア」、通所リハビリテーションの「駿府の杜クリニック」と「駿府の杜」があります。シームレスなリハビリを提供することで、地域の健康寿命の延伸に寄与するのが狙いです。
また静岡市医師会では1人の患者さんを病院と診療所の2人の医師が主治医となって支える「イーツーネット」という病診連携システムを2001年から運用しています。イーツーネットの最大の特徴は、疾患別に独立したネットワークが存在し、「連携安心カード」や病院間のクリニカルパスの活用で病院と診療所をつないでいることです。
診療所の医師は患者さんの「かかりつけ医」になって、検診、通院、在宅(往診)まで継続的な治療を担当します。
病院の医師は先進的な医療機器や治療法などを活用し、専門的な治療を施行。診療所の医師が対応できない夜間・緊急時の診療をカバーします。回復期リハビリ病棟では、患者さんが在宅復帰し、自立した生活ができるように、十分なリハビリを提供して、地域の開業医のもとにお返ししています。
◎「ノルディック・ウォーキング」を活用
当院ではフィットネスエクササイズの一種である「ノルディック・ウォーキング」を用いた歩行リハビリを導入しています。
ノルディック・ウォーキングはスキーのストックのように左右の手に1本ずつポールを持ち、歩きます。右のポールを前から後ろに押し出すと同時に左足を踏み出し、左右交互に地面を後ろに押して、歩きます。
ノルディック・ウォーキングでは上半身も使いますので、通常の歩行よりエネルギー消費量が多く、ポールを使って歩くことで膝や腰への負担が軽減されるというメリットもあります。
私も昨年、講習を受けてノルディック・ウォーキングのトレーナーの資格を取得しました。
普段は10mぐらいしか歩けない人が、ノルディック・ウォーキングだと100mぐらい歩けることもあるのです。リハビリ方法としても、多くのメリットがあると思いますね。
院内でのリハビリが進んだら、次は屋外に出て、世間と触れ合いながらのリハビリも大切ではないでしょうか。
当院ではリハビリの効果を分かりやすく数値化して患者さんに提示するようにしています。筋力が何%増加したか、体のバランスがどれくらい改善したかなどを測定してデータをお見せするのです。
ただ「良くなっていますよ」と言われるより、数値で示すことで、もっとリハビリをがんばろうというモチベーションの向上につながると思うのです。
◎医師不足解消のために
静岡県は人口約367万人(2017年7月現在)と全国で10番目に人口が多い県です(同1月現在)。それにもかかわらず、医学部のある大学は浜松医科大学のみです。
医学部が1校と少なく、さらに若者が近隣の東京、名古屋などの大都市圏に転出してしまうなどの要因も加わり、静岡県は人口10万人当たりの医師数が全国44位と不足した状況です。
そこで、静岡県では医学部卒業後、指定された公的医療機関で勤務すれば、貸与した教育資金全額の返還を免除する奨学金制度を設けています。このような施策を通じ、静岡県の医師不足が少しずつ解消されることが期待されます。
◎急性期と在宅の橋渡し
急性期病院から在宅への橋渡しに、これまで以上に力を入れていかなければならないと感じています。
急性期病院は多忙です。私自身もそうでしたが、急性期の医師は1人の患者さんの治療が終われば、次の患者さんに目を向けなければならず、退院後のフォローは不十分になりがちです。
私はこれまで静岡県病院協会会長の任にもあったため、県内の多くの急性期病院の病院長と旧知の間柄。急性期後のリハビリの重要性をお伝えしてきました。皆さん理解を深めて頂いたのではと感じています。
昨今は、たとえリハビリ後に障害が残った人でも、環境の整備やテクノロジーの進化によって社会に積極的に関わることが昔より可能な時代になりました。
障害がある人が、もっと社会で活躍できるようにお手伝いをすることがわれわれの使命だと思っています。
◎活躍の場を創出
静岡県では現役で活躍する高齢者の方々を応援する「ふじの国型人生区分」を設定しています。
私は"ふじのくに"健康福祉キャンペーン推進協議会会長を務めています。
ふじの国型人生区分では18歳から45歳までを「青年」、46歳から76歳までを「壮年」、77歳以降を「老年」と、壮年を「働き盛り」としています。
私も"壮年"世代ですが、10年、20年前に比べて今の60代、70代の方はとても元気だと思います。
そうした方々が活躍する場を少しでも創出できればと思っています。
医療法人社団 アール・アンド・オー 静清リハビリテーション病院
静岡市葵区春日2―12―25
TEL:054-653-5858
http://www.seiseiriha.com/