新たなコミュニティーを見いだすきっかけに

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全国の認知症サポーターの数

 日本の高齢化の問題をいちはやく提起し、ベストセラーとなった小説「恍惚の人」が出版されたのは1972年。その当時、1970年の日本人の平均寿命は、男性が69.31歳、女性が74.66歳、高齢化率( 65歳以上人口割合)は、7.1%だった。

 主人公は、弁護士事務所にパート勤務する昭子。同居する義父が、妻を亡くしたことをきっかけに認知症を発症。昭子は、義父の記憶障害、徘徊(はいかい)など悪化する症状に振り回されながらも、"嫁"としての責任を果たそうと介護に奮闘する。

 家庭を顧みず、実の父のことにも関わらず、介護に非協力的なサラリーマンの夫、義父を預けられる施設を探す昭子の姿など、介護を取り巻く環境は現代とほとんど大差ない状況のようにも思える。

 それから45年。2015年の最新の調査では、男性の平均寿命が80.75歳、女性が86.99歳。高齢化率は26.7%と、大きく伸びた。

 今回の認知症特集を担当するにあたり、できるだけ多様な立場からの"認知症"への視点を大切にしたいと考えた。

 今年4月に京都市で開かれた国際アルツハイマー病協会国際会議では、認知症患者、家族など当事者からの情報発信の重要性を知った。

 当事者からの情報は、認知症への理解をより深める大きなポイントだ。「今月の1冊」では、日本で初めて、実名で自身の認知症について語った越智俊二さんとその妻、須美子さんの著書を紹介した。

 また、国立長寿医療研究センターや鳥取大学では、最新の認知症対策について話を聞いた。

 特集インタビューでは、各地域の大学、医療機関での取り組みを紹介。愛媛大学大八木保政教授の「予防の取り組みは広がっており、相対的なリスクは下げられる」という言葉には、少し安堵(あんど)した。

 地域独自の活動にも注目したい。政令都市のなかで高齢化が最も進行する北九州市。先日1周年記念の講演会などが開かれた認知症カフェや、北九州在宅医療・介護塾の研修会にも参加させてもらった。多職種で、地域の課題を解決しようと、定期的に研修を開く。

 小学生を含め認知症サポーターの養成に積極的な熊本県菊池市の取り組みも知った。国際アルツハイマー病協会国際会議で、同市の活動報告をした介護老人保健施設の松永美根子副施設長は、住民が一体となった活動の重要性を訴えた。

 このような事例は、認知症をきっかけに全国各地で、新たな"地域コミュニティー"が生まれていることを教えてくれる。認知症は、患者、その家族に大きな負担を強いるものであることは間違いない。しかし医療、福祉の課題は、医療従事者だけが解決するものではなく、われわれ市民が、もっと積極的に関わっていくべきものだということに改めて気づかされる。

 震災などの災害の直後、そこには、利他を大事にして助け合う特別な共同体"災害ユートピア"が生まれることが、社会学的に明らかになっているそうだ。

 "認知症"という、まだまだ未知の病に翻弄(ほんろう)されているかのようにみえる私たち。しかし、裏を返せば、医療者はもちろん人々が、冷静に、かつ互いを思いやる特別な"コミュニティー"を生み出す時代に、生きているとも言えるのだ。

(特集統括:原田千春)


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