【災害特集】災害弱者は外国人も「多様な視点で備えを」

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 災害時に起こりうるさまざまな問題の中で、外国人への対応は大きな課題だ。熊本地震でも、多くの在留外国人が被災。訪日外国人旅行者も公共交通機関が停止し、一時は避難所に宿泊するなど、多くの問題が起こった。医療機関、医療者がすべき備えを考える。

◎災害情報多言語サイトを通じて

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高知県立大学で実施された外国人対象の防災訓練

 「災害の際、外国人が要支援者になる原因の一つは言葉の問題」と語るのは、熊本市国際交流振興事業団の吉田直さん。事業団は震災直後から、常時4カ国語(日本語、英語、中国語、韓国語)で公開するウェブサイト上で、災害に関わる情報を発信。

 4月20日には、大阪大学未来共生イノベータープログラムの塚本俊也特任教授の提案で、事業団のサイト内情報を12言語で伝える別サイトをボランティアの協力も得て開設した。

 エコノミークラス症候群の予防法、イスラム教徒向けのハラール弁当が届いた避難所の情報、公共料金に関わる特別措置...。きめ細かな情報発信は好評。12言語のサイトのアクセス数は1カ月で計8,000件に上った。

 熊本地震発生当時、熊本市内で生活していた在住外国人は、約5,000人。中国、韓国、フィリピン、ベトナムなど、出身地は多岐にわたる。

 しかし、テレビやラジオから流れる情報は、ほとんどが日本語。日常生活レベルの日本語には不自由しない外国人でも、災害用語は耳慣れず、理解が難しいケースが多いという。

 ウェブサイトやSNSの情報に頼らざるを得ない外国人が多い現状に、塚本教授は「南海トラフ地震など大規模災害では、多言語のサイトの重要性が増すが、ボランティアの対応では限界がある」と危惧する。

◎外国人避難所、母語コミュニケーションでサポート

 外国人が、いったん入った避難所から退去するケースもあった。理由は、同じく「言葉」。知り合いもなく、言葉がわからず、避難所生活で不安や孤独感を感じる人も少なくなかった。「自国で地震は経験したことがない」「視線がストレス」という声もあったという。

 事業団は、「外国人向けの避難所」として前震発生翌日の15日、同事業団事務所がある建物の一部を避難所として開放。食事などの支援物資を配布した。英語、中国語などを話すスタッフが対応し、支援者からイスラム教徒向けの食材などが届くなど、独自の動きもあった。

 日中過ごすだけでなく「自宅が倒壊して戻れない」「余震が怖くて家に入れない」などの理由で宿泊する人もいて、多い日には、約150人が訪れた。

 事業団の職員らは、外国人が避難している約50カ所の避難所も巡回。声かけを行ったり、個別の相談などに応じた。「母語で話しかけられた外国人避難者が笑顔になった瞬間、多言語でのコミュニケーションの重要性を実感した」という報告もあったという。

◎外国人交えた訓練も

 国内在住の在留外国人は、約230万人(2016年6月発表)と増加傾向だ。観光目的などの訪日外国人も、国が推進する観光への施策を背景に増加。2016年は前年比22.1%増の2410万人と右肩上がりが続いている。

 南海トラフ地震で最大で震度7、19mの津波が襲い、約50万人の避難者が出ると想定されている高知県の県立大学は、外国人留学生を対象にした防災訓練を5年ほど前から実施してきた。その経験を踏まえて、災害時の外国人へのサポートを研究する同大学大学院の神原咲子准教授(災害看護学)は、高知医療センターとの合同の災害訓練に留学生や外国人教員の参加を積極的に進めた。

 昨年の訓練では、留学生が日本語も英語も通じない傷病者役となった。留学生はアドリブで医療者と対話。神原准教授は、「実際の災害時のトリアージで直面する場面を体験できる工夫をした」という。

 また、訪日外国人旅行者対策として、九州運輸局では、昨年11月、12月に阿蘇市や由布市の旅館で外国人の協力を受け訓練を実施。2月には「災害時マニュアル」を作成し配布。3月7日からは同局のサイトでダウンロードできるようにしている。

 「有事の際は、日ごろ怠っていたことが、あぶり出される」と神原准教授。「どの地域の医療機関も医療者も、外国人も含めた多様な視点を盛り込み、システム整備や訓練などで備えていく必要がある。外国人などに対するケアの視点を忘れないでほしい」と語った。


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