職員の育成を通して地域医療に貢献
脊椎脊髄疾患やスポーツ障害に特化した有床診療所「医療法人術徳会 霧島整形外科」。"最も頼られる医療機関"を目指し、職員の育成に尽力する井㞍幸成理事長・院長を取材した。
―地域医療への貢献のため、さまざまな取り組みに挑戦されていますね。
当院は、脊椎の手術、リハビリテーションが中心の有床診療所です。全例、麻酔科専門医による全身麻酔をお願いし、最新の設備を整えて安全安心な手術をしています。また、理学療法士も周術期から積極的に介入し、手術を熟知した専門的な運動療法を行っています。医師、看護師、理学療法士が問題意識を共有し、自主的に協力しながら一丸となって、入院加療に努めています。
おかげさまで、当院での手術を希望する患者さんにたくさんご来院いただけるようになりました。
当院の目指すものは、地域の健康増進プラットホームです。少子高齢化が進む地方都市では、患者さんと医療専門家が知識と意識を共有することが必要です。病院施設から離れて健康増進を行い、必要な場合だけ限られた医療資源を過不足なく享受する、未来社会をつくりたいと考えています。
当院ではその取り組みの一つとして、地域の方々に対する「ヘルスケア教室」を、2015年4月から毎月1回、テーマを変えて開催しています。
今年10月のヘルスケア教室では、スポーツ指導者との意識共有を目指して、野球選手にとっての強い肩をつくるための効果的なケアとトレーニング法を、医学的な観点から解説するセミナーを開催しました。
地域の野球チームの監督や部員、その保護者などが参加され、大変好評だったようです。その他に、骨粗しょう症の解説や腰痛体操の指導、運動器疾患に対する食事療法など、さまざまなテーマを扱っています。
多忙な毎日を過ごしている職員にとっては、決して容易なことではありませんが、皆、自主的に興味のあるテーマを持ち、積極的に取り組んでくれています。県ボート競技選抜選手のトレーナーや、電動車椅子サッカー日本代表候補選手のトレーナーをしている職員もいます。病院からさまざまなフィールドに飛び出して、活躍してほしいと考えています。
―水中運動療法も始められたと聞きました。
水中運動療法は、水の浮力や水圧、流体抵抗などを利用した理学療法の一種で、2016年1月から導入しました。運動機能の回復に効果的です。
温泉療法で有名なドイツのバーデン・バーデンに定期的に研修に行き、麻痺(まひ)や四肢の機能障害を持つ方に適したプログラムを作成しました。
現在は毎月2回、当院近くのホテルにある温水プールをお借りして参加無料の「プール教室」を開いています。対象は、頚・腰・股関節・膝関節・肩関節に痛みや痺れがある方で、参加者は毎回約20人です。
医師、理学療法士、看護師が自らプールに入り、地域の方々とスキンシップをしながら楽しい教室を続けています。将来的には自前の温泉プールを持つことが夢です。
―今後の課題・展望は。
高齢の患者さんの増加にともない、看護師不足が大きな問題になっています。鹿児島市内でも不足しているくらいですから、この霧島地域で人材を確保することは、さらに困難な状況です。
そこで、優秀な人材を海外に求めようと考えています。今年10月、職員研修旅行でベトナムにある「ナムディン日本語・日本文化学院」を訪問しました。鹿児島大学に留学していたベトナム人学生が卒業後に立ち上げた学校です。多くの若者に日本の技術や知識を習得してもらい、国家の発展につなげたい、という夢があると聞いています。
学生たちに、当院での仕事についてプレゼンテーションをしたのですが、皆さんとても興味を持ってくれました。
しかし、実現には非常に高い壁としてベトナムから日本に来る過程での研修生制度があります。利用するには、ベトナム国内で医療に従事した経験が必要です。高校を出たばかりの若者は、働いた経験もなく、免許も持っていないため、まずそこで足止めされてしまいます。
さらに、ハノイやホーチミンといった大都市のサラリーマンの平均月収が日本円で1〜2万円という経済状況の中、申請には約100万円もの費用がかかります。渡航費用を借金する研修生も多く、返済に追われて、研修途中で挫折するケースも少なくありません。
一方、雇用主は研修生への給与の他、実習生管理費として一人当たり月数万円を、受け入れ支援を行っている日本の組合へ支払わねばなりません。
ベトナムから優秀な人材を受け入れたくても、雇う側、雇われる側それぞれにとっての高い壁が存在します。打開策を模索しながら、実現に向けて努めていきたいと思います。
医療法人術徳会 霧島整形外科
鹿児島県霧島市国分野口東8-31
TEL:0995-73-8840(代表)
http://kirishimaseikei.jp