2020年に新病院竣工 地震被害からの復活
熊本セントラル病院は地域の急性期から在宅までを担う中核病院。
4月に就任した井上雅文院長に話を聞いた。
◎計画の前倒し
現在、病床数は259床。内訳は急性期病床109床、地域包括ケア病床が150床です。もともとは308床だったのですが、昨年4月の熊本地震で建物が被害を受け、最上階の病棟は休床せざるを得なくなっています。
震災前から新病院の建築計画があり、2020年の東京五輪後をめどに策定する予定でした。しかし、建物が地震の被害を受けたこともあり、計画を前倒し。3年後の2020年には新病院が完成する予定です。
設計にあたり現在、各部署の職員からヒアリングをしています。ただ、出た意見のすべてを叶えることは難しいでしょう。ある程度、各部署のバランスを考えた設計をするつもりです。
医師として病院の新築に関われるのは、滅多にない機会だと思います。恵まれていると思う一方、若干の不安がないかと言えば、うそになります。
しかし「すべては患者さんのために」を常に念頭に置いて、準備をすすめていけば、必ずしや、みなさんに満足していただける新病院ができると確信しています。
◎動線を工夫
新病院ではセキュリティーを強化しますし、一般職員のプライバシーが保たれる空間づくりをします。一方、管理職の個室はすべてガラス張り。外から見て、在室かどうかが一目瞭然です。
外来部門はすべて1階フロアに設置します。当院の患者さんはいくつかの診療科を併診する人が多いので、移動が楽になるでしょう。外来を1階に集約することで、待ち時間短縮というメリットもあります。
現在、個室は全病床のうちの10%の25床ほどですが、それを30%まで拡大します。
また、がんの温熱治療をするハイパーサーミア治療装置を導入し、6月1日から稼動しています。
新病院では診療科の削減も検討しています。痛みを伴う改革になることは必至ですが「選択と集中」をして、経営のスリム化を図らないといけません。
◎急性期から在宅まで
当院がある菊池郡は、熊本市と阿蘇市の中間に位置しています。西側の地域は急性期病院が少なく、それらの地域の2次救急を私たちが担っています。
ここから車で30分ほどの場所に熊本赤十字病院があります。同病院は超急性期病院ですので、そこからの患者さんを受け入れてリハビリテーションの提供もしています。
救急、手術、リハビリ、また訪問看護、訪問リハビリもするなど、急性期から在宅まで幅広いサービスを提供しているのが当院の特徴でしょうか。
◎2枚看板
医師不足、看護師不足に悩まされています。地方の病院に共通する悩みと言えるでしょう。今よりも待遇をよくすれば来てくれるのかもしれませんが、そうなると経営に響く。頭が痛いですね。
ただ、整形外科と消化器内科は、私の出身大学でもある久留米大から医師を派遣していただいているので、充足しています。 優秀な方々に来ていただいているので、今では、この2科は当院の看板診療科なんですよ。
当院では医師の負担軽減のために医療事務作業補助者を10年前に導入しました。医師1人に医療事務作業補助者を1人つけることで、医師が本来の業務に集中できるようになりました。
その結果、医療事務作業補助者導入前に比べ、医師1人当たり1.5〜2倍程度の患者さんを担当できるようになったのです。
◎接遇能力向上のために
現在、病院をあげて取り組んでいるのが職員の接遇能力向上です。若い職員の中にはあいさつができない、正しい言葉遣いができない人がいます。
自分では丁寧に話しているつもりでも、患者さんからは、必ずしもそうだとは思われていません。
「正しい言葉遣いとはこうだ」と絶えず指導することで、ずいぶん改善してきたと感じます。
病院もサービス業です。患者さんに不快な思いをしてほしくない。それが私の願いですね。
どんなに病院が新しく、きれいになり、良質な医療を提供できたとしても、患者さんを不快な気持ちにさせるようでは、意味がありません。それが続けば患者さんに選ばれない病院になってしまうでしょう。
接遇を学ぶことで人間としても成長できると思います。当院は地域の若者をお預かりしている側面もあります。職員のご両親や周りの人から「熊本セントラル病院で働き出して、あの子は変わったな」と思ってもらえるようにしていければと考えています。
◎復活
地震が契機となり、職員同士の結束力が高まりました。また、被災して私も職員も人生観、仕事に対する意識が180度変わりました。
新病院建設という新しい目標に向けて、これからも職員一丸となって歩みをすすめていくつもりです。
医療法人 潤心会 熊本セントラル病院
熊本県菊池郡大津町室955
TEL:096-293-0555
http://www.kchosp.or.jp/