人材の定着と人事制度
人材の確保と定着のために、ワークライフバランスの施策に取り組まれている事業所は多いと思います。ただ、実際に経営陣にお話をうかがうと、思うような成果が出ないと感じていることが多いようです。
これは、「取り組んではいるが、事業所全体の制度として運用されていない」ことが原因の一つだと考えられます。
ワークライフバランスの取り組みは、結局のところ経営資源である「人材」を確保し、定着させていくことを目的とするものですので、人事課題を解決するための施策として運用すべきです。
そもそも、どのような状態になれば「成果があった」と感じられるのかは、それぞれの事業所によって違います。具体的な目標が明確になっていないため、その成果が感じられないということもありえます。なんのために、どのような状態を目指すのかを決め、事業所=組織全体で共有することがスタートになります。
具体的には人事制度に組み込むことで、より運用しやすくなり、成果が感じられるものとなります。
人事制度とは、人材の採用、育成、配置、評価、賃金、退職にかかわる事業所の取り決めです。したがって、ワークライフバランス施策を運用するためには、どのような取り決めが必要なのかを労使で共有しておかなければなりません。
短時間勤務者に対する賃金規定や実施方法、その際に適用される評価基準の策定や昇進・昇格に関することなど、事業所として時短勤務者をどのように処遇するのか、メリットとデメリットをオープンにし、納得を得られるようにしておきましょう。
特に評価基準については、業務において「いつまで」に、「なに」ができるようになることが評価につながるのか、そしてそれは組織にどのように貢献するのかといったことなどをあらかじめ評価対象者に知らせ、評価が公正に実施されるような準備も必要です。
ワークライフバランス施策だけに限らず、施策が運用できていないと感じることがあるとき、その原因はそもそも運用ルールが存在していないことだったりします。根本から施策を見直し、まずは具体的な運用まで持っていけるようにしましょう。
この連載も今回が最後になりました。8回にわたった連載で一番お伝えしたかったのは、人材は事業所の最大、最高の財産であるということです。
医療関係の事業所は、純粋に利益を追求するというより患者さんやご家族の喜びのためという、とても崇高な目的のために運営されています。その現場で、よりよい人材育成や人材管理がなされるならば、それはきっと患者さんのためでもあると思うのです。つたない文章でしたが、よろしければ参考にされてください。
それではまた、どこかでお会いできますように。