感染症にも対応可能アプリ「CARED」配信
大阪大学の塚本俊也特任教授が、スマートフォンアプリを通じて住民から収集した災害情報などを支援や対策に使う「多言語対応・広域災害情報予測システム(Multilingual WideView Disaster InformationPrediction System)」の開発を進めている。
2013年度からインドネシアでの実験をし、情報収集のための日本版アプリ「CARED」を配信。今後、自治体や領事館、医療機関など情報を必要とする組織と連携し、本格的な運用を目指す。
同システムの大きな特徴は、住民からの情報提供に頼ること。3月配信開始の最新版では、住民がアプリをダウンロードし、「災害報告」を選択すると、避難状況や救援物資の不足の有無、近隣の学校の損壊情報などを、システム管理者に通知できる。
例えば、避難状況を報告する場合、「避難の必要なし(リスクのレベルが低い/ない)」「避難待機中(中程度)」「避難した(高い)」の3段階から現状を選択。写真やコメントを追加し、リアルタイムで被災者の声や現場の様子を届けることもできる。
災害報告には、「感染症」「食中毒」など災害以外の項目もあり、報告できるのは計20。それぞれについて、被災情報や感染状況を地図上に表示することで、刻々と変わる状況や必要な支援を把握しやすいように工夫。統計を分析してグラフ化する仕組みを備え、13言語に対応する。
今後は、アプリ利用者を増やし、収集できる情報の精度を上げると同時に、システム全体を管理する能力があるグローバルな企業、災害への対策が求められる自治体などとの連携や個人情報管理体制の構築も必要になるという。
塚本特任教授は、「近年、規模が大型化する災害だけでなく、国境を越えて拡大する感染症でも情報収集や発信に住民の協力が不可欠」と説明。「産学連携での開発を進め、地方自治体の災害支援計画構築や外国人旅行者への災害情報発信に役立つシステムにしたい」と話している。