熊本市南部地域の回復期ハブ病院を目指す
熊本市は病院の機能分化や、地域の医療連携に早くから積極的に取り組んでいる。南区では、2011年に医療法人清和会が開設した平成とうや病院がポストアキュート(急性期を経過した患者の受け入れ)を担い、地域包括システムの中の重要な役割を果たす。岡嶋啓一郎院長に現状を聞いた。
◎増加する受け入れ患者
当院は、熊本市中央区で水前寺とうや病院などを運営する医療法人清和会が開設しました。
ここは、南区の熊本東バイパス沿いの交通の便が大変良いところにあり、二つの急性期病院(済生会熊本病院、熊本中央病院)の中間に位置します。
われわれは市内にある急性期病院と連携し、患者さんを受け入れることを第一の役割だと考えています。現在、一般病床14床、地域包括ケア病床40床、回復期リハビリテーション病床56床の合計110床で運営しています。
年間1000人前後の患者さんが入院し、その8割以上が急性期病院からの受け入れ。残りの2割が、外来やクリニックなどからの入院となります。
急性期病院は在院日数短縮が課題ですので、当院への紹介患者さんは年々増加。最近は、毎年100人程度ずつ増えています。
数もそうですが、患者さんの重症度も上がっています。高齢者が多いので、合併症もあり、これによって、一層重症度が上がる傾向です。
まるで、ひと昔前の急性期病院に近い役割を担っているようにも感じます。
◎急性期病院との連携を密に
患者さんのスムーズな受け入れのためには、毎朝の病床会議は欠かせません。午前8時40分スタート。常勤医師8人全員と各部署の代表10人が参加します。
当院の医師は専門性が高いのが特徴です。呼吸器専門医、循環器内科専門医、整形外科専門医がそれぞれ2人ずつと神経内科専門医、消化器外科専門医がいます。
この高い専門性があるからこそ、急性期病院のカバーができると思います。専門医がこれだけ揃っている後方支援病院は少ないようで、それが急性期の病院からの紹介につながっているようです。
もちろん、急性期病院からの紹介の多さは、われわれにとっても、大きなやりがいにつながっています。後で述べる後方との連携も含めて南部地域の回復期ハブ病院となることをめざしています。
受け入れる側として欠かせないのは、医師、看護師、リハビリスタッフ、地域連携室職員などさまざまな職種のスタッフによるチームの急性期病院訪問です。
目的は、受け入れる患者さんの情報を、転院前の早い段階で把握すること。診療科ごとに急性期病院に行きますので、ほぼ毎日のように当院の誰かが伺っているような状態ですね。
私も参加して、定期的に病病連携会議もしています。
◎地域との連携に目を向ける
一方、われわれの病院での治療を終えた患者さんを受け入れてくれる、慢性期の病院との連携にも力を入れ定期的に病病連携会議をしています。
今後の課題は、介護施設との連携です。病院と介護施設は、設立の背景も考え方も違いますので、まだまだ溝があるようにも感じます。それを埋めるための努力を、今後していかなければなりません。
以前は、地元の施設のことを医師はあまり知りませんでした。今は、どのような施設があるのかもわかりますし、みなさんとの連携を重要視しています。地区の公民館活動や民生委員さん達とのつながりも必要でしょうね。
急性期病院の医師の方も最近は意識されつつありますが、当院に来た患者さんが治療後にどう生活をしているのか、どう地域で過ごしているのかを知りたいんですね。治療をしてそれで終わり、ではないんです。
急性期病院、後方病院や施設との連携を目標に、今後、会合などを開き、フェースツーフェースの関係づくりを目指したいですね。
また、認知症の方への対応も重要です。当院の患者さんも、1割程度は認知症の合併があります。
熊本県と熊本市は、独自に医療従事者向けの認知症対応力向上研修を実施。この研修の修了者がくまもとオレンジドクター、くまもとオレンジナースとなります。当院にもオレンジドクター、オレンジナースがおり、今後も受講者を増やす予定です。
高齢者の見守りも含めて、地域のつながりが一層、求められています。
◎院内の体制づくり
当院の職員は現在220人。病床数に対しては、多い方かもしれません。
しかし、約100床で年間1000人の患者さんを受け入れていますので、患者さんの入れ替わりが激しいのです。多くのスタッフでカバーしていくしかないと思います。
そのために一番重要なのが、患者さんに対応するためのチーム医療体制。多職種の連携です。
入院患者さんを受け入れた後、最初の3週間は、チームカンファレンスを徹底します。最初に治療の方針などをしっかり見極めないと、次の患者さんの受け入れに間に合いません。
お互いのコミュニケーションスキルを上げ、あらゆる職種が患者さんの情報を共有し、早期退院という目的に向かっていかなければなりません。
1年ほど前から、職員同士の縦のつながりだけでなく、横のつながりも大事にしようと、「横軸リーダー」という考え方を取り入れています。
縦軸のリーダーは、職種ごとにありますが、病棟ごとに分ける場合など職種を横断する「横軸」という考えのチームは、なかなかありませんでした。
しかし、中堅のアクティブなリーダーを据えることで、職種を超えて、良い連携ができていくのもわかりました。医師主導で縦割りの治療をやっていくという、昔ながらのやり方を切り崩すチャンスなのかもしれません。
医療法人清和会 平成とうや病院
熊本市南区出仲間8-2-15
TEL:096-379-0108
http://www.tohya.or.jp/heisei/