高知大学医学部整形外科 池内 昌彦 教授

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全人的診療ができる、能力の高い整形外科医を養成する
新専門医制度へむけた教育プログラムを策定

【いけうち・まさひこ】 六甲学院高校卒業 1995 高知医科大学医学部卒業 高知医科大学整形外科 1999 仁生会細木病院整形外科 2001 東京逓信病院整形外科 2002高知赤十字病院整形外科 2003 高知医科大学整形外科助手 2007 米国University of Iowa 2009 高知大学整形外科講師 2013 同准教授 2014 同教授

 全国有数の高齢化率(32.8%=全国2位/2015年)の高知県。

 県内医療をリードする高知大学整形外科は、スポーツ医学の研究とともに、高齢者の運動機能維持に焦点をあてている。昨年、新専門医制度に向けた教育プログラムを策定した池内昌彦教授に話を聞いた。

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―高知県のスポーツレベルは低いという認識のもと、整形外科医という立場から県内スポーツの向上に力を入れています。スポーツレベルに改善のきざしはありますか。

 今年春に行われた第87回選抜高等学校野球大会に、21世紀枠として高知県立中村高校が出場しました。明徳義塾高校は2年連続出場です。高知県のスポーツレベルが上がったかどうかは評価が分かれますが、昨年に続いて2校が選ばれたことは率直に評価したいと思います。

 じつは、当教室も甲子園出場校に医療的サポートという立場で関わらせていただいています。中村高校の甲子園出場は、へき地でスポーツをがんばっている子どもたちに夢を与えました。今後は、そういった環境にある子どもたちも医療的にサポートしていきたいと思います。

―来年の新専門医制度開始に向けて、教育プログラムを作られました。

 さまざまな議論があったために実施が1年延びましたが、全体的に見れば良い制度になるのではないかと思います。ただ、細かい点で調整が必要になるでしょう。まず、制度を導入するにあたって各診療科が足並みをそろえないと、学生がとまどってしまいます。

 本学の整形外科教室は先行してプログラムを実施することが決まっていますが、先に始める診療科について学生たちは「警戒」するんですね。制度自体がどうなるかわからない状態で、評価が定まらないうちに自分の将来を決めることに躊躇(ちゅうちょ)するのは当然かもしれません。そのため、これまでの方針を変えない診療科を選ぶ研修医もいます。

―新専門医制度についてどう評価していますか。

 私が評価している部分は、専門医になるまでのプログラムが明示されていることと、必要なカリキュラムを計画的に消化できるという点です。計画的に作られたプログラムに沿って教育されることで、国民が期待しているような、ある程度の質が担保された専門医を育てることができると思います。

―新専門医制度によって医師の偏在が解消されることを期待する声もあります。

 大学に人を戻す効果はあるのだろうと思います。ただ、地方大学に人材が集まるかは別の問題で、やはり大きな医局や大学に人が集まることになるでしょう。

 というのも、新専門医制度に対応しようとしている診療科は、指導医数にあわせて人数制限することになります。そうすると、例えば整形外科とそれ以外の診療科で迷っている方がいたとして、高知大学の整形外科では人数制限があるから入れない。でも外科や麻酔科だったら人数制限のゆるい都会で専門医資格を取得できる。それで結局中央志向が強くなって地方大学に人が集まらなくなる、そんなシナリオを危惧しています。

 全国一斉に専門医プログラムを導入しなければ、タイミングがずれることで有利不利が生まれてしまうでしょう。学生や研修医のなかで「自分は整形外科の専門医しか取りたくない」と思っている方ってそんなには多くなくて、ほかの診療科もそれぞれに魅力があって、迷っていることがほとんどなんです。どの診療科を選ぶかということは、ちょっとしたタイミングですぐに変わってしまうんですね。

―高知大学の整形外科では、専門医取得にむけてかなりしっかりしたプログラムを作られましたね。

 昨年の夏ごろにプログラムを完成させました。研修先として県内基幹病院をすべて網羅したことが特長になります。東西に細長い県ですので、東西の拠点病院に重点的に配置しました。

 まず、指導医をきちんとそろえるところから準備しました。これまでは指導医がさまざまな地域の病院に散らばっていましたが、指導医を基幹病院に集約し、全領域にわたって研修医を指導できる体制をとっています。さらに県内では研修できない分野もありますので、県外の同門病院にも研修をお願いしています。

 高知市内の高知赤十字病院は、本来は高知大学と違う別大学の系列なのですが、今回のプログラムでは同院とも手を組みました。病院側としてもマンパワーが充足されますし、こちらも幅広い研修を受けさせたいという、いわば両者の利益が一致したわけです。

―プログラムで育てたい整形外科医とは。

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 他の大学に比べると少ないかもしれませんが、学内の他の診療科に比べると毎年コンスタントに入局者があり、2年間で7人増えて現在19人が整形外科スタッフとして在籍しています。

 高知県は高齢の患者さんが圧倒的に多く、高齢化率が県全体では約33%、地域によっては40%にのぼる地域もあります。日本平均の20年先をいく超高齢社会であり、高齢者が持つさまざまな身体的問題を「パーツ屋」として診るのでは、時代に対応できません。全人的に診療できるような医師を育てることが、本学に課せられた使命の一つだと考えています。

 もっとも、高齢者医療ばかりに目を向けてしまうと、整形外科専門医として不十分です。高齢者医療は、医療だけでは解決できないことも含め、全人的アプローチが必要な奥の深い領域ですが、一方で整形外科専門医としては「妥協」が必要な領域でもあります。きちんと治してあげたいが患者さんの社会的背景や合併症との関係で根治的な専門治療ができないなど、妥協の連続といってもいい分野です。

 一方、スポーツ医学は主に若い方を対象にしており、整形外科専門医として妥協が一切許されない厳しい領域です。求められるものが違いますので、両分野をきちんと学ぶ必要があります。

 主にこの二つの分野について対応できる医師の育成が必要ですが、両方の判断ができる医師を育てるのは想像以上に難しい。日常的に高齢者だけを診ていても医師は育たないので、そういう意味でも新専門医制度は一定の期間、専門的教育が受けられるようになっているため歓迎しています。

 ある期間はへき地で高齢者医療を学ぶ、次は専門的で高度な医療を学ぶ。明確に頭の切り替えができるという意味では良い制度になると期待しています。

高知大学医学部整形外科
高知県南国市岡豊町小蓮185-1
TEL:088-866-5811(代表)
http://www.kochi-ms.ac.jp/~fm_ortop/


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