「患者の幸せ」を追求できる医師を養成したい
沖縄協同病院は沖縄医療生活協同組合のセンター病院として1976(昭和51)年に豊見城市で開院。2009年に急性期病院として現在の場所に新築移転した。
仲程正哲院長に病院の特徴や地域で果たしている役割などを聞いた。
◆無差別平等の医療
私たちが所属している全日本民医連は基本理念に「無差別平等の医療の提供」を掲げています。
また沖縄医療生活協同組合では、沖縄協同病院、中部協同病院のほかに四つの診療所で無料低額診療を実施しています。今年7月には那覇市が無料低額診療事業の薬代助成を認可しました。私たちの粘り強い運動の成果だと確信しています。
当院の個室は80床ですが、差額ベッド代はいただいていません。「お金を払うから個室にしてくれ」という人もたまにいらっしゃいますが、丁重にお断りしています。個室を本当に必要とする人に提供するのが私たちの理念なんです。
◆断らない救急
救急病院として「断らない救急」を実践しています。昨年は4400台以上の救急車を受け入れました。毎年約10%受け入れ台数が増加している状況です。またウオークインで来院する患者さんもたくさんいます。
救急疾患に関しては心臓血管疾患、脳外科など24時間対応しています。
ベッドの稼働率は高く、今年4~6月は、ほぼ100%のフル稼働状態。平均在院日数は11~12日です。
急性期の患者さんをどんどん受け入れなければなりませんが、退院後の行き場を見つけるのが困難な状況です。これがもう少し改善すれば、もっと在院日数を短縮できます。後方支援病院の充実が急務ですね。
◆風通しの良い職場環境
職員の離職率がかなり低いのが自慢です。当院の医師はみなさん優しいので、医師と他の職員の距離が近く、働きやすい環境を提供できているのではないでしょうか。
他科との垣根が低く、風通しがいいのも特徴です。上下関係も厳しくなく、フラットな関係性ですね。職員は気軽に院長室にきて声をかけてくれますよ。
実際、当院で実習した研修医に感想を聞くと「働きやすそう」「しっかり勉強できそう」「医師以外のメディカルスタッフも丁寧な指導をしてくれる」などの声を耳にします。それが評価されたのか、5月にはJCEP(卒後臨床研修評価機構)の認定病院となりました。
当院では医師確保のための奨学金制度を設けています。医学生の皆さんが就学に専念できるようにするために経済的な援助を目的として月に10万円を補助しています。学校を卒業後、補助された期間、当院に勤務していただければ返済免除になります。
◆群星沖縄
2004年の卒後臨床研修の必修化を前に、沖縄県立中部病院の院長だった宮城征四郎先生が旗振り役となり「群星(むりぶし)沖縄」という臨床研修病院群プロジェクトを立ち上げました。
現在、当院、ハートライフ病院、豊見城中央病院、中頭病院、浦添総合病院、大浜第一病院、中部徳洲会病院、南部徳洲会病院の8病院が基幹型病院として参加しています。まず、いずれかの病院に所属し研修をします。しかし、ずっと一つの病院でやるのではなく、各病院の得意な部署をローテートしていくシステムです。研修医にとっては、それぞれの病院の特徴を知ることができ、魅力的でしょうね。
それぞれ病院の経営母体は異なるし、経営理念もそれぞれだと思います。しかし、医師としての第一歩を沖縄で踏み出してほしいとの思いは一緒なのです。
この取り組みのおかげで各病院と顔の見える連携がとれるようにもなりました。
研修医のみなさんには「自分はなぜ医師になろうとがんばっているのか」を、今一度考えてほしいと思っています。医師は目の前に患者さんがいてこそ初めて仕事ができるのです。自分が患者さんのために何ができるか、常に患者さんの目線に立った医師になってほしいですね。
医師は勘違いしがちですが、患者さんは病気だけが悩みではなく、その他にもいろいろな悩みを抱えています。病気さえ治せばいいという考えではなく、全体を理解し、患者さんの幸せを追求してもらいたいと思います。
- 沖縄協同病院『医師研修理念』
- 基本的診療能力を身につけることを第一の目標とし、患者を「一人の人間」として捉え、
「患者の幸せ」を追求できる医師を養成します。