クラウド活用でBCP実現
災害時、病院そのものが被災することもある。浸水したり、倒壊の危険が生じたり...。そんな状況でも、診療を続けるための対策が、各医療機関で取られ始めている。
東日本大震災後には、津波による紙カルテの流失や、電子カルテデータの回収不能などが、課題として挙げられた。クラウドの活用で電子カルテのデータを守る方法を構築し、災害時診療継続計画(BCP)実現に取り組んだ、社会医療法人敬和会大分岡病院の例を紹介する。
同病院の新システムは、クラウドサービスを使った電子カルテデータのリアルタイムバックアップシステム。24時間365日、常に電子カルテのデータが院内サーバーからクラウド上にコピーされ続けている。
被災時には、さまざまなパソコンを使って、クラウド上の電子カルテデータを参照可能。病院が使えなくなり、臨時診療所を開設する事態になった場合でも、カルテ情報を活用した診療ができるようになった。
同院がBCPの策定を始めたきっかけは東日本大震災。それまでは毎日、テープ装置を使って電子カルテデータのバックアップをとっていたが、被災時などに、誰がどのようにデータのバックアップを持って逃げるのか、データを使用できる機器はあるのか、などの課題を解決できずにいた。
大分県がまとめた沿岸市町村43地点の最大津波高を見ると、南海トラフ大地震での大分市6地点の最大津波高は3.6mから8.31m。病院周辺も、「最悪2階〜3階ぐらいまで水がくる」(医療情報課、村田顕至氏)と予想される。情報をどう守るのかという課題だけでなく、医療機関が守らなければならない「3省4ガイドライン」やコストなどの問題も同システムでクリアできたという。
「災害時、パソコンと電源、通信環境があればカルテが見られること、設定も簡単で迅速に利用が開始できること、パソコン上にデータを残さないことなどメリットは多い」と村田氏。「クラウドシステム標準対応の電子カルテを使っていない医療機関でも構築可能で、コストも抑えられる」と手応えを語った。