JCHO神戸中央病院 大友 敏行 院長

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求められる役割を担うことが使命

【おおとも・としゆき】 1975 関西医科大学卒業 同第2生理学教室助手 1978 松下記念病院 京都府立医科大学第二内科学教室入局 1983 社会保険神戸中央病院(現:JCHO神戸中央病院)内科医長 1989 同循環器内科部長 2005 同医務局長 2006 同副院長 2013 同院長

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◎3年前に再スタート

 戦後、健康保険制度が誕生したものの、病院の整備が遅れていたことから、国民はなかなか医療を受けられない状況にありました。

 そこで当時の社会保険庁(現:日本年金機構)は全国社会保険協会連合会、厚生年金事業振興団、船員保険会に運営を委託し、全国に社会保険病院、厚生年金病院、船員保険病院を展開。地域医療を提供してきたのです。

 ところが、病院の経営とはいっさい関係のない、いわゆる「消えた年金問題」がきっかけとなり、同庁の解体や、保有していた病院施設などの財産を売却せよという声が高まりました。当院の前身である健康保険神戸中央病院も、その対象の一つでした。

 一方で医師不足をはじめとするさまざまな問題が顕在化し、住民の反対運動なども起こる中、より地域に貢献できる組織にしてはどうかという方向へ議論が進んでいきました。

 そうして2011年、年金・健康保険福祉施設整理機構法の改正によって、これまで運営を担ってきた3法人を統合した独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)の発足が決定。

 2014年4月から57病院、26介護老人保健施設、7看護専門学校のグループとして再スタートし、私たちも「JCHO神戸中央病院」としての一歩を踏み出しました。

 かつての病院は「疾患のある人を診る」という場所でしたが、高齢化が進んだ今、ケアする対象は「病気に近いところにいる人」にまで広がりました。JCHO全体としても、地域包括ケアをキーワードに、訪問看護ステーションや老人健康福祉施設など、さまざまな付属機関と共に介護まで含めた手厚い体制の構築を基本方針としています。

◎徹底して声を聞く

 ここ北区は神戸市9区の中でもっとも広い面積があり、およそ23万人もの人々が暮らしています。人口の多さに対して、公的病院は当院と済生会兵庫県病院の2院のみですから、それだけ地域のみなさんの期待も大きく、信頼を得られる医療を提供していかなければならない立場にあります。

 では、どうやって期待に応えていくかというと、大切なのはやはり住民、医師会、行政など、地域にいる方々が何を望んでいるか、徹底して把握していくことだと思うのです。

 これまで年に一度、地域協議会を開いて、みなさんから直接声を聞く機会を設けてきました。今年からは、それを二度の開催に増やしました。

 住民の要望は、当院にかかりつけ医としても機能してほしいということです。そこで、開業医と連携して、バトンタッチ紹介と呼んでいる仕組みを取り入れました。

 当院から開業医へバトンを渡すけれども、患者さんの病状や希望しだいで、いつでもまたバトンを受け取れるようにしておく。常にフォローできる体制を維持しておくことで、患者さんに安心感をもってもらうことが目的です。

 それと、「いざ」というときに頼れる病院かどうか、住民のみなさんとしては気になるところだと思います。

 JCHOグループとして再出発して以降、救急医療体制の強化にも注力しています。救急車の受け入れ台数も年々上昇し、昨年は約2600台。今年のペースだとおそらく3000台近くに達するのではないかと予測されます。これには若い先生を中心に総合内科を立ち上げ、病院の基盤が整ってきたことも寄与しています。

 JCHOでは2018年度に、「JCHO版病院総合医(Hospitalist)育成プログラム」の運用を開始します。グループ57病院のネットワークを活用し、医師のニーズに合ったカリキュラムを提供します。

 また、今年度までは総合診療の第一人者であるJCHO顧問・徳田安春先生によるカンファレンスを定期的に当院で開いてきました。

 さまざまな疾患が関連していることを見極める土台があってこそ、専門医としての力がより発揮されるはずです。総合診療の重要性を、市民のみなさんにも伝えていきたいと思います。

 救急隊員の方とは年に数回、報告会を開いて、運んでいただいた患者さんが、その後どのような治療をしたのかとか、いま元気に生活していますといったことを伝えています。モチベーションのアップや連携の深まりにつながると思いますし、きっと患者さんにも、より質の高い医療として還元されていくに違いありません。

◎恩返しをしていく

 3年前から年に3回、市民向けのセミナーも始めました。脳神経外科でしたら脳卒中というように診療科ごとにテーマを決めて、質疑応答なども組み込み、約500人を収容できるホールで開いています。

 住民のみなさんには当院の存続が危ぶまれた際に支えていただきましたから、その恩返しの意味も込めています。

 並行して、最新の医療技術や機器紹介などの内容で、頻繁に地域の医療関係者向けのセミナーも開いています。地域医療支援病院としての義務でもありますが、当院を含めて、地域全体で医療レベルを上げていかなければ、住民の健康を守ることはできないからです。

◎地域の主治医として

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 地域包括ケアを進めていくために一番大事なのは、一人一人の情報を医療や介護を担う施設が的確に共有することではないでしょうか。

 1人で生活しているのか、家族と住んでいるのか。どのような疾患で、どの病院に入院していたのか。どんなリハビリをしているのか。医師の紹介状だけではなく、看護師の紹介状、リハビリ担当者の紹介状など、患者さんの境遇をすべて共有できるように努めています。

 理想としては情報を一カ所に集約し、常時スタッフがいて、問い合わせるとすぐに情報が共有できるようなセンターを設置できればと思っています。実際、医師会の部会では、具体化に向けて動き出そうという話もでています。

 ときどき、若い頃のことを思い出すことがあります。主治医として治療していた患者さんが重症化すると、「もうダメかもしれない」という気持ちになることがありました。

 そんなとき、ある先輩から「主治医があきらめたら、誰が治すのか」と叱咤(しった)されたのです。その言葉は、いつも私を奮い立たせてくれます。

 若い医師の確保、総合医療の確立、地域の連携。私がこの病院の、そして地域の主治医として課題を解決できるよう、結果をおそれずに前進していきたいと思います。

独立行政法人 地域医療機能推進機構 神戸中央病院
神戸市北区惣山町2-1-1
TEL:078-594-2211
http://kobe.jcho.go.jp/

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