高梁市国民健康保険 成羽病院 紙谷 晋吾 院長

  • はてなブックマークに追加
  • Google Bookmarks に追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • del.icio.us に登録
  • ライブドアクリップに追加
  • RSS
  • この記事についてTwitterでつぶやく

2020年の病院の姿

【かみたに・しんご】 岡山県立倉敷青陵高校卒業 1978 徳島大学医学部卒業 岡山大学医学部第1外科入局 1980 佐藤胃腸科外科病院 1986 岡山大学医学部附属病院第1外科医員 1987 佐藤胃腸科外科病院副院長 2013 高梁市国民健康保険成羽病院院長

c6-1-1.jpg

―病院の現状はいかがでしょうか。

 私の両親がこの地域の出身で、毎年の盆や正月には帰省していました。私が生まれ育った倉敷からだと、鉄道やボンネットバスを乗り継いで、それこそ丸1日がかり。交通網や道路が整備された今なら、2時間もあれば十分です。

 2月に開館したJR備中高梁駅に隣接するTSUTAYA図書館(高梁市図書館)もずいぶんにぎわっているようです。高梁市もいろいろな面で変わりましたね。

 そんな縁もあって、私が成羽病院に来ることになったのが2013年。現在、今年3月に策定した「成羽病院改革プラン」(2017年度〜2020年度)に基づく取り組みを進めています。

 地域医療構想の機能分担の中で、一定程度の急性期医療は、市内中心部の基幹病院に集約させていくことになるでしょう。

 当院は救急医療を担いつつ、地域包括ケアの中心として回復期医療を推進していく方針です。市の東部地域は回復期病棟を持つ医療機関が充実していますが、西部地域には当院しかありません。いっそうの機能強化が求められています。

 改革プラン最大のテーマに位置付けているのが医師の確保です。

 常勤の医師は外科、内科、小児科を合わせて、私を含めて6人。そのうち2人は自治医科大学のドクターで、岡山県からの派遣というかたちです。9人の非常勤のドクターは、主に岡山大学、または同大の関連病院のサポートを得ています。

 当院の常勤医師が60代に入っていることを考えると、中堅の医師を採用できることが望ましいのですが、現状はなかなか厳しいですね。

―医師確保の策は。

 今はインターネットなどを活用することで、どこにいても新しい知識を得ることができます。学んだことを地域医療で発揮する。そんな働き方の提案や、教育の場としての魅力づくりに向けて、行動を起こす必要があると思っています。

 岡山大学には、地域医療に貢献する人材の育成や情報発信の拠点である「地域医療人育成センターおかやま(MUSCUT CUBE)」があります。

 MUSCUT CUBEの研修プログラムには、遠隔教育も導入されています。ぜひ当院もそのネットワークに参加し、人材の育成に協力していきたい。そのためにも、まずはアピールできる実績を作らねばと思案しているところです。

 地域で高度な医療が求められる場面は少ないかもしれませんが、「医師の仕事の重み」を強く感じられる機会は多いのではないかと思います。

 高梁市全体で平均すると高齢化率はおよそ38%。西部地域に限ると40%台、場所によっては50%を超えます。

 地域の医療の火を消さないよう、へき地医療拠点病院である当院と、附属の5診療所という体制で各地の診療にあたっています。患者さんやご家族との深い関わりの中で、きっと医師として働く醍醐味(だいごみ)のようなものを実感できるのではないでしょうか。

―昨年、病院機能評価の認定を取得。

 成羽病院には1954年の開設から重ねてきた歴史があるわけですが、「ガラパゴス化」しているのではないか―。職員が、自分たちの医療を見直すきっかけを作りたいと考えました。

 ガラパゴス化しているのなら、「第三者に評価してもらうことで標準化していこう」と呼びかけ、昨年12月、日本医療機能評価機構の認定を受けました。

 長年、ここで働いている職員もいれば、岡山市や倉敷市の大病院に勤めた経験のある職員もいます。多様な背景のスタッフが共に力を合わせる上で、現在の成羽病院のレベルを確認したり、なんとなく看過していた課題を整理したりと、多くの発見や刺激があったと思います。

