佐賀大学医学部 一般・消化器外科学講座 佐賀大学医学部附属病院 能城 浩和 教授/副病院長

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もっと、もっと...の精神で切り開く消化器外科手術の未来

【のしろ・ひろかず】 福岡県立宗像高校卒業 1985 九州大学医学部卒業 同附属病院研修医(第一外科) 1993 医学博士 1997 九州大学医学部附属病院助手(第一外科) 2006 九州厚生年金病院外科部長 2009 佐賀大学医学部一般・消化器外科学講座准教授 2010 同教授 2014 佐賀大学医学部附属病院病院長特別補佐 2015 徳島大学客員教授 2016 佐賀大学医学部附属病院副病院長

 1979(昭和54)年開設の佐賀大学医学部一般・消化器外科教室。2010年5月の能城浩和教授就任以降、低侵襲で根治性が高い鏡視下手術に積極的に取り組み、特に消化器疾患に対するロボット支援下手術では九州をリードしている。

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―医局の強みを聞かせてください。

 臨床、研究、教育のすべてを兼ね備えていることでしょう。診療に密着しながら教育、研究にもトータルで取り組んでいます。

 大学院生は現在7人。すでに3人は論文執筆に移り、4人が自前の研究室でがんに関する基礎研究をしています。がんの悪性度評価やがん細胞の生物学的悪性度の分子生物学的な解析など、抗がん剤や分子標的治療薬の開発につながるような研究です。

 臨床医として基礎研究の経験があるのとないのとでは、病気を治すために必要なステップの構築や考え方の深みが違います。臨床系の論文を読むときにも、そこに書いてあることの正誤を判断しなければなりませんからね。ある一定の期間、基礎研究を経験することは良い臨床家になるために役立ちます。

―今、研究離れが進んでいると言われています。

 私たちの教室では、ほぼ全員が大学院に進むことを希望します。良い臨床医の診療やカンファレンスでの意見の出し方を見て、研究経験の重要性を肌で感じているのではないでしょうか。それが、これまでの教授が積み重ねてきてくださった、この診療科の歴史であり、強みになっていると思います。

―臨床については。

 消化器外科について言うと、低侵襲の内視鏡外科を一生懸命やっています。食道がんでは、腹臥位(うつ伏せ)での胸腔鏡下手術をしていますし、胃、大腸、肝臓、膵臓についても鏡視下手術での実績を積んでいます。

 内視鏡外科は比較的新しい分野なので、指導体制が重要です。私たちは、何段階ものステップを踏んで内視鏡外科医になっていくよう指導しています。

 カリキュラム上も、大きな枠組みである外科専門医を取るまでは小さなスペシャリストは目指さない仕組みです。専門医や認定医の取得状況を医局ですべて把握して、出張先や学内のポジションで、さまざまな分野をくまなく経験させる。好き嫌いだけでは、良い医者にはなれませんから。

―手術支援ロボット「ダビンチ」の普及が進んでいます。

 2009年11月、「ダビンチ」が医療機器として薬事法の承認を得ました。佐賀大学はそれを待って、2010年3月、国立大学で初めてこの機器を導入したのです。

 当科ではこれまで胃、食道、大腸、膵臓など消化器すべてで約150例のロボット手術をしてきました。

 初めに前立腺がんに対して保険適用となり、その後、腎がんも保険診療となりました。消化器では「内視鏡下手術用ロボットを用いた腹腔鏡下胃切除術」が先進医療となり、当大学病院も認定施設として多施設共同臨床試験に参加しました。九州では唯一です。

 今後、胃がん手術に対するロボット支援下手術が保険適用になっていくでしょう。九州で、ロボット外科と言えば佐賀大学、となっていると自負しています。

―ロボット手術の利点はなんでしょうか。

 1番大きなメリットは関節機能です。内視鏡外科の場合、ポートからカメラや鉗子などの道具を出し入れします。ロボット手術の際の鉗子には関節があり、従来はアプローチできなかった方向にも届きます。損傷も少なくて済み、合併症減にもつながるのです。

 ロボット支援下手術は、鏡視下手術と比べて習熟のスピードが速いというメリットも言われています。コンソール(操作卓)が2台あり、片方に若手、片方に経験を積んだ医師が座って操作することができます。若手を指導しているとき、困難な局面では、スイッチ一つで切り替えられる。手術において、このような指導方法はこれまでありませんでした。

 そう考えると、ロボット支援下手術には、さまざまな可能性がある。そこで第9回日本ロボット外科学会学術集会(会長:能城教授、1月28日、ホテルニューオータニ佐賀)のテーマは「ロボット手術はパラダイムシフトになりえるか?」としました。

―今後の展望を聞かせて下さい。

 ロボット支援下手術がどんどん保険診療になっていくと予想されていますが、腹腔鏡下手術のすべてがロボット手術に置き換わるのかと言うと、そうではないでしょう。ロボット支援下のほうがいい手術、そうではない手術と、すみわけを進めていかなければなりません。

 新たな一つの術式がガイドラインになり、みんなの合意を得られるようになるまでには、20年ぐらいかかります。ロボットと腹腔鏡のどちらでしても同じ結果が出せるものは腹腔鏡、縫う方向が難しいものなどはロボット、などと分けていくためのデータを地道に積み重ねていくことになります。

―なぜ、外科医に。

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 医療は病気を治すための手段です。技量が伴わないものなどない。ということは、技術を磨かなければなりませんよね。外科医は、できたこと、できなかったことが心の中ではなく、自分の手の中で結果としてわかる。チャレンジに値するだろうと外科医を選んで、今も修業しているわけです。

 この先も、終わりはないでしょう。もっと"小さな医療"でも治せるのではないか、もっと無駄のない方法があるのではないか、もっと痛くない方法があるのでは、もっと、もっと...。すべての行為に先があり、終わりはありません。

 「昨日できなかったことは今日成し遂げよう」「今日できたことは、明日はしない。もっといいものができるはずだ」。そういう精神で歩んでいくしかないのです。

佐賀大学医学部 一般・消化器外科学講座
佐賀市鍋島5-1-1
TEL:0952-31-6511(代表)
http://saga-gsurg.kir.jp

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