上天草市立 上天草総合病院 蓮尾 友伸 事業管理者・病院長

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医療職の確保 〜魅力を発信する病院へ〜

【はすお・とものぶ】 熊本県立玉名高校卒業 1982 熊本大学医学部卒業 同第2外科入局 1983 水俣市立病院 1986 熊本大学医学部第2外科 1989 東京都がん検診センター1992 済生会熊本病院 1994 熊本赤十字病院 1996 熊本大学医学部第2外科 1997 龍ケ岳町立上天草総合病院 2003八代総合病院 2007 水俣市総合医療センター 2012 上天草市立上天草総合病院 2017 同事業管理者・病院長

 4月に就任した上天草市立上天草総合病院の蓮尾友伸事業管理者・病院長。

 職員確保のための取り組みや地域連携の取り組みなどについて聞いた。

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◎医師確保のために

 地方の病院は同様の悩みを抱えていると思いますが、当院も人材の確保には苦戦しています。当院は天草五橋の5番目の橋を渡り終えて、さらに車で30分、熊本市内からは車で約2時間の「上島」の海と山の境のわずかな平地に立地している195床(一般92床、地域包括ケア57床、療養型46床)、国保直診のケアミックス型の病院です。

 特に医師不足は深刻です。常勤医数は2012年の21人をピークに現在12人と激減しています。2004年の新臨床研修制度導入以来、熊本大学医局も地域への医師派遣能力が低下しているのです。

 現在は各医局から曜日限定で、外来診療の応援を仰いでいる状況ですが、入院患者の対応、当直業務、看護学校の講義分担等は常勤医師の仕事です。医師不足による業務量の増加で医師が疲弊し、さらなる離職を生む悪循環を断ち切るためにも医師の確保が喫緊の課題だと考えています。

 一方、病院は地域の雇用の場という側面もあります。仮に病院がなくなれば、職員350人が転職あるいは転居を余儀なくされます。そのご家族を含めると1000人強の住民に影響が及ぶものと推測されます。

 まずは医師の確保、次に薬剤師、看護師などのメディカルスタッフの人材確保が私に課せられたファーストミッションとなりました。

 病院には、1965(昭和40)年開設の上天草看護専門学校を併設していますが、若者は都会への憧れからか、卒業後、熊本市内や都会の病院へ就職してしまいます。奨学金貸与者も年期が明ければ転出します。看護師に限らず、この地域出身の医療従事者はそれなりに多いのですが、戻ってきません。地元の住民がこの状況ですから、縁もゆかりもない医師を確保することは容易ではありません。

 当院の医局の窓から堤防までは約10mで、その気になればベランダからも釣りができます。また海岸でのバーベキューも格別で上空では鷹もおこぼれを狙っています。

 かつて「星空日本一」に選ばれたほどの、街灯もネオンもない町の裏にそびえたつ龍ケ岳山頂のミューイ天文台と、今は雑草が生え放題のテニスコート付きのロッジなど、アウトドア派には垂涎(すいぜん)の的...のはずです。

 しかし、イノシシも出没する自然ばかりを強調しても説得力がないので、胸を張って"私たちの病院"といえるような、チーム上天草と呼べるような風通しの良い職場、"明るく、元気な病院づくり"を初年度の目標とし、そのような環境ができ上がれば、自然と人材も集まるのではないかと、やや楽観的に考えることにしました。

 恒例の互助会主催の旅行や野球観戦ツアー、クリスマスパーティー、ミニバレーボール対抗戦(28チーム)、病院あげての上天草市けーな健康フェア開催、加えて来年からは3年に1回の病院運動会などを企画し、職員にはすべてに積極的な参加と意識改革を呼び掛けています。

◎地域包括システムの構築のために

 厚生労働省はその地域独自の地域包括システムの構築を求めています。地域包括ケアとは住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるように地域ぐるみで支援し、サービスを提供しようというものです。平たく言えば、療養病床や介護施設に入院または入所していた人を在宅でケアし、最終的には在宅看取りまでして医療費を削減しましょうという政策です。

 それには、それなりの医療・介護間のチームワークが必要です。市の地域医療推進会議、社会福祉協議会などの施策に加えて、過疎地においては病院とMSW(メディカルソーシャルワーカー)、訪問看護ステーション、ケアマネジャー、調剤薬局、歯科医などが直接顔を突き合わせて個々の症例に学び、スキルアップを図る必要があります。当院では昨年度は月1回、本年度は3カ月に1回のペースで病院独自の多職種連携会議を開催しています。

◎SNSの活用

 地域の患者さんに訪問看護を提供していますが、マンパワー不足と僻地ならではの人口密度の希薄さから1日数人が限度であり、都市部で想定されているような効率は望めません。タブレット端末によるSNSを活用した多職種連携も検討しています。

◎日本紅斑熱への対応

 当院内科の和田正文部長は日本紅斑熱の専門家です。日本紅斑熱はRickettsiajaponica と呼ばれる病原体をもつマダニにかまれることにより感染、発症し、診断や治療が遅れると死に至る感染症です。この地域では2006年ごろから急増し、現在までに当院で140例の発症が確認されています。

 国内でも有数の症例数で、天気、気圧、湿度、発生場所など詳細な分析をしており、現在では月別発生予測まで出すほどです。県内はもちろん、全国各地での講演依頼が殺到しています。当院は日本感染症学会の認定研修施設として登録されており、この分野に興味のある医師にはお勧めです。

◎過去の被災を忘れない

 1972(昭和47)年の天草大水害では、時間雨量130mmの集中豪雨で土石流が発生、死者は122人におよび病院は土砂に埋まり壊滅状態となりました。

 当院は災害拠点病院に指定されておりDMATを2チーム編成しています、過去の支援を忘れることなく災害出動要請には真っ先に出動し、万が一の被災にも対応できるよう避難訓練、食糧備蓄などの準備を怠らないようにしています。

上天草市立 上天草総合病院
熊本県上天草市龍ケ岳町高戸1419-19
TEL:0969-62-1122(代表)
http://www.cityhosp-kamiamakusa.jp/


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