独立行政法人 国立病院機構京都医療センター 小西 郁生 院長

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【昨年、中山恒明賞を受賞】婦人科がんのパイオニアに聞く産婦人科医療と京都医療センターの「未来」

【こにし・いくお】 香川県立高松高校卒業 1976 京都大学医学部卒業 同婦人科学産科学教室入局 1978 倉敷中央病院産婦人科医員 1981 京都大学大学院医学研究科入学(1988 医学博士) 1986 京都大学医学部婦人科学産科学助手 婦人科病棟医長 産科病棟医長 1992米国アーカンソー医科大学留学 1993 京都大学医学部 婦人科学産科学講師 産科婦人科外来医長 医局長 1999 信州大学医学部産科婦人科学教授 2003 同附属病院副病院長(医療安全管理室長 卒後研修センター長 がん総合医療センター長) 2007 京都大学大学院医学研究科婦人科学産科学教授 2008 同医学部附属病院副病院長(2008.4~2011.3診療担当 2014.10~2015.3教育担当) 2016 国立病院機構京都医療センター院長

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◎地域の急性期医療を担う

 当院は京都南部の拠点病院として地域のみなさまに高度で良質な医療を提供する総合病院です。

 私たちは、この地域の救命救急医療を担っています。24時間365日体制で毎年4500台以上の救急車を受け入れています。

 心筋梗塞などの心疾患についてはカテーテル治療、脳梗塞などの脳疾患にはt―PA治療や血栓摘出術などの最先端治療を実施しています。京都南部の急性期医療の最後の砦(とりで)としての役割を果たせていると言えるのではないでしょうか。

◎がん診療への取り組み

 日本人の2人に1人はがんにかかります。しかし医療の進歩により3人に2人は治癒に至ります。治癒しない場合もさまざまな治療とケアにより「がんとともに長く生きる」ことが可能な時代になりました。

 当院は「地域がん連携拠点病院」として地域の"がんセンター"の機能を果たしています。健診センターではPET/CT検査を導入、早期発見を促し、早期がんに対してはロボット手術も含めた内視鏡手術を適用しています。

 進行がん・再発がんに対しては、各診療科にエキスパートがそろっているので、複数の診療科が共同で根治的治療をしています。また腫瘍内科では積極的に外来がん化学療法をしています。緩和病棟もあります。

◎院長がん初診外来

 「院長がん初診外来」を開設して1カ月ほどになります。毎週火曜日に、がんへの不安がある人、どの医療機関にかかったらよいかが分からない人を対象に、がんの種類や体の状態に応じて、院内の各部門のエキスパートを紹介しています。

 当院には頭から足先まで、どのがんであっても高度の知識、経験、技術を持った医師がそろっています。どんながんの患者さんがきても対応できる体制が整っているのです。

◎糖尿病・肥満・高血圧への対応

 当院は1999年に「内分泌・代謝性疾患」の高度専門医療施設(準ナショナルセンター)に認定されました。その後、臨床研究センターを設置。糖尿病を中心とした内分泌・代謝性疾患の病態と発症機序の解明および予防・診断・治療法の開発研究を担っています。

 2008年からは国立病院機構の臨床研究体制再構築に伴い、内分泌・代謝性疾患だけでなく、がん診療支援を含めた幅広い臨床研究をしています。

 臨床研究センター内分泌代謝高血圧研究部長の浅原哲子医師は体重管理のスペシャリストです。

 数多くのヘルシー料理のレシピ集を監修し、販売をコンビニエンスストアとタイアップしています。

 当院2階のレストランでは浅原部長監修の日替わりヘルシーランチを提供しています。とても評判がいいんですよ。

◎婦人科がんのスペシャリストとして

 昨年10月に日本癌治療学会の第22回中山恒明賞を受賞しました。産婦人科医の受賞は初だということで大変名誉に感じています。

 婦人科がんの病状は患者さんによってそれぞれ違います。必ずしもガイドラインに沿った標準治療が最適だとは限りません。

 21世紀に入り、医学は「ゲノムの時代」に突入しました。包括的ゲノム解析をすることで、患者さんごとの疾患のゲノム個性が明らかとなり、個別化治療が可能となったのです。

 私が目指すのは婦人科がんの患者さんの予後とQOLの向上です。その発生・進展の多様性に注目した分子病理学的研究、および包括的ゲノム解析をして、新規治療法の開発を推進しています。

 私がゲノム解析を用いた婦人科がんの治療に取り組むようになったのにはきっかけがあります。それは2012年に栃木県で開催された「日本婦人科がん分子標的研究会学術集会」で東京大学の間野博行教授の講演を聞いたことです。

 間野教授は肺がんの原因となる「EML4ALK融合遺伝子」を発見した方です。これは細胞増殖をつかさどる酵素であるチロシンキナーゼの一種のALKがEML4と融合することで活性化し、肺がんを誘導するというもので、この発見によりALK阻害剤が開発され、肺がんの予後は飛躍的に向上しました。

 間野教授の講演を聞き、「こんな世界があったのか」と目の前に明るい光が灯ったことを昨日のことのように覚えています。

 現在、卵巣がんにはTC療法が標準治療として推奨されています。新たな分子標的薬の導入には臨床試験が必要ですが、ゲノム解析で、たちどころにどの薬が効くかが分かる時代が来ようとしています。

 時代は医療疫学的エビデンスに基づくEBM医療の時代からゲノム解析による個別化医療へと変化を遂げようとしています。もちろんEBMやガイドラインにもとづいた医療は均てん化という意味では大切です。しかし、それに当てはまらない患者さんは必ず存在するのです。

 個別化医療には当然費用もかかります。しかし、それを補って余りあるメリットがあるのも事実なので、今後もこの分野に力を注いでいくつもりです。

 昔は研究が臨床に応用されるまでに長い時間を要していました。しかし近年は自分の研究テーマが生きている間に患者さんの役に立つようになりました。研究へのモチベーションも上がりますね。

◎産婦人科医療の発展のために

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 私は産婦人科医療の発展に尽くすことを人生最大の目標にしています。産婦人科は女性医学とも言われます。女性の一生に関われる診療科であり、学問なのです。

 子宮や卵巣のがん発生率は男性の精巣がんの発生確率よりはるかに高いのが特徴です。女性の体というものは繊細で、環境の変化や気分の落ち込みなどの心理的要因で体の調節機能が狂い、月経が止まることもあります。そうすると子宮内膜症やがん発症のリスクが高まってしまうのです。

 このような婦人科がんの奥深さこそが、この領域のやりがいでもあり、面白さです。

 これからも産婦人科医療の発展のために全身全霊をかけていくつもりです。

独立行政法人 国立病院機構 京都医療センター
京都市伏見区深草向畑町1-1
TEL:075-641-9161
http://www.hosp.go.jp/~kyotolan


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