2病院の再編・統合で心技一体の医療を目指す
◎2病院の再編統合計画
当院は、1934(昭和9)年、川崎造船所社長、文部大臣などを歴任した平生釟三郎(ひらおはちさぶろう)氏が"営利本位に陥らず富める患者も貧しい患者も名医の治療や手術が受けられる病人本位の病院"を目指して開院しました。
レトロな雰囲気があり、これまで映画やドラマのロケにも多く使われた建物は、長い間、神戸市民から愛されてきました。しかし、築80年余ですから建物の老朽化は大きな問題です。耐震上の問題がありますし、この先も地域の皆さんに質の高い医療を提供し続けるため、新病院を造ることになりました。
県内では、神戸大学を中心としたエリア(神戸市、加古川市、丹波市、姫路市、小野市)で、500床規模の新病院を造る計画があり、現在、五つのプロジェクトが完了、もしくは進行中です。
2013年には三木市立市民病院と小野市立市民病院が統合されて、北播磨総合医療センター(450床)になりました。昨年は、加古川市民病院と神鋼加古川病院が統合して加古川中央市民病院(600床)として診療を開始しています。
2018年には、兵庫県立柏原病院と柏原日赤病院の統合による新病院(320床)が開設予定です。2021年には、製鉄記念広畑病院と姫路循環器病センターを統合した新病院ができる計画もあります。
当院と六甲アイランド甲南病院は神戸大学の東灘〜阪神地域の基幹施設としての役割を担うことになり、2病院の再編・統合計画が3年前から神戸大学との間で始まりました。
統合に伴う新病院の改築工事は1期と2期に分けて計画しています。1期工事は、今年3月に着工しました。2期工事が終わる2021年12月には、当院は480床の急性期病院に生まれ変わる予定です。
一方の六甲アイランド甲南病院は、現在の建物を改装して181床の回復期を主体とする病院になります。2病院の機能分化と連携による一体的運用は、2020年4月からの計画です。
◎神戸大学の東部阪神間の拠点病院として
今年1月の病院長就任と同時に、神戸大学から私を含む5人の外科医を補強して外科のチーム編成を一新。胃・大腸などの消化管、肝臓、膵臓、胆道といった消化器、乳腺など、それぞれの領域で最新の技術を備えたチームをつくりました。
今月からは、糖尿病・総合診療の内科医3人をはじめ、泌尿器科と消化器内科にそれぞれ1人ずつ常勤の専門医を迎えました。6月には、麻酔科に1人補強します。
これまでの当院の強みであった整形外科、眼科、耳鼻科に加えて外科、内科、脳外科など、その他の領域にも力を入れていきたいと考えています。
◎病院長としての抱負
病院長就任から、まだ3カ月ほどしかたっていませんが、病院の長所、短所について、これまで理解を深めてきました。
神戸大学の教授だった2014年から3年にわたり、神戸大学と甲南会のメンバーで構成されたこの病院の病床再編推進委員会の委員の一人として深く関わってきたからです。おかげで、院内の改革に速やかに着手することができました。
神戸市の中で、東灘区の人口は増加傾向です。しかし、この地域には質の高い医療を受けられる公的病院がなく、医療の"空白地帯"ともいわれてきました。
当院は、大学病院のように研究を伴う高度先進医療が求められているわけではありません。患者さんのことを第一に考え、最善・最新の医療、安心・安全な医療を心掛けたいと思っています。
医療というのは、技術一辺倒ではいけません。患者さんを自らに置き換えて思う温かい心と高い技術力が一体でなければなりません。われわれが目指すのは"心技一体"の医療です。高い品格を持って地域医療を担うことができる、地域の中核病院を目指します。わざわざ遠方までいかなくても、地元で安心して医療を受けられる環境を整えたいと考えています。
当院は高台にあります。車でなければ来院することが難しく、アクセスの問題をできるだけ早急に解決したいと思います。新病院の開設に伴い、最寄り駅からのシャトルバスを増便し、駐車場スペースも十分に確保する予定です。
この高台に負けないくらい高い医療クオリティーがあってこそ、次の100年を目指すことができると思います。そのために必要なのは"心技一体"の医療人の育成を通じた神戸大学との連携です。今後は、さらに連携を強化して、若手医師の育成に積極的に取り組んでいきます。
大学から有能な人材を受け入れ、志の高い医師を現場で教育して大学に返す。そうした循環型の教育システムを構築しているところです。医師だけでなく、すべての職員が希望に満ちて自らを高めることができるような教育システムも整えて、病院全体で医療の質を徹底的に向上させたいですね。
また、患者さんを待たせない医療の実現にも早急に取り組みたいと考えています。
高齢の患者さんの中には、多領域の疾患がある方が多くいらっしゃいます。そうした方々にとって、いくつもの診療科や検査室を移動して回ることは大変な負担です。その負担を少しでも軽くするために、患者さんの必要に応じて、医師、看護師、薬剤師などのチームが患者さんのもとに集まるような診療システムを構築したい。高齢の患者さんが多い当院には必要なことだと思います。
持続可能な医療を提供することも重要です。経営環境を引き続き改善していくことも私に課せられた大きな役目の一つです。
これからも"心技一体"を心掛け、患者さんとご家族の期待を裏切ることのない医療、満足していただける医療の実践に努めていきたいと考えます。
一般財団法人甲南会 甲南病院
神戸市東灘区鴨子ケ原1-5-16
TEL:078-851-2161(代表)
http://www.kohnan.or.jp/kohnan/