医療法人社団 猪鹿倉会 パールランド病院 猪鹿倉 忠彦 院長

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鹿児島の認知症医療の充実を目指す

【いがくら・ただひこ】 鹿児島県立鶴丸高校卒業1991 鹿児島大学医学部卒業 1995 鹿児島県立姶良病院 2000 英国インペリアル大学留学2003 医療法人社団猪鹿倉会パールランド病院院長 2013 公益社団法人鹿児島市医師会会長

 高齢化とともに増加する認知症などに対応しようと、1988年に開設されたパールランド病院。2013年には、県の「認知症疾患医療センター」の指定を受けた。地域の認知症医療を支える医療機関としての思いを、猪鹿倉忠彦院長に聞いた。

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―県内の状況などは。

 当院は、増加していた高齢者、特に認知症者などに対応することを目的に、神経内科のクリニックを運営していた私の父が、病院に変更し、400床で開設しました。

 鹿児島県は早くから高齢化が進んでいます。現在の人口は約163万人、そのうち100歳以上の人は1365人と全国で4位。65歳以上の高齢者は47万8千人で全体に占める割合は28.6%と、全国18位となっています。

 さらに65歳以上の人のみの「高齢者世帯」の割合は28.4%と、全国平均23.2%を大きく上回っています。

 開院から、30年弱が経ちます。当初は比較的軽い認知症の人が多かったものの、最近では、合併症があるにも関わらず、認知症のため、一般の病院では治療が受けられない人、周辺症状(BPSD)が悪化し、家族だけで診ることができない人など、より専門的な治療が必要な患者さんの受け入れが増えています。

 鹿児島市内の医療機関や施設からの紹介が中心ですが、市外、遠くは県外からの患者さんの紹介も多くあります。

 近年、高齢者を受け入れる施設は県内にも増加しています。しかし、認知症の症状がひどく、施設や在宅では受け入れられない人も多くなっています。そのような患者さんを受け入れ、地域医療の連携を深め、その後方支援病院としての役割を担っていると考えています。

―県の「認知症疾患医療センター」です。

 2013年12月に指定を受け、今年で4年目。県内には、現在9カ所の指定病院がありますが、鹿児島市内では、谷山病院と当院の2カ所になります。

 指定病院となり、職員の意識も変わってきました。認知症とその家族との関わりを大切に、地域に貢献する公的な仕事をしているという意識が、一層、高まった気がします。

 センターの職務としては、専門的医療機能としての相談窓口、専門的な認知症の診断、認知症の周辺症状・身体合併症に対する急性期対応。そして、地域連携拠点機能として、かかりつけ医、介護・福祉の関係機関との連携をし、認知症の早期発見啓発のための市民向け講演会。医療従事者・介護従事者向けの研修会などもしています。

 新しい取り組みの認知症初期支援チームの活動も少しずつ増えてきています。例えば、独居で過ごしている高齢者の中には、認知症があり、地域の方から、生活面などで心配をされている方がいます。

 そのような方の情報が、支援チームが配置されている地域包括支援センターに、民生委員などから連絡があります。そして必要があればチームが自宅を訪問します。場合によっては受診や福祉サービスにつなげます。難しいケースが多いのですが、地域で支えていく力のひとつになっていきたいですね。

 認知症の診断と治療で注意すべきことの一つに、多種多剤による薬の相乗効果や副作用で、せん妄などのBPSDが増強するケースがあります。服薬管理という観点から、過剰、重複などのポリファーマシーにも注意が必要です。

 また、市販薬が合わずに、せん妄状態になったというケースもしばしば見かけます。投薬内容の見直しや調整で、ある程度落ち着くのですが、放っておくと重度になり、危険ですので注意が必要です。

 センターとしては、認知症を呈している現在の症状が、不可逆的なものなのか、あるいは可逆的な、BPSDをもたらしている原因は何なのかを見つけ、早期に対応することが大事な役割です。

―貴院の認知症の治療の特徴は。

 当院の特徴は、抑制がゼロであること。開設当初から、手足の拘束などで行動を制限しないように取り組んでいます。

 その基本は、やはり正確な診断と原因をしっかりチェックすることです。

 そして、患者さんの生活リズムを整え、保つことを大事にします。そのためには、投薬よりも、まず精神科リハビリテーションを取り入れることを第一に考えていきます。

 それでも、どうしても落ち着かない場合は、少量の向精神薬や睡眠導入剤などを使うこともありますが、薬にはなるべく頼らない方針です。

 また、患者さん本人との信頼も大事ですが、家族の方との交流もできるだけ多く取り入れるようにしています。

 家族会に参加してもらい、認知症治療や対応、取り組みについて、理解を深めたり、家族間で情報を交換してもらいます。

 また、院内では2015年から、認知症カフェを運営しています。月1回の定期開催で、去年は12回実施。認知症の方や家族、認知症に関心のある方など、誰でも気軽に参加でき、認知症や介護に関する相談、脳トレや認知症ミニ講座なども開いています。

 認知症カフェは当院以外でも取り組まれていますが、地域で次第に周知されてきているようで、参加者が増えています。認知症への関心を高め、理解することが、地域での認知症とその家族を支える大きな力になると思います。

 認知症への対応は、ケースバイケースであることが常で、われわれ医療従事者にとっても大変難しいものです。家族の会や市民向け講座でも、具体的な例をあげながら話をします。

 認知症を患う方を、病人としてとらえず、本人の世界、人格を尊重し、少しでも安らぎを得られるように配慮することは、認知症との関わり方で最も大切なことだ思います。

 それに加えて、介護者の話をしっかり聞くことも大切ですね。講演を聞いた方から、「日々の介護の疲労や挫折から、どうして良いかわからず、自分がパニックになってしまう」といった声を聞くこともありますが、介護者の疲れや悩みをケアするということも、われわれの重要な役割のひとつだと感じています。

医療法人社団 猪鹿倉会 パールランド病院
鹿児島市犬迫町2253
TEL:099-238-0301
http://www.pearlland.or.jp/


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