国立研究開発法人国立がん研究センターが7月、鹿児島で膵(すい)がんの早期発見に向けた実験的検診をスタートした。収集した血液で新たなバイオマーカーの有効性を検証。効率的な検診方法の確立を目指す。
臨床研究は、鹿児島県民総合保健センター(日本対がん協会鹿児島県支部)が実施する地域健康診断が対象。採血で収集した血液を活用し、膵がんの新たなバイオマーカーとして期待される「アポリポプロテインA2」(※)のアイソフォーム(タンパク質の構造や機能が似通った分子の総称)濃度を計測する。
異常値が発見された被験者は、鹿児島大学、鹿児島市立病院、出水総合医療センターで造影CT検査を受診。アポリポプロテインA2の陽性反応的中率を調査する。
現在、がんの部位別死亡数で膵がんは第4位。早期の発見が難しいことから多くのケースがⅣ期で診断され、膵がん患者全体の80%以上が手術適用でないとされる。
鹿児島県民総合保健センターは検査体制が整い、健診を受けた人の精密検査受診率も高いことから臨床研究の実施場所に選ばれた。期間は2019年3月まで。被験者登録の目標は5000人から1万人。
国立がん研究センター研究所早期診断バイオマーカー開発部門の本田一文ユニット長は、「新バイオマーカーの有効性を科学的に証明し、低コストで低侵襲の検診方法の開発につなげたい」と語った。
※2015年、国立がん研究センターは膵がん患者や膵がんリスクが高い疾患の患者は「アポリポプロテインA2」というタンパク質のアイソフォーム濃度が低下することを発見。米国国立がん研究所との共同研究では、既存のバイオマーカーと比較して、高い精度で早期膵がんの検出が期待できることを確認。検査キットも開発されている