― 心不全の緩和ケアを担うネットワークに期待 ―
国内ではあまり取り組まれていない心不全の患者に対する緩和ケアについて、さまざまな職種の人が一緒になって考える「九州心不全緩和ケア深論プロジェクト」の初会合が、7月16日、飯塚病院(福岡県飯塚市)で開かれた。九州の心不全患者への緩和ケアを広げる狙いで、若手医師3人が企画。医師や看護師、理学療法士など約100人が参加した。
企画したのは、九州大学循環器病未来医療研究センターの岸拓弥准教授、久留米大学医学部内科学講座の柴田龍宏医師、飯塚病院緩和ケア科の柏木秀行部長の3人。
柴田医師は、国立循環器病研究センター(大阪府)で緩和ケアに取り組んだ経験なども踏まえて講演。「現在国内の緩和ケアのなかで非がんが占める割合は3%。しかし世界の緩和ケアの潮流は心不全。国内では"心不全パンデミック"ともいえる状況が予想される」と危機感を訴えた。
柴田医師は自らが所属する久留米大学医学部で立ち上げたハートフルケアチームについても紹介。心臓外科医、循環器内科医、緩和ケアの専門看護師や循環器の外来看護師、精神科医、臨床工学技士、理学療法士など多職種で構成する同チームは2カ月に1度カンファレンスを実施。柴田医師は「循環器の緩和ケアで患者さんに求められるものは症状緩和に加え、精神的ケアや治療方針などに対する意思決定の支援。それを循環器チームと緩和ケアチームが相互に補い合って進めている」とし、その結果、同大学の緩和ケアの依頼件数の比率は、2014年では非がんが2・4%だったが、チーム稼働後は、16%を超えるまでに増えたとした。
また、患者の増加が著しいため「心不全の緩和ケアを循環器の専門医だけで担うのは難しい」と指摘。全国に緩和ケアチームは477、心臓リハビリテーションチームが602あることに着目、「既存の多職種チームの活用はできないか」と提案した。
さらに、症例検討では飯塚病院循環器内科の大森崇史医師が担当した重症大動脈弁狭窄症の90代の患者についてグループディスカッション。末期の症状に対して、モルヒネを使用するタイミングをどう考えるか、また「家に帰りたい」という訴えに対し、症状を鑑みて帰宅させず、その後病院で亡くなったがどのような対処ができたのか、などが話し合われた。
会場の医師からは「がん患者に対するようにモルヒネを処方して自宅に帰ってもらってもよかったのでは」など、活発に意見が出された。
岸准教授は「2030年には、心不全の国内の患者数が福岡市の人口と同程度の130万人を超えると予測されている。参加者の皆さんはプロジェクトの1期生として、九州の心不全の緩和ケアに取り組んでほしい」と期待した。
同プロジェクトは、来年2月11日(土)に第2回目を久留米大学病院で実施する予定だ。問い合わせや参加申し込みは左記まで。
TEL:0942-31-7562
Email:shibata_tatsuhiro@med.kurume-u.ac.jp