国立病院機構 熊本南病院 金光 敬一郎 院長

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診療の3本柱と教育を軸に

【かねみつ・けいいちろう】 熊本県立済々黌高校卒業 1979 熊本大学医学部卒業 同第一外科入局 1988 米国国立衛生研究所留学 1998 熊本大学医学部第一外科講師 2007 済生会熊本病院外科部長 2012 国立病院機構熊本南病院診療部長 2013 同副院長 2015 同院長

 結核療養所から始まった国立病院機構熊本南病院。一般病床150床、結核病床22床の計172床を有し、パーキンソン病などの神経難病、がんについては、熊本県の拠点病院、結核については最終拠点病院の役割を担う。新たな取り組みと今後を、金光敬一郎院長に聞いた。

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―貴院の地域での役割は。

 当院から直線距離で3kmほどのところに宇城総合病院があります。二つの病院がそれぞれ得意な分野でがんばり、助け合うこと、それが今後、生き残るための方策です。

 伝統の結核やがんを含めた呼吸器疾患、前院長が20年かけて作り上げた難病(神経・筋疾患)、地域での治療の7割をしている「がん」、これらの診断や治療は、当院の診療の3本柱です。

 結核については、当院が熊本県における最終拠点病院となっています。また、難病(パーキンソン病その他の神経・筋疾患)の熊本県拠点病院であり、がんは県がん診療連携拠点病院でもあります。

 一般内科を基盤として診療をしていますが、特色を打ち出し、専門性の高い医療を提供することが、今後、より大事になってくると考えています。

 また、地域での教育活動も重視しています。昨年は、住民対象の出張健康教室を約60回開催しました。さらに2カ月に1回はショッピングモールでの出張健康相談を開いています。さらに医療関係者や介護施設の職員向けの地域連携研修会は、褥瘡(じょくそう)や感染などをテーマに毎月開催しています。

 これらによって当院職員の「もっと学ぼう」という意識の高まりも実感しています。呼吸器疾患、神経難病、がんのことは熊本南病院へ、という形にだんだんなってきていると思います。

―昨年、緩和ケア病棟を開設されました。

 きっかけは、私が診療部長として当院に着任した2012年にさかのぼります。無床診療所の先生から、「がんの手術や治療のため熊本市内の病院に紹介した患者さんが、『もうできることがない』と言われて戻ってきた。入院させたいが病床がない。何とかならないか」という相談を受けたのです。

 当時、緩和ケア病棟の需要が高まっていたものの、この地域にはありませんでした。そこで、その患者さんを当院に受け入れ、さらに緩和ケア病棟を開設するための調査や準備を始めました。

 第1のハードルだった熊本県がん診療連携拠点病院の指定を2014年2月28日に取得。第2のハードルだと考えていた国立病院機構の許可も、病棟を改修する案で、2015年3月に下りました。職員全員で緩和ケア病棟開設に向かい、2016年3月下旬、オープンすることができたのです。

 緩和ケア病棟となったのは、もともと結核病棟だった場所で、当時は倉庫となっていました。改修時は壁を造り替え、配管をやり直すため、下の階の患者さんをほかの病棟に移すなど、運営的にも経営的にも厳しかったですね。

 しかも、工事を始めてみると音が上の階にも響き、患者さんから苦情がくることも。そのころは、回診のたびに謝っていました。

―緩和ケア病棟稼働直後に、熊本地震が起こりました。

 4月に稼動し始めたものの、まずは症状が重くない一般の患者さんに入ってもらっていました。満床にはせず、「試運転」のような状態です。

 すると4月14日と16日、大きな地震が発生しました。大変なことになったと思いましたね。特に16日の揺れは大きく、しかも長く続いたため、造ったばかりの病棟が壊れているのではないかと心配になったほどでした。

 しかし、当日の朝、実際に見て驚きました。ほとんど被害がなかったからです。病床に空きがあったこともあり、熊本市内の被災した病院から患者さんを受け入れることができました。熊本がものすごく大変な時期に、私たちの病棟が役に立ち、本当によかったと思います。

―緩和ケア病棟として実際に使い始めた時期と、今後については。

 5月から運用を開始し、緩和ケア病棟適応の患者さんが入院するようになりました。しかし、当初の患者さんは5人前後。地域の方の中に「緩和ケア病棟=入ったら帰れない」というイメージがあったように感じます。

 痛みが強くて眠れない状況や、食事をとれない状態が改善した患者さんには退院していただく、という当たり前のことを続け、さらに「退院できる」ということを広報することで、患者さんは次第に増加し、現在は満床となっています。

 ただ、満床には満床で悩みがあります。がん性疼(とう)痛などで困っている患者さんがきたとき、すぐに入院させることができないからです。それでも一般病棟に入院してもらいますが、緩和ケア病棟ならではの静けさや手厚いケアが提供できないというジレンマがあります。まだまだ課題はありますが、これからしっかりと続けていきたいと考えています。

―後進の教育で心掛けていることは。

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 私は、人と関わる仕事がしたくて、医師になりました。医師は、あらゆる世代の人を相手にできる。そこにひかれたのです。

 若いころいい先輩たちに恵まれました。がむしゃらに治療しようとしていた時代に、「病気を治すことだけが医師の仕事じゃない。その人が尊厳をもって旅立てるよう診ることも大切な仕事だ」ということも、先輩たちから教わりました。

 これまでの自分の性格で自慢できることがあるとすれば、執刀中に怒ったことがない、ということです。先輩が後輩を怒ると手がすくむ。外科医が看護師を怒ると、慌ててしまい、間違ったものを渡してしまう。いいことなど何もありません。

 相手を萎縮させる「怒る」という行為は、チームの力を最大限に発揮したい場面で逆の効果しか生まないと私は思います。

 それは院長となっても同じことです。ただ、今はチームが病院全体となりました。職員は200人を超えます。手術室の中と同じように全職員のことを知っているかというと、情けないことに知らないんですね。顔は分かるけれど、名前が出てこない、ということがたびたびあります。良いチームであるためには、職員全員の顔と名前が一致するぐらい、常に話せる状態でいたい。その努力は、続けていきたいと思っています。

独立行政法人 国立病院機構 熊本南病院
熊本県宇城市松橋町豊福2338
TEL:0964-32-0826
http://www.hosp.go.jp/~kumanann


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