長崎大学医学部 麻酔学教室 原 哲也 教授・診療科長

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多職種連携を進め、新たな治療法・治療技術を創生する

【はら・てつや】 長崎県立長崎南高校卒業1992 長崎大学医学部卒業 同大学病院麻酔科医員 1993 大分県立病院麻酔科研修医 1994 北九州市立八幡病院麻酔科1995 長崎労災病院麻酔科 1997 長崎大学病院麻酔科医員 1998 同集中治療部助手 2001 同麻酔科助手 2002 同講師2013 長崎大学大学院麻酔・蘇生科学分野教授 2014 長崎大学病院集中治療部部長2016 長崎大学病院副病院長 2017 長崎大学病院手術部長

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―1月1日に、日本集中治療医学会の九州地方会から九州支部へと組織変更されて、初めての学会となります。

 今回のテーマは「融合力と創生力」に定めました。医療界では多職種間の連携と協働が必須となっています。お互いが他の職種を理解して尊重することで、連携をより進化させるねらいをテーマに込めました。さまざまな領域の知識と技術を持ち寄って、新たな治療法や治療技術を創生したいという期待もあります。

 プログラム構成は例年通りで特に変更はありません。特別講演1題と教育講演が3題、ランチョンセミナーが2題。さらに一般演題を予定しています。

―集中治療医学会であるため、他分野からの参加者も多いですね。

 医師だけではなく、看護師や臨床工学技士、さらに薬剤師やリハビリの理学療法士など、さまざまな分野の方が協働するのが集中治療ですので、広く多職種の方々が出席されます。

 今回の大会で何か新しいことを達成することは難しいかもしれませんが、集中治療の技術を高めたいという意識を持つ方々が一つの会場に集まって、集中治療分野について学ぶ、これこそが融合(協働)であり、創生(連携)につながると思います。

―多職種連携を推進するにあたってどのような課題がありますか。

 長崎大学病院における多職種連携はうまくいっていると自負しています。これをさらに向上させるためには、「全員がリーダーである」という意識を高め、さらに体制もそれに沿ったものに変えていく必要があるでしょう。

 連携において、リーダーを誰か1人に決めてしまうことは弊害を生みます。全員が主体的にリーダーとしての自覚をもって考え、行動できないのであれば無責任体質になってしまうし、すべてのことでリーダーの決定を待つのであれば時間の無駄にもなります。

 麻酔科医は手術におけるコーディネーターとしての役割が求められています。これについても、他分野同士を結びつける役割はあるものの、決して麻酔科医がリーダーというわけではありません。

 管理職=リーダーではないということと同じことで、上司の決裁がないと物事が進められないのであれば、その現場は非常に硬直した考え方に捉われていることになります。

 医療における協働や連携は決して医師の顔色をうかがうことではなく、主体的に取り組むという意味であってほしいのです。

―現状では医師が主導権を取らざるを得ないのでは。

 そのような施設もあると思います。しかし、それではその医師の能力以上のことはできません。集中治療の良さは、たとえば薬剤師の知識を活用できることであったり、リハビリの専門家が介入したりすることです。医師が自分の意見にこだわって多職種からの提案に「いいアイデアだからやってみよう」と言えないのであれば、それは連携ではありません。

 そういう意味では医師自身も意識改革が必要であり、それができなければ多様な職種の持つ力を患者さんの利益に反映できないでしょう。

 それぞれの医療スタッフが「自分が患者をケアしている」という自覚を持ち、ケアに自分の考えも反映されるという実感を持たなければ、効率も上がりません。こういった現場を実現できない病院は淘汰(とうた)されていく可能性もあります。私は長崎大学病院集中治療部の部長も務めていますが、集中治療部はこの考え方を目指しています。

 今回の学会も、医師だけではなく看護師のセッションもありますし、看護師に座長もお願いしました。臨床工学技士や理学療法士の方も参加されます。みなさん非常に熱心に取り組んでいらっしゃいます。

―ロボット支援を受けた手術など、低侵襲手術が注目を集めています。

 低侵襲手術における麻酔管理は、あえていうならば「高侵襲」であるといえます。通常の心臓手術であれば、胸を大きく開けて手術する際に普通の麻酔薬を投与して、人工呼吸も普通のものなど、ある程度決まったパターンがあります。

 内視鏡を使った低侵襲手術では視野が悪いため、肺の手術であれば肺をつぶさなければなりません。前立腺の手術であれば、寝かせた患者の体全体を頭の方に約30 度傾けて腸を下げ、前立腺を見えやすくする。頭を下にすると脳圧が高くなってうっ血もしますし、横隔膜が押し下げられて呼吸しづらくもなります。つまり、傷は小さくても体にとっては低侵襲ではない状態になるわけです。

 麻酔科は全身管理をしますので、低侵襲手術だからといって簡単な麻酔になることはなく、むしろ逆なんです。麻酔の基本を押さえた上で、人工呼吸や血圧管理などで工夫が必要になります。

―麻酔科医不足が深刻な地域もあります。

 医師の偏在という意味では、麻酔科よりも産婦人科や小児科のほうが問題でしょう。麻酔科医の数は確かに少ないかもしれませんが、それはどの時点でカウントするかで評価が変わってくるのではないでしょうか。

 地域医療構想では急性期病院の病床が減るとされています。当然、手術数も伸びなくなるでしょうし、そうなると10年後には麻酔科医の数が適正とされるかもしれません。現在の国家試験の定数で麻酔科医を輩出し続ければ、将来的には飽和する可能性すらあります。医師数については、もっと長期的な視点で議論を重ねることが必要になるでしょう。

 もっとも、現場のマンパワーが不足しているのは事実であり、長崎大学医学部麻酔学教室は、臨床に強い麻酔科専門医を数多く育成することを目標に置いています。集中治療に対する誇りと高い能力、さらに多職種連携を高いレベルで実現できるコミュニケーション能力を持った専門家を育てることで、医療のさまざまなニーズに応えていきたいと思います。

日本集中治療医学会 第1回九州支部学術集会

2017年5月13日(土) テーマ/融合力と創生力
会 場/長崎ブリックホール(長崎市茂里町2-38)
http://www.congre.co.jp/kyuicu2017/
会 長/原 哲也
(長崎大学大学院 麻酔・蘇生科学 長崎大学病院麻酔科 教授・診療科長)事務局/長崎大学医学部 麻酔学教室(長崎市坂本1―7―1)
TEL:095-819-7370 FAX:095-819-7373

長崎大学医学部麻酔学教室
長崎市坂本1-7-1
TEL:095-819-7200(代表)
http://www.med.nagasaki-u.ac.jp/anesthes/index.html


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