―11月19日 浜の町病院―
福岡県を中心に活動する「血液疾患を考える患者・家族の会〜リボンの会」(宮地里江代表)は11月19日、医療講演会を浜の町病院(福岡市中央区)で開いた。約120人が聴講。講演後は、グループに分かれ、患者やその家族らが情報交換をする交流会も開かれた。
浜の町病院の吉田周郎医師は「慢性骨髄性白血病(CML)・医学の進歩と治療の変遷」というテーマで講演。吉田医師によると、がん全体の中で白血病が占める割合は1.5%。CMLはそのなかでも6分の1から7分の1で、福岡市では年間15人程度が発症する。
CMLは、染色体異常から生じる異常蛋白質(Bcr-Abl 蛋白)が細胞の異常増殖をもたらす疾患である。病態の解明により、この異常蛋白を阻害する分子標的薬が開発され、治療成績が飛躍的に伸びている。2003年から発売された分子標的薬グリベック(一般名イマチニブ)は、5年後の生存率が94%と高い効果を挙げた。その後も現在までに3種類の新薬が登場。
「それらはグリベックの効果を1とすると20倍から300倍の抑制効果があるという実験の結果も出ている」(吉田医師)という。
また、同院の衛藤徹也血液内科部長は、「造血幹細胞移植の実際と最近の動向」と題して講演。
国内では、年間5000件を超える造血幹細胞移植が行われており、移植の前処置を軽くすることによって体への負担が軽くなる"ミニ移植"が広がり、高齢者でも移植が受けやすくなっているため「近年、特に60歳以上の患者への移植が増加している」(衛藤部長)と語った。
また、移植をした場合皮膚症状、肝障害、腸管障害などの合併症・GVHD(移植片対宿主病)が起こることもあり、血液の病気が完治しても合併症の治療を続ける患者もいるという。同院でも長期フォローアップ外来を設け、専任の看護師が患者をサポートする。
最近では、治療後の生活の質向上のため「治療成績に、生存率だけでなくGVHDの症状も含めた評価を進める動きもある」(同)という。
この他、海外で行われているHLA半合致のドナーから移植する「ハプロ移植」が国内でも広がっていることが報告された。