交野病院 信愛会脊椎脊髄センター長 寳子丸 稔 院長

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脊椎脊髄の診療で病院を牽引

広島大学附属福山高校卒業 1981 京都大学医学部卒業 同附属病院 1993 米カリフォルニア大学サンディエゴ校神経科学教室(文部省在外研究員) 1998 大津市民病院脳神経外科 1999 同診療部長 2013 社会医療法人信愛会脊椎脊髄センター 2016 社会医療法人信愛会交野病院院長兼務

 2015年5月、現在の場所に新築移転した社会医療法人信愛会交野病院。同法人脊椎脊髄センターの寳子丸稔センター長が、今年4月、同院の院長となった。脊椎脊髄の名医として知られる寳子丸院長が見据える同病院の未来は。

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脊椎脊髄センターを軸に

 交野病院の新築移転までは、兄弟病院である畷生会(てっせいかい)脳神経外科病院で、脊椎脊髄センター長を務めていました。新築移転に伴い、脊椎脊髄センターが、畷生会脳神経外科病院から交野病院へと移ることになり、私も交野病院へ。当初はセンター長と副院長を兼務していましたが、今年4月、院長になりました。

 脊椎脊髄センターの医師は、今年4月に脳神経外科医と整形外科医が1人ずつ加わり、現在7人体制。このセンターを軸に病院づくりをしていきたいと思います。

右肩上がりに患者増九州からも来院

 脊椎脊髄センターの患者数は、右肩上がりに増加しています。急増の原因は、高齢化。さらに、近隣に脊椎脊髄疾患を診る病院がほとんどなく、需要が高かったという地域性もあるでしょう。

 通常、脊椎を診る病院の脊椎に関する手術の件数は7〜8割が腰で、2〜3割が首。しかし当院の手術数は、腰と首がほぼ半々です。

 私たちは、腰の痛みを訴える患者さんが来院した場合に、腰だけでなく首もしっかりとチェックしてから治療に入ります。経験上、腰の症状を訴える患者さんに対して、首の状態が悪いまま腰の手術をすると、良くならないだけでなく、かえって悪くなる場合が3割程度あるとわかっているからです。

 首の手術をすると、腰が多少悪くても、8割程度の人で腰や足の痛みやしびれが解消する。県外から来院される方も多く、ここ大阪へ福岡県からも患者さんがお見えになります。

 もっとも多い疾患は変形性頸椎症で、次が頸部脊柱管狭窄(きょうさく)症や日本人に多い後縦靭帯骨化症。頸椎椎間板ヘルニアも多いですね。

 80歳を超えた人の3割ぐらいには、変形による神経の圧迫があると言われています。患者さんに「治りたい」という意欲があれば、90歳の人までは手術を考えます。

 当院が得意とする手術の一つが頸椎椎弓形成術。手術数が多いから良い病院だとは限りませんが、手術数は昨年が300件ほどで、日本で一、ニを争う数です。

 脊椎脊髄センターの全手術数は、昨年が637件。私自身も手術をしますが、他の医師もみんな上手ですから、いつかは引退しなければならないでしょうね。

 畷生会脳神経外科病院には、脳外科医の福島孝徳先生が来て手術をされています。福島先生が現在、70代半ばです。私も、それまではできるかなと思ったりもしています。

人材育成も大切に

 脊椎脊髄センターの7人の医師のうち、最初に大津市民病院から来た2人は既に日本のトップレベル。京都大学から来た若い女性医師も独り立ちして、脊椎外科で手術ができる女性医師の中で、日本一じゃないかと思っています。

 私が何かを教えたから上達したということではありません。若い人たちは、手術を見て、だんだんと上手になっていきました。もともとできる人が一緒にやっているということもあるかもしれませんね。今年春に来た二人も上手です。

 脊椎外科の手術をする際、大事なのは手先の器用さよりも、考え方。この症例に対して、何をしたらいいのか、どこに力を注げばいいのか、その戦略を立てる力だと思います。

症状改善がダイレクトにわかる

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 私はもともと脳の手術をしていました。脳の手術も魅力的ですが、脊椎の手術は、手術後に「痛みが取れた」「歩けるようになった」と症状改善がはっきりしている。そこが魅力的です。

 そうはいっても、よくならないこともあり、「なんでだろう」と苦しみながら、日々やっているというところでしょうか。

 脳神経外科医が10人いるとすると、その中で、脊椎を専門とする医師は1人程度。脊椎の診療をする医師のうち整形外科医と脳神経外科医の比率も10対1ぐらいです。

 だからといって、脊椎を診る脳神経外科医が不要だとは思いません。両方いるからこそ、よい診療ができていると思います。

 足を引きずっている患者さんがいたら、整形外科医は膝や関節などの方面から考える。一方、脳神経外科医は神経や脳からアプローチする。両者がいて、いろいろな角度から原因や治療法を考えることが大切なのです。

 そういう意味で言うと、当センターには、今、神経内科医がいません。今後は、神経内科の先生にも入ってほしいと考えています。

リハビリにも力を

 交野病院では昨年、ロボットスーツHALを活用したリハビリテーションを開始しました。リハビリを専門とする医師もいますので特色あるリハビリをやっていきたいですね。

 かなり遠い構想ですが、iPS細胞を脊髄損傷の人に移植する脊髄再生医療に取り組みたいという希望を持っています。ただ、当院で可能になるのは、神経系に安全に移植できる技術が、ある程度、確立されてからになるでしょう。

 それまでに、脊損の患者さんにさまざまな方向から治療できるような診療やリハビリの体制を整えていきたいと考えています。

 脊損の患者さんは、iPS細胞を移植すれば、元通りに動けるようになるわけではありません。その後の厳しいリハビリを含めた治療が、とても重要なのです。

研究がしたい

 日々の診療の中で、臨床的には間違いないが、その理由を示すことができないということが、しばしば起こります。

 例えば首の手術で脊髄の圧迫をとると、腰痛がかなりの割合で改善されることは経験上、間違いない。でもその理由が示せないのです。

 研究で理由を解明して、腰の痛みなどを訴える患者さんに対しては、首もチェックするというコンセンサスを得たいと思いますが、現状ではなかなか難しいですね。人員や資金面の課題をクリアして、なんとか発展させていきたいと思います。

 院長になって病院職員に話すのは、「患者さんに優しい病院にしましょう」ということ。でも、あれこれと指示をするトップダウンは私のやり方ではありません。私が脊椎の診療をする背中を見て、職員が、がんばろうと思ってくれれば、それでいい。皆さんの自主性に任せるのが、一番だと考えています。

社会医療法人 信愛会交野病院
大阪府交野市松塚39番1号
TEL:072-891-0331(代表)
http://www.katano-hp.or.jp/


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