4月に院長就任「職員との5つの約束」
中津市民病院は大分県北・福岡県東部(京築)地区、24万人医療圏の中核病院。
今年の4月に就任した是永大輔院長に今後の抱負を聞いた。
「患者ファースト」の医療を
私は国東半島の豊後高田市出身ですが、大学時代から、ほとんど福岡で過ごしてきました。今回、28年振りに郷里である大分県に戻ってきて、郷里の医療を担う重責への緊張感とともに、恩返しができるという喜びもあります。
当院の医療圏は豊後高田市、宇佐市、中津市、福岡県の京築・豊前地区、行橋の一部など広大で、われわれは地域唯一の基幹病院です。地域住民が最初に来る病院であり、最後の砦(とりで)でもあります。多岐に渡って求められることが多い病院なのです。
小池百合子・東京都知事は「都民ファースト」という言葉を強調しています。私も「患者ファースト」が大事だと思っています。職員には患者さんあってこその病院であって、患者さんあっての医療従事者であることを忘れてほしくありません。当院は市民の税金を投じたかけがえのない財産です。それをいかに市民に還元していくかが重要です。
私は職員と五つの約束を交わしています。①職場を愛し、明るい環境づくりに努めること②感謝の気持ちを忘れずに責任を果たすこと③患者さんを大切にして敬意を失しないこと④救急隊や医師会に丁寧に対応すること⑤若い人が集まる努力を惜しまないことです。
常にこれらの言葉を胸に刻み、ホスピタリティーが高く、医療の質が高い病院を目指したいと考えています。
心臓血管外科を開設
本年8月に心臓血管外科を開設しました。今月には循環器内科と心臓外科による専門的医療チームのもとで第一例目の開心術を実施しました。
これまで、この地域には心臓血管外科がありませんでした。そのため患者さんは大分市内や小倉(北九州市)など、他の地域の病院に行かざるをえず、とても不便な思いをさせていました。
安心・安全な治療を提供していき、今後は他の地域からの患者さんを受け入れられるようにしたいですね。
救急の充実のために
急性期病院において救急の充実は欠かせません。当院では救急のホットライン体制を構築しました。それにより救急搬送中に車内から医師に連絡し、即座に対応できる体制が整いました。
また院内で患者さんのトリアージをすることで、当直の医師に負担がかからないようになりました。
熊本地震への対応
4月の熊本地震の時、私は出張のため大阪にいました。当院のDMATの第一陣は、その日のうちに被災地にかけつけ、救護活動に従事しました。私も急きょ戻りましたが、しっかりと機能していたので、とても頼もしく感じましたね。
新病棟の建設
2年後の秋から冬の完成をめどに新病棟を建設予定です。すでに予算は確保していて、現在、基本設計を練っている最中です。
新病棟は個室中心の女性病棟や緩和病棟などの建設を予定しています。また現在の講堂は、手狭になってきたので、新病棟内に講堂を造ります。
各種研究会や市民公開講座などをできる機能的な物にし、災害時には避難スペースとして活用します。
生き残りをかけて
当院は大分、北九州、福岡などの都市に囲まれています。職員確保に関して、不利な立地であることは否めません。
NHKの大河ドラマ「真田丸」では真田一族が群雄割拠の戦国時代で生き残りを図る姿が描かれています。私たちも同様に医療界の乱世を生き残っていかなければなりません。
いかに特色を打ち出し、生き残って市民のために良質な医療を提供するか、また、いかに医療従事者の満足を得られる病院にするか。やりがいがありますね。
恩師の存在
私は九州大学第二外科出身です。井口潔教授、杉町圭蔵教授と現教授の前原喜彦先生から多くのことを教わりました。特に前原先生は、3年先輩で、同じ研究室に所属していたこともあり、弟のように可愛がってもらいましたね。
3人に共通しているのは、己に厳しいところですね。そういう人でないと教授は務まらないと思いますし、日本の医療を牽引していくことはできないでしょう。私はこの3人の背中を見て成長させてもらったと思っています。
中津市立中津市民病院
大分県中津市下池永173番地
TEL:0979-22-2480
http://www.city-nakatsu.jp/hospital/