―残業時間の上限規制が本格的に議論―
如水社会保険労務士事務所 代表 早田 晋一
ワークライフバランスの流れと並行して進んでいる働き方改革。その中でも最も重要なテーマになるのが、長時間労働の削減です。その具体的な対策とされているのが残業時間の上限規制(現在事実上の青天井となっている残業時間数に罰則付きの上限を設けること)ですが、いよいよ厚生労働省内で議論が本格化してきました。
まだ確定ではありませんが、現在議論されている中身を見ていきたいと思います。
まず、現在残業時間の限度が書かれている告示を法律に格上げし、罰則による強制力を持たせます。そして、従来は上限なく設定が可能となっていた臨時的な特別の事情がある場合の残業時間について、上限を設定することが適当とされていて、その内容は下記の通りです。
特例を適用した場合でも、時間外労働は年間720時間が上限、そしてどんなに忙しい時期があっても休日労働を含んで単月で100時間、2〜6カ月平均で80時間を上回ってはならないということになります。
なお、医療機関で勤務する医師については、基本は上記の規制の対象としつつも、医師法における応召義務等を踏まえて、規制が施行されてから少なくとも5年後をめどに適用することなども議論されています。
現状ではどうしても特例の方が注目されがちですが、まずは月45時間、かつ年360時間の原則を今後どのようにクリアしていくかを追求することが重要です。ただ、一方で、単に労働時間を削減するだけでは、現場でも混乱が生じかねません。上限規制の議論を見据えながら、前回もお知らせした生産性の向上の取り組みも先んじて進めていくことが求められていくと感じます。
労働政策審議会建議
「時間外労働の上限規制等について」をもとに作成
時間外労働:労働基準法に定める法定労働時間〔原則週40時間、1日8時間〕を超える労働
休日労働:週1日または4週4日の法定休日における労働
原則 | 時間外労働の上限は、現行と同様に月45時間、かつ、年360時間(1年単位の変形労働時間制の場合は、原則として月42時間、かつ、年320時間) |
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特例 | 臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して労使協定を結ぶ場合でも時間外労働時間は年720時間まで、かつ、 年720時間の範囲内において一時的に増加する場合について、最低限上回ることのできない上限は次の通り ①休日労働と時間外労働が、2カ月~6カ月平均でみて80時間以内であること ②休日労働と時間外労働が、単月で100時間未満であること ③月45時間(1年単位の変形労働時間制の場合は42時間)の時間外労働を上回る回数は、年6回までであること →月45時間の上限には休日労働を含まないため、①・②については特例を活用しない月においても適用 |
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