 認定に向けた1年余りの準備期間の中で、誇らしいと思えたことがいくつかあります。私が最も感激したのは、院内で発生する褥瘡(じょくそう)がほぼゼロだということ。それだけしっかりしたケアができているということですから、胸を張っていいと思います。

 また、かねてから「褥瘡の資格を取りたい」と意欲を見せていたスタッフが、これを機に認定看護師となりました。高梁市では1人目です。

 病院機能評価取得の後押しとなりましたし、当院の良さをより引き出す存在として活躍してくれるでしょう。

―改革プランの最終年を迎えるころ、病院はどのような機能を持つことになりますか。

 2020年の当院の姿としては、内科、外科、整形外科、小児科を常設、婦人科、耳鼻いんこう科、皮膚科、眼科、放射線科、リハビリテーション科 を非常設とします。

 現在、当院は一般病床54床(地域包括ケア病床10床含む)、医療型療養病床42床。改革プランでは、一般病床54床(地域包括ケア病床20床含む)とする計画です。

 療養病床として使用している4階は、国が介護療養病床の新たな類型として創設した「医療機能を内包した施設系サービス」(長期の医療・介護が必要な高齢者を対象とする施設)への転換を検討中です。はっきりとした要件の公表を待ち、議論を重ねていきます。

 7月、ナース・プラクティショナー(診療看護師)が、当院で働き始めました。

 もともと名古屋の病院に勤めていて、「地域で働いてみたい」と希望。看護協会を通じて当院とのマッチングに至りました。診療看護師が地域で働く一つのモデルをつくりたいと考えています。

 医師と看護師の間をつなぐ役割はもちろん、看護師の教育役として期待しています。当院としても、今後のリクルート活動の強みになればと思っています。

―大事にしていきたいと思っていることは。

c6-1-2.jpg

 積極的に手術件数を伸ばしていくような病院ではありませんが、できる限り質の高い医療を提供する努力は続けたい。

 年間10例ほどですが、早期がんの内視鏡手術も手がけています。以前は他院に頼らざるを得ない状況にあり、私が院長に就任して以降、少しでも地域に貢献できればと考え設備を整えました。

 口腔ケアやロコモティブシンドロームの予防、リハビリテーションの強化など、健康寿命を伸ばすサポートにも力を入れていくつもりです。

 認知症を患っていたり、複数の疾患があったりと、高齢化に伴い患者さんが多様化しています。ポリファーマシー(多剤併用)や残薬の問題などがよく取り上げられるようになりましたが、患者さんのことを本当に考えた医療のあり方が問われる時代に入っていると感じます。

 患者さんの尊厳を、最期まで守ることのできる医療を第一に目指したい。全人的な診療を実践するドクターが集まる病院になればとイメージしています。

高梁市国民健康保険 成羽病院
岡山県高梁市成羽町下原301
TEL:0866-42-3111
http://www.city.takahashi.okayama.jp/site/nariwahospital/


九州医事新報社ではライター(編集職)を募集しています

九州初の地下鉄駅直結タワー|Brillia Tower西新 来場予約受付中

九州医事新報社ブログ

読者アンケートにご協力ください

バングラデシュに看護学校を建てるプロジェクト

人体にも環境にも優しい天然素材で作られた枕で快適な眠りを。100%天然素材のラテックス枕NEMCA

暮らし継がれる家|三井ホーム

一般社団法人メディワーククリエイト

日本赤十字社

全国骨髄バンク推進連絡協議会

今月の1冊

編集担当者が毎月オススメの書籍を紹介していくコーナーです。

【今月の1冊, 今月の一冊】
イメージ:今月の1冊 - 88. AI vs. 教科書が読めない 子どもたち

Twitter


ページ上部へ戻る