医療、介護を通じて安心して過ごせる街を
当院は一般急性期58床、地域包括ケア病棟54床、回復期リハビリ病棟54床、計166床と大阪市鶴見区で最多の病床を備えています。救急からリハビリ、在宅まで幅広い医療を提供しているのが特徴だと言えるでしょう。
一般病床は10対1看護体制で、平均在院日数は10日前後です。地域包括ケア病棟は2015年の秋に開設。2016年4月に増床して、5階をまるごと地域包括ケア病棟にしました。
法人全体でPT(理学療法士)、OT(作業療法士)、ST(言語聴覚士)が計60人余おり、病院内には、50人余います。大阪府内で5本の指に入るほどの多さだと思います。
急性期の患者さんが入院して回復までに時間がかかってしまうとADL(日常生活動作)を損なってしまいます。そうなると自宅に戻るのが困難になってしまいます。回復期リハビリ病棟では患者さんが、ご家庭で安心して生活ができるような質の高いリハビリを心がけています。
回復期リハビリ病棟も地域包括ケア病棟もケアマネジャーとの連携を重視しています。密な連携をとることで、退院翌日からの介護が可能になる体制が整っています。
―地域連携について。
地域医療室の職員が「大阪連携たこやきの会」という地域医療連携合同協議会に参加し、病診連携の強化を図っています。同会は、府内59病院が加入し、交流や意見交換を通じ、医療連携の方向性を合わせることで、よりシームレスな連携を目指す組織です。そのおかげで回復期リハ病棟、地域包括ケア病棟ともに8割〜9割は周辺病院からの紹介です。
私自身も積極的に地域の開業医の方とコミュニケーションを取るようにしています。「困った時はコープおおさか病院へ」と思ってもらえるようにしていきたいですね。
法人内には当院の他に九つの診療所があります。同じ法人ということもあって連携がとてもスムーズなので、患者さんがたくさん来てくれ毎日忙しいですね。私もプレイングマネジャーとして外来に出ているんですよ。
―今後力を入れていく取り組みは何でしょう。
地域の医療機関には当院が、どういう立ち位置の病院かを常に発信しています。でも、これからは地域の人たちにも、当院が、どんな病院なのかを知っていただかなければならないと感じています。
今後は病院が医療、介護を通じて、地域住民が健康で安心して過ごせる街づくりに寄与していかなければならないと思います。当院では現在、月に1回、地域住民のための医療講座を院内で開いています。毎回テーマを決めてやっていますが、たくさんの人が来てくれます。ヘルスプロモーションも病院が地域で果たすべき役割だと感じています。
法人全体の目標は地域での医療・介護・福祉ネットワークの強化です。そのためには職員も絶えず勉強してレベルアップをしなければなりません。
連携において、それぞれが専門意識を持ちすぎるとスムーズな連携がとれません。あくまでも患者さんを中心とした連携を取れる病院にしていかなければならないと感じています。
―無差別平等の医療を掲げています。
4年前から無料低額診療を始めました。当初は月に1人か2人くればいい方だったのですが、今では年間200人弱の方が利用されています。
無料低額診療の患者さんに話を聞くと、多くは生活保護の対象となる人たちです。しかし、こちらが生活保護の申請を勧めても、ほとんどの人は取得しようとしません。それはなぜか。一つには生活保護受給者に対する世間のバッシングの強さが二の足を踏ませるようです。食事代を切り詰めてでも生活保護を受けたくないという人が実に多いのです。
また生活保護を申請すると身内の経済状況が調査されます。身内に負担を負わせたくないとの思いもあるのでしょうね。
私たちは無料低額診療の患者さんが、3カ月〜半年で生活を立て直せるように働きかけています。しかし、いったん病気になって失業してしまうと、そこから生活を立て直すのは至難の業です。当院はそういった方々のセーフティーネットの役割をも担っているのです。
派遣労働者など非正規雇用の増加で、社会の基盤を支えるべき労働者の生活基盤がおびやかされています。この状況を放置しておくと、日本の社会全体が足元から崩れ落ちてしまうのではないかと危惧をしています。
安倍政権は企業が業績を上げれば、国民の所得が増えるという「トリクルダウン」を提唱しています。しかし本当にそうでしょうか。私はタクシーに乗った時には必ず運転手さんに「景気はどうですか」と尋ねるようにしています。みなさん口をそろえて「悪い」と口にします。これが現実で、世間一般の認識も同様ではないでしょうか。無料低額診療が年々、増えてきているのが、何よりの証拠です。
―政府に望むことは。
資本家や大企業のみに目を向けるのではなく、一般庶民の懐が潤うような政策を打ち出してほしいですね。
業績が向上しても給与が上がっていない会社はたくさんあると思います。人件費を増やしたくないという経営者の気持ちは、たしかに分かります。しかし会社を支えているのはそこで働く社員たちなのです。
近年、社会保障費が削減されています。今後、経済的な理由から病院にかかれない人たちはもっと増えてくるでしょう。
アメリカのように医療をお金で買うといった考え方ができる人は、日本ではごく一握りだと思います。多くの人々は病気になったり、失業した時は社会保障に助けられて一生を安心に過ごしたいと願っているはずです。政府には、医療、介護、福祉に関する支出は必要不可欠なものだと認識し、財源をしっかりと確保してくれることを望んでいます。