地域の医療ニーズに応える
人口約7万人の佐伯市は、大分県南端、宮崎県との県境に位置する。
1935年に設立され、80余年の歴史を持つ西田病院は、地域のニーズに合わせた医療を提供し続ける。増田満院長に話を聞いた。
―歴史が長い病院ですね。
佐伯市内には、当院とJCHO南海医療センター、長門記念病院、佐伯中央病院と、公的な役割を担う病院が四つあります。
当院は、西田尚史理事長の祖父である茂氏が開設したのが始まりです。もともと産婦人科でスタートしています。
病院の方針として、「佐伯市民のためのかかりつけ医」を目指し、産婦人科はもちろん、小児科、内科、外科、整形外科、人工透析センターなど、産婦人科以外の診療科も新設してきました。
市内には、産科クリニックもありますが、合併症がある方やリスクが高い方は当院の産婦人科で受け入れています。また、小児科の入院施設があるのは当院だけです。
現在市内の4病院が、救急を輪番制で診ています。しかし、大分県の場合、大分市内に医師が集中しており、各病院とも医師の確保が難しくなっているのが実状です。
現在地のコスモタウンに新築移転したのは2012年。一般病床167床、回復期リハ病床23床、療養病床54床の、計244床を運営しています。
回復期リハ病床は、他病院で急性期治療を終えた患者さんを受け入れられるよう新築移転時に開設しました。急性期病院での入院日数が短くなっていますが、それにも対応できる体制となっています。
入院期間内にできるだけ充実したリハビリテーションを提供できるよう日曜日、祝日、年末年始も含む365日の実施体制も整えています。
当院のリハビリ室は400㎡以上の広さがあり、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が患者さんのため質の高いリハビリを提供しています。
私の専門である呼吸器内科の分野で考えると、誤嚥(ごえん)性肺炎や術後の食事再開時の嚥下(えんげ)などに対応する言語聴覚士は大変重要な領域のセラピストです。高齢社会が進む中で、欠かせない職種だと思います。
―病院長に就任し、特に力を入れていることは。
安全な医療の提供や、患者さんが快適に療養生活を送るための環境作りを大事に考えてきました。
今、特に改善が必要だと思っているのが、「外来の待ち時間の長さ」です。
外来は、患者さんが平日1日あたり約480人来院されます。日によっては、大変混雑し、どうしても待ち時間が長くなってしまいます。少しでも、待ち時間を短くしたいと思い、「待ち時間を使って検査をするといった工夫が必要」だと職員には言っています。
また、職員には、言葉遣いなど、接遇には気を付けてほしいとも言っています。
来院する患者さんに、知り合いが多くいるため、言葉遣いなどがついつい、おろそかになりがちです。
しかし、「親しき仲にも礼儀あり」です。言葉遣いや態度に注意して対応するようにと伝えています。
せっかく来院された患者さんですから、気持ちよく帰っていただきたいと思っています。患者さんや、同僚に「ありがとう」という感謝の気持ちを持って接してほしいと思います。
―課題は何でしょう。
医師の確保です。どの病院も医師の確保は大変だと思います。当院では特に内科医の確保が、喫緊の課題です。また、開業医の高齢化も地域の課題の一つです。
最近では、救急医療において、大分市内の病院との連携を大事にしています。車で行けば、大分市内まで40分くらいです。
今、当院が特に連携を深めたいとアプローチしているのが、大分市医師会立アルメイダ病院、大分県立病院、国立病院機構大分医療センターなどです。これらの病院の責任者の方に、まず当院を視察してもらい、状況を理解していただくように、お願いもしています。
脳出血、脳梗塞などの患者さんの場合、当院では初期対応をし、専門的治療の必要があれば、大分の病院に搬送し、受け入れてもらう流れがスムーズだと考えています。
―新たな取り組みなどは。
病院に隣接して、2015年10月に病児・病後児保育施設を設置しました。当院が、佐伯市の委託を受けて運営しています。対象は佐伯市内の子どもさんで、事前に手続きをしていれば受け入れが可能です。
施設は、3部屋に分かれていますので、疾患ごとに保育することができます。共働き家庭の増加、核家族化などによって、徐々に利用者が増えています。
―医師になったきっかけは。
父親はサラリーマンでした。自分は専門的な知識や技術を身に付けたいと考え医師を目指しました。
―研修医の方へのメッセージを。
当院は病院も新しく、働く環境も整っています。また、循環器専門医、内視鏡専門医など専門医も多数いますので、幅広い知識を学ぶことができます。
東九州自動車道がつながり大分市からの通勤も可能ですので、若い医師の方にぜひ来てほしいと期待しています。
医療法人慈恵会 西田病院
大分県佐伯市鶴岡西町2-266
TEL:0972-22-0180
http://www.nisida-med.jp/