JR大阪鉄道病院 上田 祐二 院長

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今秋緩和ケア病棟開設
急性期から終末期まで切れ目のないがん医療を

【うえだ・ゆうじ】 大阪府立三国丘高校卒業 1985 京都府立医科大学卒業同第二外科研修医 1987 公立南丹病院外科 1993 京都府立医科大学大学院医学研究科博士課程修了 京都府立医科大学第2外科修練医 同助手 1999 同消化器外科助手 2000 同学内講師 2003 米国テキサス大学MDアンダーソン癌センター留学 京都府立医科大学消化器外科学内講師 2004 同講師 2007 公立南丹病院外科部長 2011 同副院長 2015西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)大阪鉄道病院院長

 JR大阪鉄道病院は1915(大正4)年創立、今年で創立102年と歴史のある病院だ。

 上田祐二院長に病院の特徴や今後の取り組みを聞いた。

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◎地域と共に

 JR大阪鉄道病院は、その名が示す通りJR西日本の企業立病院ですが、JR西日本の企業理念とその運営上の基本戦略(「安全」、「CS(カスタマーサティスファクション)」、「技術」)は、医療にも全くそのまま当てはまることばかりです。

 「次の一歩へ。地域と共に」というスローガンの下、地域共生企業でありますJR西日本の企業立病院として、今後より一層の社会貢献を果たしていきたいと考えています。

◎緩和ケア病棟

 当院は大阪市南部医療圏の中でも、地元の阿倍野区や東住吉区、平野区の住民(総人口約43万人)を診療対象の中心とした中核病院の一つです。近隣には大阪市立大学医学部附属病院という大規模な特定機能病院がありますが、他の医療機関も含めて役割分担を明確にし、継続してこの地域の医療を支えていきたいと考えています。

 当院は現在、20診療科、常勤医師72人(うち臨床研修医7人)の体制下、急性期病棟6棟280床と回復期リハビリテーション病棟1棟40床を有しています。現在もそして今後も当院が担うべき中核医療は急性期医療であることに変わりはありませんが、決してそれのみに特化するのではなく、いわゆる"地域の急性期型多機能病院"として整備、発展していきたいと考えています。具体的には阿倍野区内には皆無、そして大阪市南部医療圏全体においても、極めて不足している緩和ケア病棟を、今秋の開棟を目標に近々病棟改築工事に着手します。当院のように、がん医療を中核医療の一つと位置付けて運営している急性期病院が、緩和ケア病棟を併設することの意義は極めて大きいと考えます。これにより、急性期から終末期まで切れ目のないがん医療を地域住民に提供できる診療体制を、構築できると考えています。

◎痛みを伴う病棟再編

 緩和ケア病棟併設工事の結果、総病床数は320床から17床減少して303床となる予定です。病床数削減という痛みを伴う病棟再編ですが、2025年を直近に控え、大阪府の地域医療構想をも十分に勘案した病院機能の最適化であると考えています。

◎地域医療連携の強化と、強みを生かした診療

 昨年から新たな2世紀目の歩みを開始した当院の中期計画のもう一つの大きな柱に、〝地域医療連携の組織的な強化〞ということがあります。

 限られた医療資源を有効に、効率的に使うためにも地元医師会との連携強化は必須です。そこで昨年末、阿倍野区医師会のご協力の下、連携登録医制度を立ち上げました。今後は阿倍野区以外の近隣区医師会とも同様の制度運用を広め、当院と地域のかかりつけ医の皆さまとの連携を、より一層強固なものにしていきたいと考えています。

 そして、先に述べましたとおり当院は、これからの時代にふさわしい"地域の急性期型多機能病院"を目指していますが、300有余床の中規模病院ですので、医療資源のある程度の選択と集中は不可避です。

 がん医療(手術・化学療法・高精度放射線治療・緩和ケア)以外には、超高齢社会において健康寿命の延伸のためにますます重要となる整形外科疾患、ロコモティブ症候群の診療に、さらに注力していきたいと考えています。

◎多職種協働病院改革

 3年前に当院では、院内・院外のあらゆる問題に対処して病院機能の向上を図るため、多職種職員協働の"改革委員会"を立ち上げました。昨年の春には"イノベーション委員会"と名称も一新し、「診療の質向上」「地域連携」「活気ある職場づくり」という三つの大きなテーマの下13課題において、個別のワーキング・グループが目に見える成果を着々と積み上げてくれています。

 この委員会は、当院がさまざまなスタッフの協力と協調により運営されているという事、すなわち、決してトップ・ダウンではなく職員の自主性によりガバナンスされていることを示す最たるものです。そして、職員同士の職種の垣根を超えた顔の見える関係の構築やチーム医療の推進、そしてワークライフバランスの向上にも大きく貢献してくれています。

◎医学の魅力、出会いの力とライフ・ワーク

 自然科学の分野において、医学は最も未知なる大きな可能性を秘めた分野の一つであると思います。若い時分に医師・医学者を志しましたのも、そこに原点がある気がします。医学は日進月歩で常に目覚ましく、基礎医学においても臨床医学におきましても、やるべきことはいつの時代も無限大です。

 自分もこれまで長らく消化器外科医としてがん診療に従事しながら、がんの免疫療法の基礎・開発研究にも並行して携わってきました。もう大学を離れて10年になりますが、現在も繊維メーカーの東レと滋賀医科大学病理学教室と共同で、制御性T細胞をがん患者の血中から除去する体外循環治療の開発研究をしています。これは自身のライフ・ワークと考えています。

 そして、これまでの外科医としての自分、研究者としての自分がありますのも、大学時代の恩師との出会いがあればこそです。

 人生は、自分の努力半分、人との出会いが半分です。まさに「一期一会」、人との出会いを大事にしなさいと、アフター5の席で常々研修医に話しています。

◎最後に、"鉄道"病院

 国鉄からJRへと分割民営化し、経営の合理化を図った結果、現在JRを母体とする病院は全国7カ所になっています。

 その中で病院名に"鉄道"を残しているのは、当院だけになってしまいました。他の病院は、新築建て替えなどを機に病院名から鉄道を外してしまいました。

 その背景には、地域住民からJRの職域病院という誤解を招きかねないなどの配慮があったようです。

 しかし、一般の方にも医療関係者にも、いわゆる「鉄ちゃん」(鉄道マニア)はたくさんいます。「大阪鉄道病院にはこれからも病院名に"鉄道"を残し続けてほしい」とよく言われますね。

 そう言う自分も、鉄道病院への着任を機に、すっかり「鉄ちゃん」になってしまっています。

西日本旅客鉄道株式会社 大阪鉄道病院
大阪市阿倍野区松崎町1-2-22
TEL:06-6628-2221
http://www.jrosakahosp.jp


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