関西電力病院 千葉 勉 病院長

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がん診療を一層充実
「家族を連れていきたい病院」に

【ちば・つとむ】 兵庫県立長田高校卒業 1974 神戸大学医学部卒業 同附属病院 市立宇和島病院 三木市民病院 1981神戸大学医学研究科内科学専攻博士課程修了 1983 米国ミシガン大学消化器内科学講座研究員 1989 神戸大学医学部老年医学講座教授 1995 京都大学大学院医学研究科消化器内科学講座教授 2017 関西電力病院病院長

 1953年開設の関西電力病院。この春、千葉勉・前京都大学消化器内科学講座教授が病院長に就任した。長年、がん診療・研究の第一線を走りつづけてきた千葉病院長が、新天地で目指すこととは。

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◎がん診療を充実

 関西電力病院はこの10年で急激に進化してきたと言っていいでしょう。

 清野裕総長(前病院長)が中心となり、規模、内容ともに充実させてきました。2007年に病院を建て替え。2015年には病院付属の医学研究所を開設しました。2016年にはDPCⅡ群病院(大学病院の本院相当)の認定も受けています。

 診療の柱は生活習慣病と、がん。がんの診療・研究をさらに充実させようということになり、この4月、私が病院長として着任したのです。

 職員たちにまず話したのは「家族が病気になった時、ここに連れていきたいと思える病院にしよう」ということでした。

 現在、病院を取り巻く状況はかなり厳しく、健全経営は大きな課題です。

 でも、医療機関が利益を上げることを第一に考えるべきではありません。「質の高い医療の提供」という基本的な考えが抜け落ちてしまっては、何のために存在するのか、わからなくなってしまいます。

 「臨床研究を推進し、日々の診療に生かす」のが当院のポリシーです。

 これまで当院の研究所は、糖尿病を専門とする清野総長が中心となって、生活習慣病の研究を進めてきました。今後は私も、がんの臨床研究を推進し、診療に還元していきたいと考えています。並行して、厚生労働省のがんの調査研究班の代表としての仕事なども継続していく予定です。

◎がんであっても、がんだけじゃない

 国内の年間死亡者数は約130万人。そのうちの37万人余りは、がんで亡くなっています。これは、病気で亡くなる人のおよそ半数です。

 ですから患者さんを診る時には、常に「がん」の可能性を頭に置いておく必要があるでしょう。

 腰痛で整形外科を受診したとしてもがんの転移かもしれません。「物が二重に見える」と眼科を訪れた患者さんは、脳腫瘍の場合が多いです。

 すべての診療科が、がんに関わる可能性がある。その認識を持つことが大切です。

 治療でも各診療科の協力が不可欠です。

 腎不全の方に抗がん剤を投与した場合は、直後に腎臓内科が人工透析をします。抗がん剤の副作用で発疹や色素沈着といった皮膚障害が出た場合には、皮膚科が対応します。

 「がん相談支援室」の役割も重要です。最近は、治療法が進歩しました。がんが治るだけでなく、治療しながら日常生活を送ったり、働いたりできる人も多くなりました。「がんとともに生きる」時代なのです。

 患者さんには、がんそのものの問題以外にも、脱毛などの副作用、仕事、お金など、さまざまな問題が発生します。社会生活を営むためのサポートが求められる時代になっているのです。

 がんの治療であっても、がんのことだけ考えていればいいというものではありません。まさに、「チーム医療」が必要です。

◎教育で将来をつくる

 当院に限らず、医療界の将来を考えたとき、大事なのは若い医師やメディカルスタッフへの教育です。

 現在、この病院では研修医を受け入れています。彼らが1人前の医療者になってくれるよう、育てる責任を担っていると思います。

 京都大学を退官する前、私自身が研修医1年目に担当した患者さんに関する資料を読み返しました。半分くらいの患者さんの名前を、憶えていました。それだけではありません。病気のこと、くせ、考えていたこと、家庭環境...45年もたっていたのにです。

 それは、2〜3カ月という長い期間、主治医として一緒に過ごしたことが、大きく影響しているのでしょう。

 私が医学部を卒業した当時、研修医は一つの病棟を4カ月間担当していました。まだMRI、CTもないころです。診断に時間を要したこともあって患者さんは2〜3カ月入院していました。

 しかし、今は検査機器の進歩で診断が早くなり、平均在院日数にも制限があります。研修医は1〜2カ月でさまざまな専門診療科をローテーションするシステムになりました。

 研修医時代に主治医でいられる期間は短くなり、患者さんとの関係を築くのも、難しくなってしまったのです。

 時代の流れからすると、仕方のないことかもしれません。でも、若い人を教育する上で、患者さんとの関係が希薄になるというのは、決して良いことではないでしょう。

 患者さんに触れ、接する中で、実体験として覚えたことは、教科書から学んだことよりずっと記憶に残り、身につく。そのことは伝え続けていきたいと思っています。

◎「しつこい」内科医を

 私は消化器内科医です。当初は内分泌学の道に進もうと考え、神戸大学医学部第三内科学講座(現:糖尿病・内分泌内科学部門)に入局しました。転機になったのは、研修医時代の、市立宇和島病院(愛媛県宇和島市)への赴任です。

 約500床で医師が30人ほど。医師1人当たりがかなり多くの患者さんを診ていました。

 内科の患者さんは、消化器、循環器の疾患が中心。そこで数多くの消化器の病気、患者さんを診療するうちに興味を持つようになったのです。

 大学院に戻り、ガストリンなどの消化管ホルモンを研究。いくつかの病院で臨床経験を積んだ後、神戸大学教授を経て、京都大学消化器内科学講座の初代教授を拝命しました。

 今、世の中の風潮として、すぐトリアージできる医師、どんな症例でもすぐに診断できる医師が求められているように感じます。

 救急医療の現場では、確かに大事なことでしょう。でも、内科医に必要なのは見落としがないようにじっくり患者さんを診るということ。「しつこく診る」というスタンスを持った医師を育てないといけないと思います。

 例えば、岩手医科大学消化器内科消化管分野の松本主之教授は、患者さんの4代前までの家系を調べ、難病「非特異性多発性小腸潰瘍症」が、SLCO2A1という遺伝子の変異に起因する疾患だということを突き止めました。

 今は、核家族化によって、家系が分かりにくくなり自分と配偶者との間に血縁関係があることさえ知らない人が増えています。病気の原因が遺伝によるものだとしても、それに気づくことが難しい時代になっている。丁寧に、何世代も家系をさかのぼって初めて、原因が特定できる場合もあるのです。

 患者さんの中には、治る人もいますが、治らない人もいます。一生病気と付き合っていかなければならない人も、数多くいるということを、忘れてはなりません。

 われわれ医師の仕事は、その患者さんに、ずっと向き合っていくということでもあるはずです。

関西電力株式会社 関西電力病院
大阪市福島区福島2-1-7
TEL:06-6458-5821
http://kanden-hsp.jp/


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