福岡東医療センター 上野 道雄 院長

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災害時に重要なのは「病院機能最大化と外部との密な連絡」

1974 九州大学医学部卒業 同第二内科入局 1991 国立福岡中央病院 1994 国立病院九州医療センター内科医長 2005 国立病院機構福岡東医療センター院長 2007 福岡県病院協会専務理事 2008 福岡県医師会理事2012 同常任理事 2014 同副会長

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◎多方面で被災地を支援

 当院は、県内唯一の第一種感染症指定医療機関です。熊本地震によって、熊本県の第一種感染症指定医療機関である熊本市民病院が被災したため、仮に熊本でエボラ出血熱などの患者さんが出た場合は当センターで対応できるよう、準備をしていました。

 また、4月14日の「前震」直後、DMAT(災害派遣医療チーム)を被災地に送りました。「状況が落ち着いてきた」と判断し、隊員が福岡に戻った後の16日未明、「本震」が発生。今度は、熊本県から多数の患者が搬送されてくるとの予想で、福岡空港春日基地で、SCU(StagingCare Unit、広域搬送拠点臨時医療施設)の立ち上げに関わりました。ただ、熊本県内で対応できていたのでしょう。空路での患者搬送はほぼなく、DMATも待機が続きました。

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■熊本地震での支援〈非常食関連〉

 さらに、福岡県の医師会からJMAT(日本医師会災害医療チーム)派遣の依頼が来ました。その少し後には、当センターが所属する国立病院機構からも医療班派遣の要請。迷いましたが、県医師会からの連絡が先だったことなどから、JMATとして職員を出すことにしました。派遣先がまだ決まっていない「見切り発車」状態での出発でしたので、苦渋の決断でしたね。

 そのほか、水や食料を出す対応もしました。

◎「水先案内人」の必要性を実感

 今回の熊本地震でも、被災地の情報が、支援する側になかなか届きませんでした。全国から駆け付けるDMAT隊員を、本当に助けが必要な地区まで導く「水先案内人」のような人が必要だと感じましたね。

 福岡で災害が起きたと想定してみましょう。東北や関東からDMATが駆け付けてくれる。でも、彼らが即座に「あそこへ行こう」「ここへ行って活動しよう」と決められるはずがありません。土地勘がないのですから。

 例えば、この粕屋医療圏にしても北部から南部までかなり広い。災害拠点病院も、当センターと福岡青洲会病院(糟屋郡粕屋町)の2施設があります。各地から来てくれる医療者を、どこに、どの程度送るのかを判断する役割が大切になります。

 どのようなシステムで、どんな人がその「水先案内人」にふさわしいのかは、今後の検討課題です。ただ、各医療施設や行政との調整も必要になることから、個人的には、院長経験者でないと難しいと考えています。福岡県医師会にも災害に特化した委員会があり、そこで検討していますし、福岡県病院協会でも、話を進めていかなければならないと思います

◎ヘッドクオーターのシミュレーションを

 有事には、それぞれの病院がその機能を最大にして、外部との連絡を密にすることが求められます。

 災害などが発生したときには、その影響を受けない病棟の医師や看護師、休暇中のスタッフといった人員を、必要とされる部門に集中的に投入し、手術や入院の機能を大幅に上げるべきです。

 最大で、平時の何倍の手術ができ、何倍の入院患者を受け入れることができるのか。そのための人員などの手配には、どのような方法があり、どのぐらいの時間が必要なのか。それを、平時にシミュレーションしておく必要があります。

 そして、それは病院単位で済む話ではありません。多数のけが人が出た場合には、周辺の病院の医師にも当院に来ていただき、協力してもらう可能性があります。当院の職員が、より重傷度が高い患者さんの治療に専従し、周囲の病院の医師には軽傷の患者さんの処置をお願いする。そんな連携も想定しています。

 さらには、当院が病院機能を維持できなくなり、同じ粕屋医療圏の災害拠点病院である福岡青洲会病院が無事だったら、当院の医師や看護師をそちらへシフトするでしょう。その逆もあり得ます。

 有事の際のシミュレーションで本当に必要なのは、本部機能のものです。行政、医師会、病院が顔の見える関係で、情報を供給し合えることが大前提。さまざまな状況に、瞬時に臨機応変に対応するために、今から、福岡県や県医師会、地元の市や町、病院や診療所の先生方の合意をとっておかなければなりません。

 当院に災害対策本部が立つ時には、古賀市からも職員を出してもらい、情報共有を図ることになっています。ヘッドクオーターのシミュレーションをしておくことが大事だと思いますね。

◎住民最優先「福岡県」の旗の下で

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 災害時には、いろいろな問題が起こると思います。でも、重要なのは、「住民のことを考えて決める」ということ。そして、それぞれが「福岡県」という旗の下で、目的を達成するために全力で頑張ることではないでしょうか。

 2014年に第一種感染症指定医療機関になったころエボラ出血熱の流行の波が日本にも迫ってきたこと、それを受けて、行政や医師会などとエボラ出血熱関係機関協議会を開いて連携を深めたこと。そして2015年5月にエボラ出血熱の擬陽性の患者を受け入れた経験が、災害時の想定をする上でも、非常に大きな糧になっていると感じています。

独立行政法人 国立病院機構 福岡東医療センター
福岡県古賀市千鳥1丁目1番1号
TEL.092-943-2331
http://www.fe-med.jp/top.html

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