日本尊厳死協会九州支部はこのほど、発足40周年を記念して公開講演会を開き、市民167人が参加した。
松股孝・日本尊厳死協会九州支部ふくおか会長は就任のあいさつで、「終末期医療に必要なリビングウイルも徐々に浸透してきた。長患いをせず、天寿を全うするためには一日一日をベストな状態で生きられるよう、心身を鍛えることが大切」と話した。
特別講演の演者は元日本尊厳死協会副理事長の大田満夫・九州がんセンター名誉会長。名古屋高裁で安楽死容認の条件を日本で初めて定式化した「山内判決(1962年)」や、「東海大学安楽死事件(1991年)」など、過去の事例を挙げながら、安楽死をめぐる日本の歴史について解説した。
医師が積極的な医療行為で患者を死なせる「安楽死」ではなく、患者の意思に基づいて延命措置を施さない「尊厳死」の重要性を語り、がん末期や意識障害のある患者、植物状態の患者に対する医療の是非にも言及。「日本は患者が死にたいと思っても死ねない状態にある。もっと患者の自己決定権を尊重すべき」と訴えた。
龍谷大学で教授として実践真宗学を教える田畑正久・佐藤第二病院院長は、「仏教が教える、死んで往くことの物語」と題して講演。「医師は、表面的な知識やエビデンス(客観的事実)に基づいた医療だけで患者に向き合うのではなく、価値観・人生観・死生観など、患者一人ひとりが持つ物語を大事にしなくてはならない」と語った。
聴講していた70代の男性は、「50代の頃に入会した。超高齢社会になった今、死に対する自分なりの考えと備えが必要」と話した。