独立行政法人 労働者健康安全機構 岡山ろうさい病院 三好 新一郎 院長

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医療従事者の働き方を変えたい

【みよし・しんいちろう】 愛媛県立八幡浜高校卒業 1977 大阪大学医学部卒業 1984 大阪府立羽曳野病院 1987 カナダトロント大学胸部外科 1988 米国ワシントン大学胸部外科 1991 和歌山県立医科大学第一外科助教授 1997 大阪大学医学部第一外科助教授 2001 獨協医科大学胸部外科教授 2004 同附属病院副院長兼務 2009 岡山大学大学院腫瘍・胸部外科教授 2011 同大学院呼吸器・乳腺内分泌外科教授 2017 岡山ろうさい病院院長

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科呼吸器・乳腺内分泌外科(第二外科)教授(2009年4月〜2017年3月)を退官後、4月、岡山ろうさい病院の院長に就任。三好新一郎院長が吹き込もうとしている新しい風とは。

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―どのように発展してきた病院ですか。

 戦後の復興に伴う経済発展により、労働災害の件数が急増しました。

 岡山県民は労働省(現:厚生労働省)に対して労災病院の誘致運動を展開。全国で8番目の労災病院の設置が決定し、1955年、内科、外科、整形外科の3科・30床の病院として開院しました。

 2008年から2014年に院長を務めた清水信義先生が「明るく温かみのある病院にしたい」というイメージのもと、2013年に病院を増改築。7階建ての新館が完成しました。「グリーン病棟」「オレンジ病棟」など、カラフルな色使いが特徴です。

 なお、清水先生は私が8代目教授であった岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 呼吸器・乳腺内分泌外科(第二外科)の6代目教授です。

 岡山ろうさい病院の院長には、代々、岡山大学の教授が退官後に就任しています。大学の動きと密接な関係にあり、例えば第二外科が扱う領域が広がるにつれて、当院にも呼吸器外科、乳腺外科などが新設されていったというわけです。

 現在は外科、内科を合わせて21診療科、ICU10床、HCU8床を含む358床の総合病院として機能しています。

―特徴は。

 理念として「地域の人々に最適な医療を提供し、働く人の健康を守る」を掲げているとおり、「地域医療」と「勤労者医療」が2本柱です。

 開設時はまさに「労災のための病院」でしたが、時代とともに役割は変化。広く「地域への貢献」を使命とする病院となりました。

 主に当院が位置する岡山市南区および隣接する玉野市の地域医療を担い、地域医療支援病院に指定されています。

 玉野市立玉野市民病院(玉野市)など医療機関との連携のもと、市民公開講座を開催。また、周辺地区の先生方と各科の診断・治療について自由に意見を交わす「岡南臨床フォーラム」を定期的に開催しています。

 当院の特徴の一つは救急医療に力を入れていることです。24時間体制の診療体制を整え、2016年の救急車搬送台数は約2900台。新規入院患者さんの36%が救急外来受診者です。

 高度で安全な専門医療を提供するために、人工関節センター、消化器病センター、アスベスト疾患ブロックセンター、勤労者医療総合センターなど、さまざまなセンター機能を有しています。

 この4月、「脊椎脊髄センター」を新設しました。岡山大学病院整形外科脊椎・脊髄グループの田中雅人准教授が副院長・センター長に就任。ナビゲーション手術による脊椎・脊髄治療実績では、世界的にも知られた先生です。

 日本では数台しか導入されていない最新の術中画像装置「O-arm」とナビゲーションを融合させた手術を実施しています。国内はもとより、海外においても先端的な取り組みでしょう。

 また、形成外科は常勤医が2人の体制となりました。乳腺外科と共同で「乳がん治療・乳房再建センター」が新たに稼働しています。

 2016年4月に開設した「患者サポートセンター」の機能強化も進めています。

 サポートセンターには、前方支援として「地域医療連携室」、後方支援として「退院調整室」「医療福祉相談室」、感染対策や褥瘡(じょくそう)、スキンケア、がん相談支援、口腔ケアを担う「チーム医療連携室」の4部門が設置されています。

―「働く人」に向けた医療について。

 長い年月の間に、疾患の構造も変化してきました。精神的な疾患が増えてきたことも、その象徴でしょう。

 大きな変化の一つは、がん医療の進化です。「治療を続けながら働きたい」と願う人が増え、実際にそれが可能なケースも多くなりました。

 岡山産業保健総合支援センターと連携し、2016年11月、患者サポートセンター内に相談窓口を設置。がん治療と就労の両立支援に関する相談を無料で受け付けています。

 当院にある「アスベスト関連疾患研究センター」は、まさに国内のアスベスト研究の中核施設です。

 センター長の岸本卓巳副院長は早くからアスベスト問題に取り組み、厚生省の研究プロジェクトとして中皮腫による死亡例を全国的に調査した実績があります。現在、各地の労災病院の症例を集積し、診断や治療法の研究を進めています。

 また、アジア圏のアスベスト健康被害問題にも協力しています。モンゴルやベトナム、中国などで診断技術研修会を開いています。

 2014年、環境省の研究プロジェクトにも着手。透過電子顕微鏡とエックス線解析装置を導入し、石綿繊維測定検査をスタートしました。

 早ければ今秋にも、新たなアスベスト研究施設の建設が始まります。岡山大学病院が中心となって準備を進めるメディカルセンター構想においても、同病院のバイオバンクと連携してアスベスト関連疾患の研究を進めていけたらとイメージしています。

―今後、注力する点は。

 地域のこと、院内のことを、まずはしっかり分析していく時期だと考えています。その上で、地域に何が必要かを見極めたいと思います。

 例えば現在、当院には婦人科はあるものの産科がありません。この領域については地域の産科の先生が支えてくれているのですが、実は後継者がいないという問題に直面しています。少しずつ産院が減っているのです。

 赤ちゃんが無事に生まれ、健やかに育つ。それは町が元気であることを示す基準でもあるでしょう。地域の要請があれば、産科の新設も検討してみたいと考えています。

 院長の仕事として最大のテーマは、働き方の改革です。「働く人の健康を守る」と宣言している一方で、医療従事者の働き方については見過ごされてきた面があります。

 諸外国と比較しても、日本の環境整備は遅れているのが現状です。医師は医師の、看護師は看護師の仕事に専念できていない。そんな状況は珍しいものではありません。

 効率性もサービスの質も落とさず、職員がハッピーで長く働ける職場を目指します。これは私が医師となって40年、ずっと願い続けてきたことでもあります。

 私は岡山労災看護学校長も兼務しています。若い人に伝えているのは、医療人にとって大事なのは、やはり「優しさ」だということです。

 忙しくて心に余裕がなければ患者さんに優しくすることなどできない。人から言われて優しくなれるものでもない。

 私がやるべきことは「職員が優しくなれる」環境整備です。その意思をしっかりと示し、医療者の働き方を変えていきたいと思います。

独立行政法人 労働者健康安全機構 岡山ろうさい病院
岡山市南区築港緑町1-10-25
TEL:086-262-0131
http://www.okayamah.johas.go.jp/


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