独立行政法人国立病院機構 徳島病院 田中信一郎 院長

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患者さんの"光"となる医療を

広島城北高校卒業 1975 岡山大学医学部医学科卒業 同大学院医学研究科入学 1976 米国・ニューヨーク州立大学ダウンステート病院外科留学 1983 岡山大学医学部大学院医学研究科修了 同大学医学部附属病院第一外科医員 2006 国立病院機構岡山医療センター統括診療部診療部長兼同機構中四国事務所総括部医療課長 2015 国立病院機構徳島病院運営担当特命副院長 同院長

 木々の緑が豊かな丘陵地にある徳島病院。筋ジストロフィーをはじめとした神経・筋疾患の、四国の基幹医療施設としての役割を担う。田中信一郎院長に取り組みなどを聞いた。

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―貴院の特色などを。

 地域の医療機関として内科や外科といった一般診療もしていますが、大きな特徴は神経・筋疾患の診療です。これらの疾患の基幹医療施設で徳島県の難病医療拠点施設にも指定されています。

 また、全身の筋肉が次第に弱くなっていく難病、筋ジストロフィーを専門に診療を行う、四国で唯一の医療施設で、300床の病床のうち、筋ジストロフィーを中心に筋萎縮性側策硬化症(ALS)などを含む神経筋疾患の療養介護病床数は、120床で運営しており、残り180床も入院患者の7割以上が神経難病で占められています。患者さんの中には、長期入院の患者さんもたくさんいますが、在宅の患者さんや家族のサポートとして短期入院の患者さんも入院しています。さらにパーキンソン病に対する医療に対しても、診療にとどまらず、臨床研究にも力を入れています。

 新しい治療や研究にも積極的に取り組んできました。リハビリテーション科の高田信二郎診療部長は、早くから神経・筋疾患の患者さんに対するロボットを使ったリハビリに着目し、治験に参加。今年4月からは医療用装着型の「ロボットスーツHAL」が保険適用となり、より充実したリハビリを提供しています。

 スポーツ外傷などを専門とするスポーツ整形外来も設け、4月に県外から当院に戻った柏口新二医長を中心に治療やリハビリを進めています。

 パーキンソン病センターでは、早期の患者さんを対象にした「パーキンソン病意欲向上プロジェクト」という独自プログラムを作りました。5週間の入院で進行を抑えるリハビリを中心としたメニューで実施。効果は高く、学会などでも発表しています。

 また、老朽化した病棟を建て替え、2013年に完成しました。引き続き、外来・管理棟の建設も計画しています。今年度に設計を進め、来年着工し、2019年度の竣工(しゅんこう)を目指します。

 難病患者の災害医療支援施設として指定されていることから、体が不自由な患者さんにとって、より利用しやすい病院にしたいと思っています。

―院長就任後1年です。

 こちらに来る前も国立病院機構のグループ病院勤務でしたが、腎移植分野という全く違う領域に携わっていました。このため就任後は、患者さんや家族、そして当院の医療従事者の考えや気持ちを理解することを第一にしました。

 腎移植は、それまで透析などをしないと命が危険にさらされていた患者さんが手術によって元の体に戻るという、まさに"光"が射すような治療なのかもしれません。

 一方、神経・筋疾患の難病の患者さんは、時間が経つにつれ病状が進行し、人工呼吸器をつけなければ命を失うことにもなりかねません。

 二つの領域は、いずれも命と向き合う患者さんを、医師としてどう支えるかを考える点では一緒なのだと気づきました。

 しかし、筋ジストロフィーなどの患者さんには、残念ながら今のところ"光"となる選択肢がないのが実情です。ですから、再生医療といった研究を進めることでいつか「先にはこんな"光"があります」と、患者さんに見せたいと願っています。

―新たな取り組みは。

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 就任後、週一回ですが看護部長と一緒に病棟を回り、看護師などメディカルスタッフと直接話す機会を作っています。

 そんななか、病棟の看護師から、「死んでもいいから好きなものを食べたい」という患者さんの言葉など、対応に苦慮するような事例があると聞きました。そして"臨床心理士"が必要だという要望もあがったのです。

 私は腎移植に関わっていたころ、多職種のチームで患者さんをサポートする重要性を実感していました。医師、看護師、移植コーディネーターなど、それぞれの職種によって"寄り添う距離"が違うからです。

 例えば、患者さんは医師や看護師に話さなくとも、患者側の立場に近いコーディネーターには相談することもあります。

 また、医師や看護師は、ついつい結論を出すことに意識が向きがちですが、臨床心理士は本当にうまく人の話を聞く職種です。話を聞いて受け止めてくれる人がいれば、自然に解決する問題も多々あります。ですから、医師や看護師と違う臨床心理士がいれば、患者さんの心も変化するのではないかと思いました。

 そこで、まずは、臨床心理士1人を採用、今年正式に病棟に配置しました。別の病棟から早速「うちにも」という声があがっていますよ。

 また、年内に、ケースディスカッションをスタート、その中で私の経験談なども話します。

 今の私の役目は、現場の医療職の心の負担を少しでも軽くする環境を作り、そして一緒に歩いていくことなのでしょう。

―地域との連携は。

 吉野川市保健所との共同企画で、在宅医療を支える医師や看護師、介護福祉士などの職種の方を対象とした研修会を今年10月に始めます。

 当院には、難病の患者さんと接することによって得たノウハウがたくさんあります。それを地域で共有することで、高齢社会で増加する在宅の患者さんを支える一助になると思うのです。

 また、地域の医療福祉関係者と当院の職員がお互いを知れば、在宅の方が入院する際など、スムーズな連携にもつながると思います。

独立行政法人国立病院機構 徳島病院(四国神経・筋センター)
徳島県吉野川市鴨島町敷地1354番地
TEL:0883-24-2161(代表)
http://www.hosp.go.jp/~tokusimahosp-nho/

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