医療法人 住友別子病院 鈴木 誠祐 理事長・院長|加藤 敏夫 理事・院長補佐

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人を引きつける病院をつくり医療崩壊の危機に立ち向かう

【すずき・せいゆう】 1983 岡山大学医学部卒業 同第1内科入局住友別子病院診療部第2内科 1995 同診療部第2内科長 1998同診療部長 2003 同副院長 2009 医療法人住友別子病院理事2013 同院長 2014 同理事長・院長
【かとう・としお】 1972 神戸商科大学商経学部卒業 住友金属鉱山株式会社入社 2006 住友別子病院出向 事務部長 2009 医療法人住友別子病院理事・事務部長 2015 同法人理事・院長補佐

 1883(明治16)年の開設以来、新居浜市の地域医療発展の一翼を担ってきた住友別子病院が、新たな一歩を踏み出した。昨年7月に新病棟が竣工し、10月に診療を開始。大幅な機能強化が図られたハード面、ソフト面への評判は上々だ。

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鈴木誠祐理事長・院長(写真左)と加藤敏夫理事・院長補佐

―新病院の特徴は。

鈴木理事長・院長(以降:院長)
医療現場の進化に、今後50年は対応できる建物が完成したと思います。まず地域の急性期医療の中核病院として、救急部門を充実させました。1階にある救急外来から、エレベーターで直接3階のHCU、ICUに入室できる構造となっているのが大きな特徴です。これらを一つのユニットとして継ぎ目のない連携を実現しました。

 また、当院はがん診療連携拠点病院ですから、このタイミングに合わせて最新鋭のPET│CT、リニアック、320列CT、3テスラMRIなどを導入しました。外来化学療法を行うベッドも増床しています。

 3カ月が経ち、少しずつ新しい環境に慣れてきたところです。急激な環境変化による混乱を避けるためにも、例えば設備面ではPET│CTの活用などにもまだ慎重に取り組んでおり、いわば慣らし運転の状況。これから、どんどん本格化させていきます。

 患者さんを対象にしたアンケートでは、いい病院だとお褒めの言葉をいただいていますし、一方では、「もっとこうしたほうがいいのではないか」というご意見もあります。もちろん、私たちも改善の余地がまだまだあると思っていますので、もっとたくさんの声を集めていくつもりです。

加藤理事・院長補佐(以降:補佐)
建て替えの計画自体は10年ほど前からありました。旧病棟は1966(昭和41)年に建てられ、40年以上経過していただけに老朽化が著しく、構造上の問題点も多々あったのです。

 主な問題の一つは耐震性で、もう一つは増築を重ねた結果、導線が複雑になっていたこと。そもそも建物の長さが東西に100m近くありましたので、行き来するスタッフの動きにもかなり無駄がありました。こうした問題を、建て替えを機に一気に解決しようとしたのが計画の出発点です。

 新病棟は一フロアあたりの導線が短くなるよう、これまでの横長から縦長の形状に変えて階層を増やし、さまざまな機能をコンパクトに集約しています。地上7階のうち、1階と2階には外来、救急、ドック健診センターなどが、3階にはICUや手術室、リハビリセンターなどがあります。

 4階から上は一般病棟で、7階の一部には回復期リハビリ病棟を設置しています。新病棟の3階と以前からあった第2病棟の4階は連絡ブリッジでつながります。

 そして地震や災害に備えるために、新居浜市、西条市の医療圏の中では初めて免震構造を採用した病院となりました。

 現在、外構や駐車場の整備、解体工事などが進行中です。すべての工事が終わり、グランドオープンとなるのは2018年1月を予定しています。

―地域医療の現状は。

院長 愛媛県では、かつては宇和島をはじめとする南予地方の医師不足が深刻だといわれていました。

 しかし、気づけば新居浜市、西条市のエリアが人口10万人に対して、県内で最も内科医が少ない地域になっています。ほんの10年ほど前までは、松山市とこの地域は人口10万人に対する医師数はほぼ同等でした。それが、いまや40〜50人ほどの差があります。

 医療機関は疲弊しているのが現状。当院も例外ではなく、医師の確保に頭を悩ませているところです。医療機関や関連する施設がお互いに連携し、それぞれの得意分野で補完しあえるよう動き出さなければなりません。

―昨年12月、「新居浜市医師確保奨学金貸付条例」が可決しました。

院長 私たち新居浜の医療機関は、行政に対してさまざまな働きかけをしてきました。その一つの結果がこの制度だということです。

 ただ、当院にも独自の奨学金制度がありますが、今のところ、思うような結果は得られていません。専門医制度も変わりますので、医師をこの地域に根付かせるためには、多くの課題を乗り越えなければなりません。

 目指すのは、いわゆるマグネット・ホスピタルです。医師が働きたいと思える病院なら、おのずと環境も整い、患者さんも集まる。患者さんがよりたくさん訪れるようになれば、ますます医師も集まる。

 新病院は外光をふんだんに取り入れ、明るくやさしい雰囲気を演出しています。患者さんとスタッフの導線をできる限り分離していますので、慌ただしさも感じないと思います。

 こうした環境は昨年から始めた緩和ケア病床や、回復期リハビリテーション病棟の患者さんにとってもいい影響を及ぼすと思います。スタッフも働くのが楽しいと感じているようですし、新病院が医師にアピールする素材になってほしいところです。

補佐 地域に働きたいと思えるような病院があることも大事ですが、都市として魅力的であることも重要でしょう。ただ働くだけでなく、生活レベル、文化的レベルも引き上げていくことが求められると思います。

 当院の付近には大型ショッピングモール、ホテルがあり、それらが路線バスで結ばれています。新病院への進入路が完成したら、玄関前まで路線バスが乗り入れることになり、アクセスが格段によくなります。すでに、進入路の前には新しい信号機も設置されました。

 新居浜市の人口が約12万人で、高齢化率は約30%。いずれ人口も10万人を下回るのではないかと危惧されています。

 そうした時代を迎えるにあたり、病院、ショッピングセンター、娯楽施設など地域内のさまざまな場所を公共交通機関で容易に利用できるというのは、不可欠なことだと思うのです。ですから医師不足の問題も、「町づくり」の視点からとらえなければなりません。

―今後は。

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院長 まだイメージの段階ですが、一つは地域の医療機関の間で電子カルテを共有できたらと考えています。他の医療機関の方ともそうした話をする機会が増えました。「地域全体が一つの医療機関」として機能する基盤を整えていきたいと思います。

 医師の確保については愛媛大学、岡山大学とのネットワークを生かして人材が循環する仕組みを探っていきます。大学でしっかりとした技術を身につけた医師がこの病院にきて、彼らに教わりたいという学生が集まる。学生たちが大学に戻って技術を発展させて、今度は教えにきてもらう。若い人の循環が、医療崩壊を防ぐカギになるのではないかと思います。

医療法人 住友別子病院
愛媛県新居浜市王子町3-1
TEL:0897-37-7111
http://www.sbh.gr.jp


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